あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

ほぼ誰も知らない邦画 20連発!「杉山くんたちは夜専門」(2005年)の巻

杉山くんたちは夜専門 [DVD]

 

S原:いよいよ、知られざる日本映画を紹介するシリーズは、今回で最後です!

Y木:あー長かった…(苦笑)

 

(あらすじ)
どこにでもある、町の小さな工場。納期に追われ、辛い夜間勤務も馬鹿な話で吹き飛ばし頑張る、仲のいい3人の男達。そんなある日、怪しい男(津田寛治)が一人の若い女を連れ、工場にやってきた。
女は3人の誰かから、ストーカー被害にあっていると告白してきた。怪しい男は、自称ストーカー撃退のプロであるという。犯人を捜すため、様々な尋問を続けていくうち、ストーカー撃退のプロである男も、現役のストーカーであることが判明し、話は思わぬ方向へ進み出す…

 

S原:これは「邦画」とカテゴライズしてよいものか悩んだんやけどな。舞台が元みたい。「劇団おばけおばけ」の戯曲を映像化したらしいわ。

Y木:へえ。どうやった?

S原:結論から言うと、わりと面白かった。この劇団のカラーがすきな人にはたまらんと思う。

Y木:ワンシーンで話がすすんでいく感じ?

S原:そうそう。セットもほぼひとつだけ。登場人物は5人だけ。

Y木:役者は?舞台の人?

S原:この芝居をしていた人が、そのまま演じているのかどうかはわからん。ちょっと調べたけど情報が少なすぎて全然わからんかった…(笑)だけど、みんな上手かったよ。はじめは、工場で働く3人(峯岸信太郎、杉山文雄堀江慶)は、いかにも「舞台役者」のセリフの言い方やなあ、と思ったりしたけど、観ているうちに気にならなくなってくる。唯一の女性キャストに、映画やテレビにもでている吉野紗香を配役してるけど、結果的には良いアクセントになったと思う。なによりも工場で働く3人を問い詰める役の津田寛治という役者が素晴らしい。この人は出色の出来やと思うな。

Y木:そうなんや。「怪演」って感じ?

S原:そうやな。淡々としながらも、変態が滲み出ているというか(笑)

Y木:なんかすごいな、それって(笑)どういう話なん?

S原:ネジ工場で夜勤をしようとしている3人のところへ、いきなり女性と男性が訪問してくるねん。女性は、ストーカー被害にあっていると訴える。このなかの3人のなかの1人が犯人らしいというわけやな。一緒に来た男性は、ストーカー退治のプロということやけど、会話していると実は自分自身もストーカーだと言い出す。

Y木:どういうこと?

S原:「自分自身がストーカーだからこそ、ストーカーの気持ちや行動が理解できるのですよ!」と豪語するねん(笑)

Y木:あ、おもろいかも(笑)

S原:まあ、そんな感じで舞台ならではの狭い空間(工場の休憩室)での会話劇がすすんでいく。はじめは、ちゃんと話しているはずやのに、どんどん話がズレていく…

Y木:話がずれていく、ってどんな感じ?

S原:要するにストーカー被害の話をしているはずやのに、どんどんあさっての方向へ話題がいってしまうねん。例えば、日本の貧困問題とか、学歴社会とか、外国人の不法滞在とか。ふざけているわけじゃなくて、本人たちは大真面目なんやけど、おかしくなっていくねん。

Y木:へえ。

S原:この作品のポイントは、そういうズレていくのを楽しいと感じるかどうか?やと思う。

Y木:いかにも舞台って感じやな。

S原:うん。これは映像よりも舞台でみたほうが、やっぱり面白かったと思う。なんといってもライブやしな。

Y木:そうかもな。

S原:芸達者な役者たちが、どんどん話を脱線させていく…演劇としてはよくあるネタかもしれんけど、最近ぼくは演劇も観てないし、なかなか新鮮やったな。女性の職業が伏線になっていたり、いわゆる「上手い」演出もあるし、安心して観れるレベルの作品やと思う。

Y木:三谷幸喜みたいな感じ?

S原:うーん。ちょっとテイストが違うかな。三谷作品とは違って、すこしこの作品には独特の陰影みたいなものがあるねん。

Y木:ちょっと影があるってことか?暗いというか。

S原:暗いとまでは言えんけど、ほぼ工場の休憩室で話が進むし、どこか閉塞感みたいな感じはあるねん。とくに後半は、日本の暗部を示唆するような話になったりするから。

Y木:そうなんや。

S原:でも、元の舞台も面白いんとちゃうかな、と思わせる出来やったわ。

Y木:芝居・舞台としてでなくて、映像作品としてはどうなん?

S原:うーん、基本はカメラは固定して演劇をみるような作りやけど、ときどきカット割りというか編集があるねん。ところどころ屋外の場面もあるけど、正直に言ってそういう場面は、あんまり上手くなかったかな。

Y木:それはしゃーないやろ。せっかく映像にするんやし、ただ単に固定カメラで撮り続けるのも芸がないで。

S原:そうやな。まあ、やっぱり映像作品というよりも「舞台を映像化した部分」がやっぱり面白い。これが本音です。

Y木:ラストはどうなるの?

S原:うーん、これは言わないでおく。今後、この脚本で舞台をするかもしれんし、それを観に行く人もおるやろうしな。そういう人のために秘密にしておく。ちゃんと結末があるということだけ言っておきます。ラストもなかなか決まっているで。

Y木:ほー。

S原:さあ、みなさん。今回の20本紹介シリーズの中では異色作です。演劇に興味がある人は見逃せない作品と思います。演劇や映画を「作る」ことに興味がある人にもおすすめです。本当にレアな作品と思いますが、みつけたらマストバイですよ!そして、みなさん、お待たせしました。いよいよ20本鑑賞したあとの「総括」ですよ!

Y木:えー、総括なんかせんでもえーのに……