S原:今回はこれです。
Y木:なんかアート系の映画って感じやな。
(あらすじ)
世界中が注目する弱冠26歳の新鋭、ディエゴ・レルマンの長編監督デビュー作となる青春ロードムービー。ブエノスアイレスで無為な日々を過ごすランジェリーショップの店員・マルシアは、ある日レズビアンのふたり組に無理やり誘われ行きずりの旅に出る。
S原:これはアルゼンチンの映画やねん。
Y木:珍しいな。
S原:でも既視感だらけでな。
Y木:既視感?
S原:昔、ジム・ジャームッシュとかヴィム・ヴェンダースのロードムービーがあったやろ。一時期、映画マニアが絶賛したりして。
Y木:好きやったで。「ダウン・バイ・ロー」(1986)とか「パリ・テキサス」(1985)とか。
S原:この映画は、とくに「ストレンジャー・ザン・パラダイス」(1984)とか「ダウン・バイ・ロー」あたりによく似ててな。
Y木:そうなんや。
S原:というか、そのまま(笑)当時のジャームッシュっていえば…というイメージってあるやろ?たぶん、そういうイメージとこの映画のやろうとしていることは一緒やと思うんねん。
Y木:白黒とか?
S原:そうそう。それもザラついた感じのモノクロームやねん。
Y木:セリフが少なくて?
S原:そうそう。つぶやくような言い回しでな。
Y木:あー、なんかわかってきた(笑)雰囲気はわかったけど、どんな話なん?
S原:ロードムービーといっていいと思うけど、とくに大きな出来事があるわけでないねん。このへんもよく似ているかな。主人公は太った女性なんやけやけど、毎日退屈そうに仕事してるねん。あるときに、レズビアンの2人組に拉致されて、車でうろうろすることになる。そうこうしているうちに、レズビアンの1名の大叔母さんの家に行くことになる。そのまま3人は住み始める。
Y木:あー、たしかに既視感が…
S原:その大叔母の朗らかな性格に癒されたり、レズ性行為を初体験したり…そんなことをしているうちに大叔母は急死する。それを機に主人公は、家に帰っていく…おしまい。単純やろ?
Y木:いやー観てないけど、もう脳内再生できるなあ(笑)
S原:これは、あなた好みの映画やと思うで。こういう映画もたまにはええと思うけど、こういう系の映画は「体調映画」やと思うねん。
Y木:体調映画?
S原:体調が良いときに観たほうがいい映画ってこと。
Y木:なんやねん、それ。
S原:いやー、明日は休みでリラックスしているときとか、しんどい仕事が終わってホッとしたときとか、悩みごとが解決したあととかに観たら、楽しめる映画やと思うねん。逆に、しんどい時に観てはいけません。この映画を見て元気が出るとか、気分転換ができるとかは無理やからな。
Y木:そんなん人それぞれやろ。
S原:そうやねんけど、ほんまに白黒画面を観るだけやねんって。とくに映像がきれいなわけでもないし、俳優が魅力的でもないし、セリフも少ないし、展開もゆったりやし。ちょっと構えてみたほうがええ映画やと思うなあ。人によっては苦痛やで。
Y木:そりゃ、いまのハリウッドのようなスピードのあるカチャカチャした映画ではないやろうけどな。そういう雰囲気というかを味わう映画でしょ。
S原:まあな。この映画はロカルノ国際映画祭銀豹賞はじめ、たくさんの賞を受賞しているけど、個人的にはちょっと信じがたいな。
Y木:批評家受けする映画なんとちゃうの?
S原:たぶんそうやろうな。マニアックな映画が好きな人はええと思うけど、それ以外の人にはおススメできないなあ。もちろん個人の好みなんやけど…
Y木:こういう映画は、小説でいえば「行間を読む」というか、ドラマチックでない展開にドラマを観るような狙いなんやろうけどな。
S原:うーん、それならもう少しキャストを魅力的にしてほしかった。ほんまに普通の人ばっかりやから。
Y木:それも狙いやろ。
S原:それはわかるけど、なんかパッとしない自分をみてるみたいやった(苦笑)
Y木:可哀そうに(笑)
S原:さあ、みなさん、どこかでみたような、でも独特のような不思議な映画ですが、こういう映画が好きなマニアは楽しめるでしょう。それ以外はスルーしたほうが無難です。あ。いま思ったんやけど、自分の感性が劣化して、こういう映画には、もうついていけないだけなんかな?
Y木:そうかもな(笑)