あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

70年代のややカルト映画特集!「パララックスビュー」(1975)の巻

パララックス・ビュー [DVD]

S原:今回はこちら!

Y木:へえ、ウォーレン・ビーティか。

 

(あらすじ)

次期大統領候補が暗殺され、単独犯とされた犯人が墜落死した。それから三年後、女友達の死をきっかけに新聞記者が調査をすると、進歩派を憎むプア・ホワイトをテロに仕立て上げる暗殺者養成所の存在が浮かび上がる。社会派として名高いパクラ監督の政治サスペンス。

 

S原:これは面白かった!

Y木:ひさしぶりに聞いたぞ、そんなセリフ。

S原:この映画は、観る人によって評価が変わると思う。というのは、良い意味で「昔のテレビ洋画」って感じやねん。水曜ロードショーとかゴールデン洋画劇場とかあったやろ?

Y木:あったあった。水野春朗や淀川長治とかが、解説してたな。

S原:今思うと、かなり怪しい解説もあったように思うけど…(笑)でも、ぼくらが映画を好きになり始めた頃って、ビデオも普及しはじめたばかりで金持ちの家にしかなかったし、映画館に行くお金もないから、とにかくテレビが「映画館」やったやろ。それも吹き替えをしてたやん。

Y木:いまでも吹き替えしてるやん。

S原:やねんけど、空気感みたいなもんが全然違う。いまのほうが、すごく音質もキレイやしな。でも、この映画を観るときは、吹き替えをおススメします。すっごく良い雰囲気なのよ。声質が、良い意味で「昔の声優」で味があると言うのか。

Y木:観てないからわからん。

S原:例えば「刑事コロンボ」の初期のシリーズに近いかな。コロンボはもちろん犯人役の声もすごく良い雰囲気やったやろ。

Y木:あーなるほど。

S原:この映画の監督は、アラン・J・パクラ監督です。

Y木:聞いたことあるぞ。「大統領の陰謀」(1976)やったっけ?

S原:正解。あとは「推定無罪」(1990)とか「ペリカン文書」(1993)やな。ちょっとクセのある娯楽作を作る監督なんやろな。と思いつつ、フィルモグラフィーをみていると、なんと「ソフィーの選択」(1982)も監督してます!あーこれ、もう思い出すのも嫌なくらいのトラウマ映画やった!

Y木:あー暗い映画やろ。観たかどうか忘れたけど。

S原:いや観たなら絶対に忘れんよ、あんな鬱な映画(苦笑)アカデミーも獲った「大統領の陰謀」は、すごく上手く作られてやろ。D・ホフマンとR・レッドフォードの演技も上手くて隙が無い感じがしたけど、あれに比べると「パララックスビュー」のほうがちょっとB級っぽいねん。良い意味でブレてるというか、隙間があるというか。そこがまた良いのよ。

Y木:話はどんな感じ?

S原:ジャンルで言えば、社会派サスペンスとかポリティカルスリラーかな。主人公(ウォーレン・ビーティ)は、地方紙の小さな新聞社の記者。ある要人がシアトルで暗殺されて、警察が追い詰めるが犯人は高いタワー(スペース・ニードル)から落ちて死んでしまう。真相究明の委員会らしきグループが「事実」を公表する。ここが、正面に5~6人が並んだ姿を正面から捉えたワンシーン・ワンカットでな。淡々と語る口調が静かな雰囲気で、このへんからぐいぐいと話に引き込まれます。

Y木:へえ。それで?

S原:主人公は、要人の暗殺事件に疑惑をもつ。自ら単独で事件の真相に乗り出すんやけど、だんだんと主人公周辺に怪しい人物がウロウロしだす。昔の恋人が訪ねてきたあと、殺されたりする。ここの演出がすごい。主人公と話していた次の瞬間には、死体安置所で死体となっているという(笑)いろいろと探っていくうちに、どうも「パララックス社」という謎の組織が関係しているらしいと分かってきます。ダムの放流に巻き込まれたり、飛行機に爆弾があると知らせたりするサスペンス場面があった後に、ついにパララックス社の人間が接触してきます。自分はリクルート担当で、主人公に興味がある(採用したい)、と説明するわけ。

Y木:むこうは、新聞記者って気づいていないの?

S原:先回りして、主人公は偽名(反社会的な人物)を使っています。

Y木:主人公は、相手の裏をかこうとするわけやな。

S原:そうそう。記者やから、なんとか真相を暴いて記事にしたいというのが主人公の原動力なんやけど、パララックス社がそれに気付いていないのか、気付いていないふりをしているのか分からない。ここがかなり不気味やねん。

Y木:結局、パララックス社というのはどんな組織?

S原:わかりません。たぶん、反社会的な人間を暗殺者に仕立て上げる裏の組織っぽいけど、最後までハッキリしません。で、いろいろあって、ついに主人公はパララックス社の内部潜入に成功する。主人公は、採用試験の簡単なテストだと言われて、変な映像を見せられる。

Y木:変な映像?

S原:ここが、すごく単純やけど微妙に不気味やねん。「母親」「父親」「幸福」とか文字とともに、いろんな画像がでてくる。はじめて幸せそうな画像ばかりなんやけど、すこしずつ「死体」とか「戦争」とか言葉とミスマッチな画像が挿入される。

Y木:サブリミナルってこと?

S原:説明は全くない。それが気持ち悪いのよ~。観客には、主人公は、本当に洗脳されたのか洗脳されたふりをしているのか分からないまま、ラストシーンとなる。ラストは、ある政治家の集会・演説会場。広い競技場みたいなところで、まだほとんど無人の状態です。いまからやってくる政治家のために、ヤングたちが観客席でマスゲームを練習しています。その裏で、主人公や(おそらくパララックス社の)関係者が、競技場の内部通路などで動いています。どうやら、いまから政治家を暗殺しようとしているらしいとわかる。政治家は意気揚々と競技場にやってくる。そこに銃声が響く。

Y木:主人公が撃ったってこと?

S原:ここから先は、ぜひ観てほしい。このブログはネタバレありやけど、今回は言いません。

Y木:えー、別にラストがどんなんか言ってもええやん。

S原:絶対にラストを知らずに観たほうが楽しいって。あえて評価の分かれるようなラストにしている部分も含めて、ぼくは好きやな。大きな製作費ではなかったと思うけど、監督の力技が冴えてると思うわ。「よく出来たスリラー」と一言では片づけられないような、不気味なムードがたまりません。ハッとするようなカット割り(エレベーターを斜めに捉えたカットや超望遠で人物を映すカットなど)もあるけど、どちらかというと淡々と普通の場面を正攻法の演出で撮ってる感じやねん。最近の映画とはリズムも違うから、いまのヤングは逆に面白がるんとちゃうかな。

Y木:ま、今回はおススメってことね。

S原:イエース!さーみなさん。実は全く知らない映画でしたが、懐かしい洋画の雰囲気楽しみつつ、主人公がどうなるのか真相が暴かれるのかハラハラドキドキでしたねえ。最近のスピーディーでVFXだらけの映画に疲れ気味のあなたに、おススメしまーす!