あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

便乗映画特集!ルトガー・ハウアーじゃない「ヒッチャー2004」(1998)の巻

ヒッチャー2004 [DVD]

S原:さあ、今回はこれ!

Y木:うわー、タイトルからして終わってるぞ。

(あらすじ)

別居中の男(チャーリー)が、気分転換に車でリノに向け出発する。途中、車が故障して立ち往生している男を同乗させてやるが、彼は自分で人殺しである事を、告白する。 怖くなったチャーリーは、男を置き去りにして立ち去るが・・・。

 

S原:昔、映画を好きになったころ、「ヒッチャー」(1986)を観て、「うわ、これはおもろいなあ」と思ったのよ。

Y木:ルトガー・ハウアーが追いかけてくるやつやろ。今思えば、いかにも80年代なんやけどたしかに面白かった。

S原:ルトガー・ハウアーはええよなあ。あのクセのある感じがたまらん。「ブレード・ランナー」(1982)は超有名やし、「ナイトホークス」(1981)「レディホーク」(1985)と通好みの映画も出てる。何気なく珍作SF「サルート・オブ・ジャガー」(1989)なんかに主演しているのも親近感湧くよな。マッドマックスみたいな荒野で、楽しそうに鎖鎌をビュンビュンふりまわすねんで(笑)

Y木:本人は触れられたくない過去やろ。そっとしておいてあげて。

S原:今回は、その名も「ヒッチャー2004」。もちろんルトガー・ハウアーはでていません。バッタもんというか亜流というか。

Y木:それでどうやった?

S原:いやあ、なんとも言えん映画やった。

Y木:いつも通りのB級か。

S原:出来が悪いとかじゃなくて…えーとですねえ、ヒッチャーの面白さって、『どこにでもいるような普通の人間が、たまたまヒッチハイクを拾ったばかりに怖い目にあう』『こっちは悪いことしてないのに、エライめにあう』というところやろ?

Y木:そやな。

S原:この映画の主人公は、まず『どこにでもいるような普通の人間』じゃないねん。

Y木:ん?

S原:主人公は、中年男性でちょっとお金を持ってそうやねん。妻とは不仲で別居中。でも、まだ妻に未練がある。なんで妻が出て行ったのか説明はない。

Y木:べつに、どこにでもいるオッサンやん。

S原:ところが、かなり癖のある人物でな。休暇をとって、旅行先(リオ)に行くねんけど、ギャンブルがやめられないみたい。それもギャンブルのドキドキが好きとかじゃなくて、単に楽して金儲けをしたいだけ。欲望丸出し(笑)

Y木:えー、なにそれ。

S原:運転中も妻に未練たらたらで、何回も留守番電話に「いるんだろ?」「頼むからでてくれ」「声が聴きたい」「別れたくない」と泣き言を言うねん。

Y木:ま、それだけ奥さんのことが好きってことやろ?

S原:いーえ、違います。だって、立ち寄ったバーで女性を口説いてすぐにチョメチョメしてたもん。

Y木:おいおい。

S原:そのくせチョメチョメした後、女性からお金を要求されたら、「金を払うなんて聞いてないぞ!」「ちょっと高いだろ!」って怒るねん。

Y木:えー性格悪いなあ。

S原:やろ?こういう癖のあるやつが主人公。そいつが、ヒッチハイクの若い男を拾うことになる。

Y木:あーここから怖い体験するわけやな。若い男が変質者というのが分かってきて…という展開やろ?

S原:いいや、べつに若い男はそんなにおかしくないねん。

Y木:なんやねん、それ。じゃあ、べつに怖がることないやん。

S原:一応、若い男が「いま、人を殺してきたんだ」とか言うから、だんだん主人公は気味悪くなる。でも、気味が悪くなる原因ってそれだけやで?別に拳銃をちらつかせる、とかもないし、基本は会話してるだけ(笑)「人を殺した」って言うのも冗談かもしれんし、主人公は普通に接してたらええんとちゃうの?そう思わん?

Y木:おれに聞かれてもしらんがな。

S原:この主人公は、なぜか不自然なまでに恐怖を感じる。観客が理解できないまま、勝手に興奮して、結局若い男を置き去りにして車で逃げ去る。しかも置き去りにするときに「ファーーック!おまえみたいな奴は、一生そこにいろ!」と叫ぶ。べつに主人公には迷惑をかけてないのに(笑)

Y木:ひどいな。

S原:しかも、若い男が大事にしていた荷物を、車から放り出して「ざまーみろ!」。

Y木:最低なやつやん。

S原:最低やで。こんな主人公に感情移入できません。

Y木:それで、そのあとに逆恨みした若い男がストーカーみたいに追いかけてくるんやろ?それが見せ場とちゃうの?

S原:うん。でも主人公の性格が悪いから若い男が追っかけてきても、全然怖くない。むしろ若い男を応援してしまう(笑)

Y木:それってわざとちゃうの?変化球というか。

S原:そうなんかなー。でも、なんか変やねん。というか下手やねん(笑)

Y木:最後はどうなるの?

S原:どんでん返しがある。偶然ヒッチハイクで出会った男は、実は別居中の妻(と愛人)が頼んだ殺し屋やったのよ。夫(主人公)の保険金狙いだとわかる。

Y木:それで主人公どうするの?

S原:SMに目覚めます。

Y木:は?

S原:ほんまやねんって。殺し屋に向かってニヤニヤしながら「おまえに暴力を振るわれて、かえって気持ちよかった」「いままで、こういう暴力は避けていた」とか納得の表情で長々と話す。「むしろ感謝するよ、ふふふ」。

Y木:ふふふ、じゃねえ。じゃあ、主人公と殺し屋は仲良くなるんか?

S原:いや、そのあとに主人公が急にキレる(笑)「おれは死なないぞ!」「かわりに、おまえが死ね!!」って怒って、若い男を殺す。しかも可燃性の液体をかけて体ごと燃やす!

Y木:ムチャクチャやがな。

S原:自分の身分証明書を死体(殺し屋)のポケットに入れて、自分は死んだことにする。今後は別人になりすまして生きるのです。

Y木:適当な設定やなあ。

S原:さらに、これで勢いづいた主人公は、ついでに妻と愛人も殺す!

Y木:どうやって?

S原:小包で時限爆弾を送りつける!妻と愛人を家ごと爆破!(笑)

Y木:郵送で爆弾!なんかスゴイな。

S原:最後は、カジノで女性とイチャイチャして、「今晩、チョメチョメするかい?」とニヤリとしておしまい。

Y木:なんか……ちょっと面白いような気がするぞ。

S原:いや面白くないよ、こんな映画。演出に切れ味があったら、もっと良くなったと思うけど、まあ珍妙な映画やったわ。

Y木:あー結局はダメなのね。

S原:さあ、みなさん。いつものB級映画とは一味違うような気がしますが、たぶんそれは錯覚でしょう。感情移入できない主人公、しょぼいストーカー、とってつけたようなどんでん返しの3点セット。これはもうマストバイするしかないでしょう!