(あらすじ)
高度12,000メートル―。史上最狂のクイズ・ショウへ、ようこそ!人気のソーシャル・ネットワークからニューヨーク旅行に招待された4人の男女が、プライベート・ジェット機に乗り込む。やがて飛び立った機内でクイズが出題されることに。このゲームに勝利すれば夢のような景品がプレゼントされる。景品に目がくらんだ彼らは参加条件が記された書類に目を通すこともなく、ゲームへの参加を決めるのだが…。
さて、今回の映画は「クエスチョン」(2011)です。
DVDパッケージ裏には、『最強の人気2大ジャンル「ソリッド・シチュエーション・スリラー」と「スカイ・パニック」が完全合体!!閉ざされた空間、残酷で理不尽なゲーム、行き先不明と化したジェット機!』を煽り文句があります。
で、いきなり感想を言うと、この映画は、はっきり言ってぼくは嫌いです。
いい意味でバカっぽい設定は、映画としてはOKなんですよ。でも、観客が疑問に思うところを微妙に誤魔化していて結構イライラしてストレスがたまります。
あらすじは上の通り。もう少し言うと、SNS会社オールトゥギャザーの「飛行機ニューヨークツアー」に当選した4人(ジョー、マックス、デイヴ、グウェン)が飛行機(プライベートジェット)に乗ります。シャンパンとか飲んでルンルンで、機内で「豪華賞品がもらえる」というアナウンスされたクイズに挑戦することになります。
このへんまでは普通ですが、出されるクイズがおかしい…というかクイズではなく、自分のプライベートな恥ずかしい部分とか過去の過ちとか性癖とかが質問形式でだされます。クイズ出題者はSNSで各人の秘密を調べているようです。それがだんだんとエスカレートしていきます。当然、4人は憤慨してクイズを止めようとします。ところが「クイズを答えなかったりわざと間違った答えを言うと、自分の家族や友人たちが殺される」と脅されます(ライブ映像で見せられる)。嫌々ながらクイズを続けますが、やがて各人に「殺しあいをしろ」という指示がでて……という話です。
変な話ですが、まあスリラーとしてはアリかなと思わなくもないです。だけど観ていて楽しめないんですよ。これは僕だけかもしれませんが、話にも違和感があるし登場人物の誰にも共感できなかったですね。犯人の言うことを全部信じて、4人が右往左往するだけ。これではサスペンスが盛り上がりません。
たぶんこれを読んでいるみなさんの大多数は、普段プロレスを観ないと思うのですが、プロレスの興行はとにかく観客が目に付くように、盛り上がるように演出(アングル)を考えるんですよ。うまくいけば会場はヒートアップします。嘘だと思うんなら、youtubeで大仁田選手が新日本プロレス(相手は佐々木健介)に殴り込んだ試合をみてください。大仁田選手は膝が悪くまともに試合が出来ないのですが、それでも彼のキャラと演出(アイデア)だけで「プロレス」として成り立たせていますからね。
もうネタバレすると、ネットで自殺した(画像を自撮りでネットにUPした)娘がいて、その父親が犯人なんですよ。父親は「この4人はその娘に対してSNSで馬鹿にしたり助けなかったりした」と逆恨みしているわけです。挙句に、そのまま「オールトゥギャザー」の本社ビルに突っ込むのが目的だとわかります(操縦士も家族を人質にして脅されている)。
ちょっと、ねえ……?(苦笑)
結局、飛行機は墜落して全員死亡するのですが、そのあとのラストの後味があまりにも悪すぎる……娘を持つ一人の人間として到底許容できません。どんでん返しとかいう意味ではなく、本当に嫌悪感を抱きます。ここが一番嫌いです。
誰もがハッピーになれないという結末はSNS社会批判を暗示していて良いと思います。作り手側には、ネット社会に一石投じたいという気持ちもあったでしょう。でも、こういう動機とラストにするなら監督も製作者たちももう少しちゃんと問題やテーマに向き合う覚悟が要るはず。「これは娯楽映画なんだからいいじゃん」という言い訳は通用しないと思うのですが……ぼくがマジメすぎるのでしょうか。
以上、S原の感想でした。次週からは、また会話形式に戻る予定です。おしまい!