あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

アイデアで勝負!な映画たち「13/ザメッティ」(2005)の巻

13/ザメッティ [DVD]

S原:今回はフランス映画。しかも全編白黒!

Y木:へえー、なんともまた。

(あらすじ)

グルジア移民の22歳の若者セバスチャンが導かれるままに辿り付いた不気味な屋敷。身の危険と犯罪の匂いを感じたセバスチャンは逃げ出そうとするが、強制的にとあるゲームに参加させられることになる。そのゲームとは、13人のプレイヤーが同時に銃の引き金を引くという“集団ロシアンルーレット”だった…。

 

S原:これは、なかなか面白かったわ。

Y木:ロシアンルーレットか。「ディアハンター」(1979)みたいな感じ?

S原:いや、あれとは違って、主人公は、無理矢理にロシアンルーレットをさせられる。しかも13人が円形になって、全員で隣の後頭部に向かってせーの!で、拳銃をうつ方式。

Y木:げえー。

S原:よくこんな設定を考えるよなあ(苦笑)これ話も良くできてるねん。主人公は建築作業員。ある屋敷の屋根の修理を依頼されます。そこで、偶然に家族同士の会話を盗み聞きします。どうも訳ありだが、近々大金を儲けられるゲームが催されるらしい。こっそりと封筒を盗み見すると、ホテルの宿泊券と列車の乗車券が入っています。その家の主人が急死したときのどさくさにまぎれて、そのチケットを盗みます。これが序盤。

Y木:ほう、なかなか。

S原:刑事達が主人公を怪しんで尾行します。主人公は、指定された列車に乗ります。刑事たちがそれを追うが、上手くまきます。やがて、主人公は指定された駅で降りて、車に乗せられる。車は森の中の屋敷へ。その秘密の場所で……

Y木:ロシアンルーレットやな。

S原:うん。要するに、闇の賭博場というか金持ち(?)の道楽というか。結局、主人公は断ることが出来ずに、ゲームに参加させられる。さっきも言ったけど、13人で行うロシアンルーレットやねんけど、みんな訳ありの奴らばっかり。もう人生どんづまりでこのゲームにすべてを賭けざるを得ない…みたいな。

Y木:そのロシアンルーレットのサスペンスの場面がメインになるんやろ。

S原:そうそう。予告編でも観れるけど、「今回は、弾は1発ー!」「弾を込めろー!」「弾倉をまわせー!」「「構えー!」って、男が叫ぶねんけど、この声の感じが緊張しているようなヤケクソのような、なんとも言えん雰囲気やねん。

Y木:生き残ったら、お金がもらえるの?

S原:いやもう一回、ロシアンルーレットをやらされる。「次は、弾は2発ー!」って。

Y木:うわー…

S原:いや、ただ、ちょっと残念なこともあって、このロシアンルーレットの場面が意外にドキドキしない。

Y木:そうなんや。

S原:緊迫したムードは漂ってるし、悪くないんやけど、こっちの心臓がバクバクするってほどでもなかった。主人公は、映画の展開上すぐに死なないって分かるしな。

Y木:白黒の映像はどうなん?

S原:ざらついた感じで黒が潰れる色調ってあるやん。低予算というかチープな映像になる一歩手前みたいな感じで、なかなか良いねん。これはカラーやと全然印象が変わったやろうな。ハリウッドでリメイクしたらしいけど、こっちはどうなんやろ。あと、森の中の屋敷に連れていかれて、一歩間違ったら殺されるかも…という恐怖感はあんまりないかな。有名な映画でなくても、それこそB級映画でも、屋敷に連れていかれたときのムードが良いっていう映画ってあるやん。そこが個人的には惜しいかな。

Y木:なるほどな。予算の関係もあるんとちゃう?

S原:やろうな。でも、観始めたら一気にラストまで観れる。これはなかなかの力技やと思う。あと主人公はグルジア人やねん。金に困っているという設定で、人種問題が背景になると思う。ほかに貧困とか格差社会とか、一部の金持ちの道楽とかも暗示されてるけど、そのへんはあまり深くは触れていない。この映画に関しては、それで良かったと思う。

Y木:社会派じゃなくて、単純なミステリー、サスペンスのほうがいいってこと?

S原:それもあるけど、背後にぼんやりとテーマが見え隠れするほうが、この雰囲気に合ってるような気がする。

Y木:それでロシアンルーレットを続けて、主人公はどうなるの?

S原:これ以上は言えない。基本、このブログはネタバレ全開で話すけど、この映画だけはストーリー展開を知らないほうが絶対に楽しめるから。ほかの人のレビューもラストにはほとんど触れていない。みんなも同じ気持ちとちゃうかな。

Y木:ラストはちゃんと終わるの?

S原:ちゃんと終わります。ただ賛否はあるやろうな。個人的には、あれしかないと思うけど…

Y木:ふーん。

S原:普段、アメリカとくにハリウッド映画しか観ないような人も楽しめると思うで。白黒映像も観始めると気にならなくなるし、かえって新鮮とちゃうやろか。

Y木:いつもと違って、今回はわりとマシみたいやな(笑)

S原:うん、たまには当たりもあるで(笑)ただし期待しすぎると辛いかも…だけどスルーしないでほしい映画やなあ。たしかにストーリー、設定はぶっとんでるけど、演出は手堅くて、それがかえって不気味な雰囲気になっています。それに予算というか製作費はかなり低いはず。アイデア勝負でここまでの力作が出来るんやと感心したわ。

Y木:あー、どこかの国の製作者たちも見習ってほしい、と言いたいんやろ?(笑)

S原:その通り(笑)さあ、みなさん、ちょっと変わった映画が好きな人、どん詰まり人生に興味のある人にはおススメです。まあ良く考えれば、ワゴンコーナーでDVDを選ぶのもロシアンルーレットみたいなもんですよ。マストバイ!