あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

「女と女と女たち」(1967)の巻

女と女と女たち [DVD]

 

(あらすじ/解説)

『ひまわり』などの名作を遺した巨匠、ヴィットリオ・デ・シーカが手掛けた7人の女性をめぐるオムニバスドラマ。『愛と追憶の日々』のシャーリー・マクレーンピーター・セラーズら豪華キャストが出演。

 

 今回は、いつもと違って一人語りのスタイルです。(何故かというと、相棒のY木が「オムニバス映画だけは勘弁してくれ」と言っているから)

 

 このDVDは、いつものように中古店でみつけました。「これ、フェリーニやったけ?」とよく見ると、「ひまわり」(1970)のヴィットリオ・デ・シーカ監督でびっくり。(あとで調べるとフェリーニが監督したのは「女の都」(1980)。すごく変な映画でしたが、ぼくは好きです)

 さて、この映画は7つの短編で成り立っています。すべてシャーリー・マクレーンが主役です。役者としてはやりがいがあったでしょうね。では簡単に感想を書きます。


第一話「ポーレット」

夫が死んで葬列にたくさん参加しています。棺のすぐ後ろは、妻ポーレットが、歩いています。悲しみに泣き崩れているポーレットの隣に友人の男性がいます。この男性はポーレットに気があるようで、慰めつつもだんだんと口説文句に変わっていく…

 

ユーモアのような人間の欲のような脱力コメディのような不思議な味わいの作品です。でも、ひねりがなさ過ぎて、起承転結の「起」で終わったしまったような…


第二話「マリア・テレーザ」

仕事を早めに終えて、サプライズで早く帰宅したマリアは、夫が浮気しているところを発見します(相手は自分の友人。しかも夫婦が使っているベッドで)。マリアは、興奮して家を出て、「いますぐ自分も見知らぬ男性と関係をもってやる!」と息巻きますが、上手くいきません。夜の公園で途方にくれていると、娼婦たちがやってきて話をきいてくれます。やがて…

 

個人的にはこれが一番好きです。とぼけた雰囲気が良いです。真面目に生きてきた女性が、夜の世界で生きざるを得ない娼婦たちと交流する小さな冒険譚です。ラストでブラックに終わるのか甘く終わるのか、それは観てのお楽しみですね。


第三話「リンダ」

多国言語が飛び交う重要なビジネスパーティで、リンダは通訳をしています(日本語もしゃべる)。パーティーの後、彼女は下心のある男2人を部屋に招き入れます。なぜか半裸(というか全裸)になって、いろんな話をしますが、サルトルだのエリオットだの前衛芸術論を語る。男性たちは下半身がムズムズしながらもそれを聞いているが…

 

よくわかりません……(苦笑)半裸のシャーリー・マクレーンが魅力といえばそうなんですが、どうも冴えがないです。ただ、こういうタッチが好きな人はいるでしょうね。



第四話「エディット」

エディットの夫は小説家です。創作に夢中のあまり、結婚記念日も忘れています。エディットは家事はせず、すべて家政婦にまかせています。時間があるためか、やたらと夫の気を引こうとします。夫は執筆中の作品にでてくる「シモーヌ」という女性について語ります。いつしか、エディットは、そのシモーヌのようなエキセントリックな行動をとるようになり…

 

笑えません……(夫に気に入れられようとして)エディットは散々ハチャメチャをして、みんなから呆れられますが、本人だけが分かっていないという状況は、ぼくは悲しかったです。最後には精神異常だと疑われるんですよ。描き方にもよるでしょうが、現代ならこのテーマでコメディは作れないかも、です。

 

第5話「イブ」

パリの社交界でイブは、最新ファッションをなによりも大事にしている。ある日、オペラ座に着て行くための特別オーダーのドレスとそっくりなドレスをライバルが来ていくと知る。ライバルと話し、やんわりとドレスを変えてもらうように頼むが、すげなく断られる。ついに、ライバルの車に爆弾を仕掛ける(ただし殺傷能力はない爆弾)。意気揚々と、オペラ座に行くとなんと同じドレスを着たライバルが現れて…

 

面白くなりそうで、結局面白くなりません(苦笑)たぶん、ぼくにとっては、社交界でのドレスなんかどうでもいいからでしょう。バカっぽいコメディに振り切ってしまわないところが、この監督の個性かもしれませんが…オチも弱いです。

 

第6話「マリー」
場末のホテル。マリーは、愛する男性(たぶん不倫相手)と心中を遂げようと計画をしています。それぞれの配偶者に別れの挨拶をテープに吹き込みます。やがて、心中する方法で2人は揉め始めて…

 

単純で楽しいです。俳優2人の演技を楽しめるかどうかでしょう。ラストはこれで良いと思いますが、どことなく陰影があってカラッとしません。ぼくの感じ方かもしれませんが…

第七話「ジーン」

ジーン(人妻)は、友達と買い物に出かけたます。自分たちのあとを、こっそりと追ってくる男性に気付きます。その純朴で控えめな雰囲気に、ジーンはやがて心をときめかせていきます。家に帰っても、じっと外から眺める男性をこっそりと窓からみつめます。夫は、なにもしらないまま妻と話を始めますが、ジーンは外にいる男性が気になって仕方なくて…

 

一番良く出来たエピソードだと思います。起承転結も上手いです。なんといっても、トボトボと後ろからついてくる男性(マイケル・ケイン)と、気づかないふりをして(でもめちゃくちゃ意識しながら)街を歩き続ける主人公の街のロケ場面が素晴らしいです。途中で雪が降り、やがて雪が積もった公園に男が佇むショットなどは、やはり監督のセンスだと思います。

 

 

 以上、久々にオムニバス映画を観ましたが、あっという間にラストまで楽しめました。それにしても、シャーリー・マクレーンは芸達者です。7通りの人格を自然に(でもマンガチックに)演じ分ける力業に感心します。例えば、いまの日本の女優で、これが出来そうな人は……すぐに思いつきませんもんね。

 7つそれぞれにどれも味がありますが、全体的には淡泊です。こういう時代かもしれませんねえ。このDVDは意外に中古店でみかけますので、ぜひどうぞ!シャーリー・マクレーンが好きな人は絶対におススメですよ~。