あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」(2008)の巻

ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ

S原:今回はチェーンソーVS女子高生!

Y木:うわー… 

(あらすじ)

何の目的もなくただ漠然と生きている平凡な高校生・山本陽介(市原隼人)は、ある時、美少女・雪崎絵理(関めぐみ)と出会い現実とは思えない光景を目にする。唸るチェーンソーを振り回す大男が空から降ってきたのだ!颯爽とナイフを投げ立ち向かっていく絵理。立て続けに投げたナイフが心臓に命中するが、チェーンソー男は再び空のかなたに飛んで消えてしまった・・・。陽介はバイク事故で死んだ親友の能登(三浦春馬)へのライバル心から『彼女を守ってかっこよく死ねるなら最高だ』と考え絵理のサポートを決意する。目的のない青春の日々を埋めるかのように夜な夜な不死身のチェーンソー男との戦いに没頭していく二人。少しずつ距離が近づいていく二人だが、次第に強さを増すチェーンソー男。それは何故なのか?そしてこの戦いの意味は?チェーンソー男の正体は?そしてついに、最終決戦の時が訪れる・・・。

 

S原:今回はこれをどうしても紹介したいねん。原作は滝本竜彦の同名小説。ぼくは全然知らんけど、結構話題になったらしい。だから、この映画もそれなりに有名かも。もしも「おいおい、これはメジャー作品やがな!」「ワゴンセールコーナー作品と一緒にしたら、あかん!」と突っ込まれたら謝るしかない。

Y木:おれもおまえも、最近の映画や小説の状況なんか、知らんからな。というか、ええ年して流行を追い続けるちゅうのもどうかと思うけど。

S原:昔から我々2人は、そもそも流行に疎いけどな…(苦笑)でもなー、これはマイナーな、というかB級映画やと勘違いするって。だって、ストーリーをみてよ。チェーンソー男が、女子高生と戦う映画やで?(笑)「片腕マシンガール」(2008)とか「ゴーストリベンジャーJK」(2010)とか「最強兵器女子高生RIKA」(2008)とか、そういう路線やと思うやろ。

Y木:なんか、すごいタイトルの映画ばっかりやな(苦笑)

S原:「最強兵器女子高生RIKA」は、またの機会にレビューします。お楽しみに!

Y木:えー…(ため息)

S原:まあそういう類の映画やと思って、ちょっとバカにしてたのよ。でも観始めて驚いた。だってちゃんと出来てるもん。

Y木:こらこら。

S原:結論から言うと、これは面白かった!個人的には好き!でも、人によって評価が変わるやろな。

Y木:こういうストーリーやもんな。

S原:そやな。まずストーリーは上のあらすじのまま。本当に、女子高生が制服のまま、チェーンソー男と戦うだけ。好きな人にはたまらんやろな。ただ、「SFアクション」というよりは、たまたま、戦いにまきこまれた男子高校生が、女子高生に恋心を抱く(そして守りたいと思う)「青春映画」やねん。

Y木:へえ。

S原:内容はくだらないと言ってしまえばそれまでなんやけど、とにかくこの映画はキャストが素晴らしい。主人公は市原隼人。情けなくて自信のない性格なんやけど、どこか芯の強さがある役柄をよく演じたと思う。もっと良いのは、戦う女子高生役の関めぐみ。彼女は本当に素晴らしい。いっぺんにファンになったわ。

Y木:ファンって…きもいなあ、ええ年して。

S原:ほんまに魅力的なんやって!キリっとした表情と、主人公との距離感に戸惑う表情、ケガをしたときに主人公に助けてもらうときの表情、もうどれも良いねん。アクションシーンも違和感ないし、もっとメジャーになってもおかしくない女優やと思う。いや、もうメジャーなんかもしれんけど。

Y木:えらい評価が高いな。

S原:この映画の役が、ハマっただけかもしれん。でもこの人の存在感とか立ち姿は稀有やで。それに、この映画では他の役者もええねん。

Y木:脇役?

S原:そうそう。浅利陽介は主人公の友人なんやけどな。何をやっても中途半端な役柄を上手く演じているし、映画のペースチェンジに成功している。すでに故人となってしまった友人役の三浦春馬は少ない出番なのに全部持っていくような雰囲気がある。実際、三浦春馬を賞賛するレビューが多い。主人公と浅利が住んでいる下宿先のお姉さん(野波麻帆)や学校の先生(板尾創路)まで自然な演技で、あーこういう人おるよなあって思う。こんなにキャストの魅力を堪能したのは久しぶりやわ。

Y木:キャストが良いか。たしかに、そういう映画はええよな。

S原:かなり前に「ユニットバスシンドローム」(2005)という映画を取り上げたけど、あの映画の主演2人(山中崇勝俣幸子)が個人的にすごく好きやねん。あとは「フィギュアなあなた」(2013)の主演2人(柄本佑佐々木心音)の組み合わせも好き。ぼくとしては、それに匹敵する2人の組み合わせ(市原隼人関めぐみ)やな。

Y木:2人が魅力的に思えるっていうのは、やっぱり監督のセンスちゃうの?

S原:そう思う。「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」の監督(北村拓司)は、CMを撮っている人らしい。あまり映画の監督はしてないみたいやけど、これだけ俳優を魅力的に撮れるだけでも、すごいと思うけどな。たぶん「人」を撮るのが上手いんとちゃうかな。「人」といっても、派手な展開のあるドラマじゃなくて、何気ない場面の積み重ねで、奥行きを出すというか…このへんは上手く言えないから、もう観てくれとしかいいようがない。

Y木:チェーンソー男はどうなん?ホラー風?

S原:ホラーではなくSFアクションかな。夜空から突然襲ってきたり、夜の闇からヌーと現れたり、この場面もかっこいいよ。アクションシーンは賛否あると思うけど、ぼくはOKやな。この映画の雰囲気にピッタリやし。たぶん、潤沢な予算はなかったと思うけど、かなり工夫して撮影したんとちゃうかな。例えば、ロケ地。ちょっと変わった公園や、水族館や江戸村など、ユニークな場所を選んで丁寧に撮っていて、これも作品の魅力になってる。学校や下宿先の場面も手を抜いてなくて、結構粘って撮影したんとちゃうかな。

Y木:意外と丁寧な作りってことか。

S原:うん。はじめに言ったけど、とにかく良い意味で完全に裏切られた。観る前の期待値が低かったせいかもしれんけど…いや、そんなん関係なくやっぱりこの映画は好きやわ。

Y木:ふーん、でもまあ、このストーリーでは、はじめから観ないと決めつける人もおるやろうな。

S原:そこが残念。でも、思うねんけど、こういうユニークなセンスの監督(北村拓司)にもっと予算の大きい映画を撮らせてあげればいいのになあ。でも、とても出資者/スポンサーはそんな冒険は、でけへんねやろうな。

Y木:でけへんやろうな。

S原:ちょっと変わったセンスのある監督にチャンスをあたえへんから、テレビドラマの延長のような日本映画ばっかりになる。同じような俳優がでて、同じような話ばっかり。キムタクとか、綾瀬はるかとか、女子高生がツンデレ男子に振り回されるとか、もう別に観んでもええやろ?(笑)

Y木:いつも言うけど、おれは邦画にまったく期待してない。いまでも、邦画に期待をしているお前は偉い…いや偉いわけじゃないか(笑)

S原:さあ、みなさま。これはイケます。俳優たちの魅力たっぷりです。女子高生がミニスカートでアクションすると聞くと敬遠する人もいると思いますが、青春映画だと思えば大丈夫です。とにかく、市原隼人関めぐみ!この2人の魅力を味わってください。僕は大好きです。北村拓司監督、市原隼人さん、関めぐみさん、このブログにコメントくださーい。久々にきっぱりと言いますよ、マストバイです!