S原:さあ、今回はロジャー・コーマン製作映画!
Y木:でたー!ロジャー・コーマン!
(あらすじ)
数々のB級映画を製作し、カルト的人気を誇るロジャー・コーマン製作総指揮のモンスター・パニック。米軍が医療用に作り上げたのは、様々な生き物の強さと人間の知性を持つ最強の生物だった。輸送中にテロリストに襲われてしまったことから、医療用の生物が逃げ出し次々に人間を襲いはじめる。テロリストたちを食いつくした生物は人間の血で巨大化する。生け捕りを命じられたニック少佐は最強生物の暴走を止めることができるのか…。
Y木:ふと思ったけど、ロジャー・コーマンといわれても、コアな映画ファン以外は知らんのとちゃう?
S原:あーそうかも。えーとですねえ、ロジャー・コーマンは、「B級映画の帝王」ですな。要するに、お金をかけずに(製作費を抑えて)映画をつくって、確実に儲けを出すというタイプの映画製作者・監督です。もちろん、賞レースとか崇高なテーマとかは無縁で、ひたすら大衆受けする映画、それもちょっとオツムの弱い男が対象のSFとかホラー映画を得意としている人。こんな感じの人です。
Y木:たしか、自伝みたいなもん書いてたやろ?
S原:うん。『私はいかにハリウッドで100本の映画をつくり、しかも10セントも損をしなかったか』。ここで、注目なのは「大儲けしたか」ではなく、「損をしなかったか」というところ。このへんが、ロジャコマ魂があって尊敬に値するよな。
Y木:尊敬なんかせえへんわ、あんな奴。えーと、ドキュメント映画もあったやろ?
S原:うん。その名も「コーマン帝国」(2011)。邦題を付けた奴は天才やな(笑)でも観てないねんなあ。これ、ファンが多いせいか高値やねん。とてもワゴンセールには並ばない逸品やな。さすが帝王。
Y木:というか、「帝王」とか言って変に持ち上げるからおかしいねん。「しょーもない映画を作り続けているヤツ」なんやから。
S原:一応、しょーもない映画でビジネスを成り立たせているのがえらいやん。
Y木:おまえみたいな奴がそのビジネスを支えてるちゅーねん。まあそれはええとして、それで、この映画は?
S原:うーん可もなく不可もなく…いやおもろくないんやけどな(苦笑)もういままで2000本くらい作られてきた「エイリアン」(1979)の亜流映画やな。
Y木:おまえも好きやなあ…
S原:好きは好きやけど、この映画は全体的に「薄味」やねん。低予算なのはOKやから、もっと「濃い味」を味わいたかったな。
Y木:薄味?個性がないってこと?
S原:なんというか……とにかく全然印象に残らない(苦笑)少し前にみたけど、かなり忘れてしまったわ。でもキャッチ・コピーがええねん。コーマンテイストたっぷり。「エイリアンより最悪。プレデターより残虐」ええ感じやろ?
Y木:中途半端な強さやな。しかしなあ、いまだに「エイリアン」もどきが作られるんかあ。パイオニアとはいえ影響は絶大やな。
S原:うん。逃げれない空間で戦うタイプのSFモンスター映画やな。やっぱりマネしたくなるんやろうな。製作費も安く済みそうやし(笑)
Y木:「ギガンテス」…名前もダサいなあ…これは何?太古の眠りから覚めた巨大生物?
S原:いーえ、そんな子供だましな設定ではありません。もっと科学的ですよ、あなた。なんと!ギガンテスは、サソリとゴキブリと人間の遺伝子で作られた生物なのです!
Y木:子供だましやがな!
S原:しかも、驚くなかれチタンまで組み込んでいます。バイオですよ、バイオ!
Y木:意味のないバイオやな。それに、なんでチタンやねん。
S原:さあ…説明はなかったけど、なんというかチタンが組み合わされることで、黒くて照りがでるやん。カッコよさが数段UPするよなー。
Y木:せえへんわ。どうせストーリーはあれやろ?①研究してたギガンテスが、暴走して手に負えなくなる。②軍人が戦う。③やっつける。それだけやろ?
S原:あー、あなた観たことあるのね。
Y木:こんな映画観るか!ストーリーなんかどれも一緒やから、わかるねんって。
S原:まあ、あらすじは、あなたの言う通り。ヨーロッパ(?)で米軍の輸送トラックがテロリストに襲撃されます。そのなかには実は米軍が謎の怪獣・ギガンテスがいたのです。あっというまにテロリストをやっつけると、事態を収拾するために軍が出動します。研究は「生け捕りにして」と懇願します(とくに女性研究者がしつこいくらいに生け捕りを主張)でも、軍は研究者の言うことなど聞く耳を持たずに、ひたすらギガンテスを攻撃する…という話。もう帝王コーマンにとっては、ストーリーの目新しさとか工夫は興味がないんやろうな。
Y木:そうやろうな。
S原:要するに、怪物(ギガンテス)がいかにかっこよく暴れるか?をみせる映画やな。倉庫みたいなことろで戦うだけなんやけど、軍人が胴体がちぎれたり首チョンパになって死ぬ描写を観てると、なんかほのぼのとした気持ちになるよな。
Y木:なんで、ほのぼのやねん。ギガンテスに特徴はないの?
S原:うーん、設定のわりには、普通の怪物やったなあ。パッケージみたいに巨大でなかったのはお約束やし、あとは、やたらと尖ってたわ(笑)あー、思い出した。たしか銃弾を撃たれても体内で栄養にしてしまうという設定やった…と思う。
Y木:じゃあ、銃を撃っても仕方ないんか。
S原:いや、軍人たちはひたすら銃を撃ってたで。
Y木:なんやねんもう。頭の悪い奴らやなー。ラストは?
S原:えーとどうやったかなあ。確か、ギガンテスを吹っ飛ばして、おしまい……やったと思う。
Y木:思うって、いいかげんやなあ。
S原:ほんまに印象に残らないねんって(苦笑)ほんまにラストは覚えてない。どんなんやったかな…
Y木:ひどいな。
S原:さー、みなさん。そういうわけで、コーマン映画をみつけたら、見逃してはいけませんよ~。え?他のZ級映画とどこが違うのかって?それはどれも一緒ですよ、だんな。でもよく考えてください。50年後はDVDなんかありませんよ。100年後はみんな死んでますよ。どうせなら、生きているうちにコーマン映画を楽しまなくっちゃ!レッツ・トライ!