Y木:これは…おかまちゃんの映画?
S原:うーん、これはなあ…
(あらすじ)
2003年サンダンス映画祭で会場を爆笑の渦に巻き込んだコメディ。陰りをみせる年増女優・エヴィは、産婦人科医に憧れるココ、女優志望の田舎娘・ヴァーラに部屋を貸すことにするのだが…。
S原:これはですねえ、おかまちゃんの映画ちゃうねん。これは、女性役も全部男性(男優)が演じている映画やねん。
Y木:ん?よくわからんけど。
S原:つまり、役者が全員男。『逆・宝塚方式』やな。
Y木:ああ、そういうこと。でも、それって面白いんかな?(苦笑)
S原:アイデアは面白いと思うで。
Y木:でも、見た目はオカマやん。いや、オカマちゃんをバカにしてないねんで。
S原:最初は違和感だらけ(笑)ブサイクなおっさん達が大真面目に「女性」を演じているから。ところが、観ているうちに、だんだん慣れているねんなー(笑)
Y木:へえ。
S原:ただ、肝心の話がなあ…
Y木:結局は、どんな話?コメディなんやろ?
S原:大笑いする感じじゃなくて、シニカルなコメディかな。女性としての悩みとか、女性ならではのエピソードが、辛口エッセイ風に描かれている、といえばええのかな。ところどころで、ホロリとさせるような演出もあるけど、個人的にはイマイチやった。
Y木:エピソードが羅列される感じの映画やな。
S原:そうそう。エピソードタイトルが挿入されたりな。思うねんけど、たぶん製作者も監督も、「男性が女性を演じる」しかも「テーマは女性としての生き方・悩み」という2つで満足してしまったんとちゃうかな。
Y木:なるほどな。まあ、そこが「売り」やから、しゃあないかもな。
S原:「トータル・リコール」(1990)でも、おばさんの顔が割れて、シュワちゃんの顔が出てくる場面が売りやったもんな。
Y木:あーおまえ、あのシーン好きやなあ。当時興奮して何回も聞かされた(苦笑)そんなに凄いんかと思って観たら、しょぼい映画やった。
S原:えー面白かったやん。
Y木:おもんないわ。なんで、火星の赤色がセロファンの色みたいやねん。「トータル・リコール」の話はもうええわ。この映画について話しておくれ。
S原:さっき言ったけど、男性が女性を演じていること自体は、徐々に違和感がなくなるねん。だから、ストーリーが凡庸やと「おもしろくないコメディ」になってしまう。
Y木:『サンダンス映画祭で会場を爆笑の渦に巻き込んだ』って解説にあるで。
S原:ほんまかなあ。こんなんで爆笑するんなら、「裸の銃を持つ男」(1988)を観たら、もう笑い死にするんとちゃう?
Y木:するか、あんな下らん映画。
S原:えー、最高におもろいやん。
Y木:おもんないわ。「裸の銃を持つ男」はええねん。この映画のことを話してくれって。
S原:要するに『アイデア勝負!』と言い切るには、パンチが足りない。意欲は買うけど、ちょっと人にはおススメしにくいな。かといって映画マニア向けでもないし…
Y木:そうなんや。今回は、ただの変な映画って感じやな。
S原:あ!その通り。「変な映画」という表現がピッタリ!でも、変な映画といっても、「ホーリー・マウンテン」(1975)とか「プロスペローの本」(1991)みたいな超絶変な映画じゃないから、結局は印象にのこらないという。
Y木:その2本を引き合いにだすのも、どうかと思うけどな(笑)
S原:さあ、みなさん。珍妙な映画のわりに薄味な映画ですが、世の中にはこんな映画があるのだということは知っておいても損はないでしょう。ちなみに、一緒に観ていたうちの奥さんから、「なにこれ、しょーもなー。なんで、こんなDVDを買うんよ。もったいないわー。このお金で、今日の鶏肉もムネ肉じゃなくて、モモ肉が買えたでしょ!」と怒られました。さあ、夫婦の会話のためにも、ご家庭に1本、ぜひどうぞ!
Y木:おまえ、大丈夫か?いろいろと…