あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

まだまだ知らない日本映画を10本発掘!「狂犬」(2015)の巻

狂犬

 

S原:今回はこれ。55分の短い映画ですよ。

Y木:へえ、結構シリアスな感じやな。

(あらすじ)

エリート街道を進んでいた刑事の長塚は、上司の不祥事のあおりを受けて所轄に左遷され、妻からも離婚を突き付けられ、うだつの上がらない日々を送っていた。起死回生を図るべく、なんとしてでも実績を上げ、刑事としてもう一度表舞台に立とうとしていた。一方、長塚のSである探偵の下山は、ある女性から父親探しの依頼を受けていた。下山が探し当てたその父親は、「アベさん」と呼ばれるホームレスとなっていた。そんな中、下山は長塚から拳銃摘発の捏造に協力させられ、出頭する人間を用意するように迫られる。下山は、アベさんにその話を持ち掛けるが…。

 

S原:これはなあ…うーん。

Y木:あかんの?

S原:いや、あかんわけではなくて…

Y木:意外と良い?

S原:良い…わけでもなくて、うーん…

Y木:なんやねん、もう。

S原:少しまえに「孤狼の血」(2018)という映画があったんやけどな。悪徳刑事(役所広司)が主人公でもうメチャクチャする映画やねん。役所広司の暴走ぶりを楽しむタイプの映画なんやけど、あのテイストを狙ったんとちゃうかなあ。

Y木:へえ、悪徳刑事か。

S原:あらすじは、上の通り。本来は優秀なのに、今はくすぶっていて成績の悪い刑事が、拳銃を摘発(実物をみつける)ことを、上司に暗に強要される。妻には離婚の話をされる(主人公は離婚したくない)。追いつめられた主人公は、刑事でありながら、汚い手段も辞さずに拳銃発見&犯人自首を強引にでっちあげる計画を考える。ところが、ちょっとした偶然から上手くいかなくなっていって、どんどん悪いほうへ転がっていく…

Y木:コーエン兄弟みたいで、面白そうやん。

S原:コーエン兄弟……とも違う感じなんやけどな。やっぱりこの手の映画って、刑事が悪いことと分かっていながら、どんどん朱に交わっていくところが面白さやろ。相手を脅したりすかしたり、裏をかいたり、金を渡したりもらったり、一線を越えで自分の目的とか欲望を達しようとするわけやん。この映画では、ちょっと大人しめというか、なんか人間のギラギラした内面がみえないのよ。

Y木:演技がはじけてないってことか?

S原:いやー演技はまあまあちゃうかな。面構えも結構良いし。時々不自然なセリフもあるけど、反対に独特の個性やと思ったわ。映画全体の作りも下手ではないと思うんやけど。この映画の欠点は、全体的に同じ基調ですすむことやと思う。

Y木:同じ基調って?

S原:雰囲気というか空気感というか……どうもメリハリ、緩急がないねんなあ。BGMでアコギが使われてるねんけど、何度も聞かされるとワンパターンに感じてしまう。雰囲気が統一しているとも言えるけど、うーん、やっぱりこの映画は刑事が追い詰められていく(足を踏み外す)ストーリーやからな。やっぱりもっとハードでギトギトした展開を期待してしまうよな。

Y木:良い意味で、そういう予想を裏切りたかったんとちゃうの?

S原:そうかもな。ぼくはイマイチやったけど、この雰囲気が好きっていう人もおるやろうし、これはこれでええんかもな。

Y木:ストーリーとしては、複数に登場人物が絡み合っていく…という感じなんやろ?

S原:そうそう。関係のない人達(どれも裏がある人達)が、偶然に交差していくんやけど、このへんもあまり上手くないかな。伏線とかもほとんどないし、観ていて「あー!そういうことか!」とか「へえー!」いう場面はなかった。やっぱり淡々としすぎてるんやって。破綻したキャラクターたちの話なのに、映画としてはどこかマジメな感じがしてチグハグなんやろなあ。

Y木:なるほど、話と演出がかみ合ってないと?

S原:そう言わざるを得ない。映画自体が破綻気味でも、強烈にキャラクターの印象が残るっていう映画ってあるやん?そういう映画を目指したほうがよかったんとちゃうかな。

Y木:そうか。まあ観てないから分からんけど、ちょっと残念やったのね。

S原:しっかりと作っているし、たぶん予算は少ない中でかなり工夫して撮影しているのは分かるから応援したい。だけどもう一回観るか?と言われれば、うーん。

Y木:ラストは?

S原:いまではホームレスとなった「アベさん」に、(拳銃所持の)罪をかぶせようとするが、うまくいかない。主人公は「アベさん」を轢き殺そうとするが、寸前で思いとどまる。そのあと、離婚を切り出されている妻に電話をする。警察を辞めてもう一度と人生をやり直すという意思を伝える。その直後、「アベさん」は別の車にはねられて死んでしまう。それを呆然とみつめる主人公。ここで、おしまい。

Y木:あーそういうラストな。

S原:さあみなさん、ちょっと変わった味わいの映画を観たい人におススメです。どこか歯がゆい感じもしますが、上手い下手は別として役者たちは個性的です。どこかで見つけたら、一度手に取ってください。こういう映画から、意外と次のスターが出てくる気がします!