S原:キング原作映画、最後はこちら!
Y木:おー荒野に佇む少女……これはなかなかの雰囲気かも。
(あらすじ)
ネバダ州の荒れ果てた田舎町、デスペレーション。動く人影はなく、通りには当たり前のように死体が転がっているこの町は、異常なまでの凶暴さと支配欲を持った保安官に支配されていた。町に近づくものを拉致し、殺害あるいは留置所に監禁していく、悪魔の化身ともいうべき保安官。囚人たちは、神の声を聞く不思議な能力を持つ少年を中心に一致団結し、この悪魔との戦いに挑んでいくのだった…。
S原:これ130分くらいあるねん。
Y木:へえ長いな。
S原:たぶんテレビ映画(ドラマ?)で、前編・後編で放映したか、再編集したんとちゃうかな。そのせいかもしれんけど、どうもリズムが悪いねんなー。
Y木:テンポってこと?
S原:それもあるけど、なんか映画にのめり込めないねん。最初はええ雰囲気やねん。ある夫婦が田舎の道(まわりは砂漠のような辺鄙なところ)を車で走っていると、パトカーに乗った保安官がやってきて停車させられる。保安官は顔に傷だらけの大きな男で、会話がうまくかみ合わない。結局、保安官にいちゃもんをつけられて、夫婦は(麻薬所持で)逮捕されてしまう。保安官は、パトカーに乗せて自分の町へ連れていく。その町の名前がデスペレーション。街はほぼ無人で、不気味な雰囲気が漂っている…こんな出だし。ええ感じやろ?
Y木:キングっぽいな。
S原:でもここからがダメになる。町に着いて留置場にいれられる。留置場にはすでに他に収容されている男女たち5~6人がいる。その人々から「あの保安官は気が狂っている」「次々と殺しまくっている」と聞かされる。
Y木:ほー殺人鬼やったんか。
S原:さあ、留置場からどうやって逃げるか?どうやって保安官をやっつけるのか?という流れなんやけど…さっきも言ったけど、どうもあかんねん。
Y木:具体的にはどうあかんの?
S原:バックボーンは「宗教」やねん。人それぞれやけど、「宗教」っていうのが個人的にちょっとなー。
Y木:保安官が悪魔ってこと?
S原:うん。あの悪魔に対峙するのは、「信仰の力」と言う話になってしまう。
Y木:信仰の力か。大半の日本人にはピンとこないやろうな。
S原:こういうストーリーって、いかにも「B級」やん。大風呂敷を広げるんじゃなくて、もっと狭い範囲で戦う方が面白くなると思うねんけどな。
Y木:狭い範囲?
S原:例えば、「脱出」(1972)も「悪魔のいけにえ」(1974)もすごく限定的で主人公たちが偶然に体験した恐怖譚やろ。それ以上でもそれ以下でもないやん。でもそれだからこそ、観客に主人公たちの内面(恐怖)が伝わってくる……
Y木:言わんとすることはわかるけど、それって映画の出来の問題とちゃう?結果論というか。別に宗教とか神様とか大風呂敷をひろげても、結果として面白いかどうかだけやろ。
S原:あーそうかな。…うーん、そうやな(笑)
Y木:ま、この映画を観ておまえがそんなことを考えたっていうのは、この映画が面白くないからやろうけど(笑)
S原:たしかに。
Y木:でも、神様が急にでてくるわけじゃないんやろ?
S原:でません。留置場には男の子もおるねん。その子が「神様を信じればここを脱出できる」「お願いですから、われわれをお守りください」と祈りはじめる。そして、石鹸を体に塗って、ヌルーっと鉄格子を通り抜ける。
Y木:それ神様のおかげじゃなくて、石鹸のおかげやろ。
S原:いーえ、神様のご加護ですよ、ご加護。それで、ほかの大人たちも神様を信じて、悪魔の化身である保安官と対決していく……
Y木:監督は?
S原:ミック・ギャリスという人。ネットでみると「スティーヴン・キングお気に入りの監督」らしい。なんで、キングはこんな凡庸なセンスの人がお気に入りなんやろ。
Y木:もともと、あの人はそういうB級テイストが好きな人やん。
S原:そうやけど、自分の原作映画はもうちょっと、ちゃんと作る人に頼めばええのに。
Y木:ちゃんと作ったキューブリックのことは酷評するくせに。
S原:あーボロクソに言ってたなー。そういえば、「シャイニング」(1980)は、キング自身がプロデュースして再映像化したんやで。だれも話題にしないけど…(苦笑)
Y木:へえ、リメイクしたんや。観たの?
S原:観た。悪い出来ではなかったけど、大したことはなかった…ような気がする。全然印象に残っていないねんなー。
Y木:この「デスペレーション」の、オチというかネタバレは?というか、どうせ町に巣くう死霊の怨念とかが原因やろ?
S原:正解。むかし鉱山町デスペレーションは、鉱山の町やったのよ。その閉鎖された採掘場にいる邪悪な存在が原因やな。
Y木:なんというか、それもキングらしいといえば、キングらしいな。
S原:キングらしいと言えば、セリフとかも「いかにもキング!」みたいな変な言い回しが、ほとんどないねん。このへんもキング風味の面白みが薄くなってしまう要因とちゃうかな、
Y木:最後は?
S原:神様へ信心と悪魔の対決です。みんなで「我々を悪魔からお救いください」とみんなでお祈りをします。神への愛です。もちろん、最後に愛は勝つ~!
Y木:どっかで聞いたフレーズやな。
S原:さーみなさま。今回のキング3本勝負はいかがだったでしょうか?個人的には「ドランのキャディラック」(2009)が一番面白かったですが、人によって好みはあるでしょう。それにしても、同じようなB級テイスト満載の小説をいまだに書き続けて、ヒットさせているキングは、冗談抜きでスゴイですよ。キングさーん、これからの映画の原作になるような小説を書き続けてくださいーい!ワゴンコーナーで待ってまーす!