あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

70年代のややカルト映画特集!「ソルジャーボーイ」(1972)の巻

Soldier Boy DVD

S原:今回はこちら。ベトナム戦争から帰ってきた4人の男たちの映画ですよ。

Y木:これ、ポスターとタイトルだけ知ってるわ。

(あらすじ)

ベトナム戦争の帰還兵の姿を軸に、70年代アメリカの若者の怒りと悲しみを綴ったドラマ。ダニーらベトナム戦争の帰還兵4人は、貯金を出し合いカリフォルニアで農場を始めるため旅に出る。しかし、途中で出会う人々の彼らに対する態度は冷たく…。

 

Y木:ストーリーは「イージーライダー」(1969)っぽいな。これ、ニューシネマやな?

S原:そうそう。ぼくが映画好きになった中学生の頃に、映画本を(もちろん古本)をよく買ってたんやけど、そこによくアメリカンニューシネマとかヌーベルバーグが紹介されたのよ。「映画の歴史を変えた!」「これは革命だ!」とか。

Y木:映画史としては、そういう文脈やろうな。

S原:昔は、なかなか実際に映画本編を観ることが出来ないから、映画を紹介したり評論したりする本が貴重やった。「ニューシネマって一体、どんな映画なんやろ?」と色々と想像してたんやけどな。ついにテレビで「俺たちに明日はない」(1967)を観ることが出来た。

Y木:ほう。それで感想は?

S原:「なんか変な映画やなあ」って(笑)正直に言うと、良さが理解できんかった。たしかに、最後に機関銃でハチの巣にされるところは衝撃やったけどな。どうも、どんよりした雰囲気が苦手で…

Y木:それがええんでしょ。おれはニューシネマもヌーベルバーグも面白く感じたで。

S原:「イージーライダー」とか「明日に向かって撃て!」(1969)「タクシードライバー」(1976)とかはいまだに語られているやろ。いまのヤングたちも結構観ているし。

Y木:それだけ映画に「力」があるんやろな。

S原:この映画は、ニューシネマ系列の映画と言っていいと思う。だけど今となっては、あんまり語る人もいないんとちゃうかな。べつに多くの人に語られるのがええわけじゃないけど。

Y木:ふーん。映画としてはどうやったの?

S原:まあまあかな。さっきも言ったけど、ぼくはニューシネマと肌が合わないから。反対にハマる人もおるんちゃうかな。面白いのはこの映画に関するレビュー数は少ないけど、レビューしている人は深く考察している人が多い。もしくは、理由をハッキリと言ってダメ出しをしている。賛否両論がわかりやすくて、こういう現象も面白いで。

Y木:へえ。話は上のあらすじの通りやろ?

S原:うん。本当にそれだけ。男4人がベトナムから帰還してきます。その中の1人のおじさんが、カリフォルニアで農場を持っていると言う。それで、4人で農場経営をしようという計画をたてる。カリフォルニアに行くため安い車を購入したり、途中の安モーテルでハメを外して女性とチョメチョメしたりする。道中でいろいろと話しているうちに、自分たちは未経験なのに本当に農場経営なんか出来るのか?と4人は少し不安になる。

Y木:そうやろうな。

S原:ある日、1人の実家に立ち寄る。とりあえずは歓迎してくれるが、他の3人を歓迎せず、縁を切れと忠告される。結局、家族とはギクシャクして、この家には自分の居場所はないと確信する。やっぱりカリフォルニアに行って、農場をしようと話し合うが、水の確保さえ考えていないような雑なプランのままで、だれも具体的に計画的に考えようとしない。しかも、ラストで分かるねんけど、そもそもカルフォルニアに農場の確保なんかしていなかったのよ。映画のほとんどは、こんな感じで変形のロードムービーやねん。しかも、本人たちも楽しんでるというわけでもない。

Y木:あーいかにもやな。

S原:ホープという小さな町(人口80人くらい)に若者たちは到着します。この街は、閉鎖的な町で、よそものを受け入れない。4人はいろいろと嫌な思いをさせられる。ちょっとしたことから、撃ち合いになる。住民(老人)が死んでしまう。たちまち激しい銃撃戦になってしまう。ここがクライマックスやな。

Y木:なんの恨みもない住民たちを殺してしまうわけやな。

S原:4人は車に積んでいた大量の兵器(バズーカまである)で、住民を次々と殺していく。テレビで放映され、州兵(機動隊?)がやってくる。ベトナム戦争で鍛えた兵士たちが、逆にアメリカ人を殺していくという皮肉が込められてるんやろうな。

Y木:戦争で頭がおかしくなって、ベトナムの戦場と区別がつかなくなってるんやろ?

S原:たぶん、そういう設定なんやろうけど、そこはあんまり上手く描けてない。でも、この場面のやけくそな感じの銃撃戦は、見応えがあります。

Y木:最後は?

S原:州兵たちに取り囲まれて催涙弾を投げ込まれる。最後は、4人が一斉に手りゅう弾を投げるカットがストップモーションになって、銃声がかぶさる。で、おしまい。

Y木:おれ、結構そのラストシーン好きかも。

S原:たぶん、監督が撮りたかったショットやろな。最近の映画の作りとは、かなり違うから、今観ると新鮮やった。でも個人的には、全体に漂う曇天のような雰囲気は、年に1回くらい味わうくらいで充分かな(苦笑)

Y木:あのどんよりが病みつきになる人もおるやろうけどな。

S原:さあ、みなさん。破滅に向かっていくカッコよさよりも、迷走しながらどん詰まりになっていくダサさのほうが勝っていますが、これはこれで観る価値アリかも、です。最近の映画に食傷気味の人はぜひトライを!