(あらすじ)
パッとしない舞台女優、山田真歩(山田真歩)は、自ら主演のネットドラマを作ることを思いつく。ロケ地の田舎町で撮影協力を得ることになった真歩だったが、彼女は人の善意を次々とあだで返していく女だったのだ。そしてついにドラマは完成するものの評価されず、真歩は再チャレンジを決意する・・・。
今回はS原の1人語りです。
これは……なんというか……変わった映画でしたねえ…
アングラとかマイナーとか自主映画っぽいと言えばそうなんですが、それだけでは言い切れない何かがあるんですよ。かなり以前に、『ほぼ誰も知らない邦画20連発』という企画で紹介をした「ペットおやじ」(2005)「ロボ一族」(2004)(2本ともマキノトクシロー監督)も、すごく変な映画でいまだに印象に残っていますが、この「人の善意を骨の髄まで吸い尽くす女」(加藤行宏監督)は、それに匹敵する個性です。
まずタイトルからして強烈でしょ?これを中古店で見つけたときは迷わずにカゴに入れましたからね(笑)
主人公(山田真保・役名も同じ)は、とにかく最低というか努力をせず、他人の善意を本当に自分都合だけで受け取る女性で、観ていて不快になるような主人公でまず感情移入は出来ないでしょう。(ただし、タイトルほどムチャクチャな女性ではない)
主人公は売れない舞台女優。公務員の夫と結婚しており、延々とゲームをし続けている同居人(ニートのふとっちょ)とゴミ屋敷で暮らしている。ある日、ネットドラマを作ることを思いつき、お金がないのに強引に撮影をすすめていく。主人公が知人や周りの人を振り回したり、逆に振り回されたりしつつネットドラマは完成する。ところが、期待していたような高評価はもらえない(再生回数がのびない)。いろいろあって、夫とも離婚する。主人公は、もう一度映画製作の専門学校に入学して、映画製作を一から勉強しようと決意する……あらすじは、こんな感じです。
主人公はもちろん、夫や同居人、ほかの登場人物たちも濃くて変なキャラばかり。生理的に受け付けない奴らばかりで、普通のドラマ感覚で観ていると頭がクラクラしてDVDを停止したくなると思います(ぼくも観るのを止めようかと思いました)。
でもですねえ、頑張って後半まで観てほしいんですよ!
この歪んだ、奇妙としかいいようのない世界観がクセになるんですよ。こういう感覚は久しぶりで、いやあ後半は本当に楽しめました。
約60分しかありませんので、とくに凝った展開にはならないのですが、普通の出汁を使っていない濃厚スープというか、シンプルな味なのに1週間くらい印象に残る定食というか、これ以上はぼくの言葉では表現できません。この映画のレビューは少ないのですが、だれか観た人はもっと感想を教えてほしいです。ぼくのこのモヤモヤした気持ちを代弁してほしい。
ラストは言いませんが評価は分かれるでしょうね。ぼくはこれで良いと思います。
というわけで、なんとも存在感のある役者揃いの映画ですが、「変わった映画が好き」という方にはおススメします。チープでもなく、演出がぶっ飛んでいるわけでもなく、演技が下手でもなく、おおむね普通の出来なのに完成したらイビツに歪んでいるこの映画をぜひご堪能ください!特典映像で収録されている「善人」と「機械人間、11号。」も超個性的ですよ~!