あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

ほぼ誰も知らない邦画 20連発!「ユニットバス・シンドローム」(2005年)の巻

ユニットバス・シンドローム [DVD]

 

S原:今回はこれです。

Y木:ちょっと変わった感じの映画っぽいな。

 

(あらすじ)

 別れた彼女のことが忘れられず、ユニットバスの天井裏に彼女との思い出を大切に隠し持っている男フジモト。友人のダイスケの家で行なわれた失恋パーティでも、ついユニットバスの天井裏をのぞき込んでしまう。するとそこには、別れた彼女にそっくりなシノハラという少女が座っていた。彼女はなんと、数年前にその部屋で自殺した幽霊だった。過去に未練があるという彼女の痛切な思いを聞きながら、フジモトは別れた彼女への思いを重ねていく。やがて2人は、そんな自分たちの気持ちを確認するかのようにある行動に出るのだった…。

 

Y木:いつも言うけど、こんな誰も知らんような映画をよく見つけるよなあ…

S原:これもレンタル落ちワゴンコーナーで見つけたんやけどな。行くたびに、次から次へと未知のDVDが発掘されるねん。まだまだこの世界は、まだまだ奥深いで。行き止まりない洞窟みたい(笑)

Y木:いや、突き詰めたって、そこには何にもないと思うけどな(苦笑)それで、この映画はどうやったの?

S原:結論から言うと、結構良いねん。

Y木:えー、こんなんが?

S原:これは、ジャケット(と裏面の写真)でかなり損してると思う。

Y木:どんな映画なん?

S原:あらすじは、上の通りやけど、ほんまに何も起こらない映画やねん。ハートウォーミング、ファンタジー、青春、恋愛、自己の快復…どれにもあてはまりそうで、あてはまらない感じの映画かな。

Y木:ユニットバスの天井裏に、若い女性の幽霊がおるという設定はおもろいな。やけど、そんなところに人が入れるねんなあ。

S原:ぼくも初めて知った。ユニットバスのタイプによるやろうけど、人が入れるくらいのスペースがあって、主人公(山中崇)は、そこにフラれた彼女の写真とか保管してるねん。たまに出してきて、トイレで写真を眺めているねん。

Y木:女々しいな。

S原:まあな(笑)ひょんことから、他人の家に行くねんけど、なんとなく他人のユニットバスの天井裏に入ってみるねん。

Y木:あかんやろ、そんなことしたら。

S原:確かにあかんねんけどな。まあ、そこで若い女性(幽霊)(勝俣幸子)と出会って交流していく、という流れやねん。

Y木:若い女性が幽霊かー。なんか食指が動かんなー。

S原:たしかにありがちなんやけどな(笑)若い女性の幽霊は、主人公の昔の彼女そっくりやねん。それが、偶然なのか主人公の眼にそう映っているのかはわからんねんけどな。

Y木:なんで幽霊になったん?事故?

S原:自殺らしい。数年前にその部屋で自殺して成仏できずに住み着いている。幽霊曰く「忘れられたくない」「だからここに居るの」主人公は言い返されへんねん。自分も昔の彼女のことを引きずってるからな。

Y木:なるほどな。

S原:この映画の魅力は主演の2人!これに尽きる。幽霊役の勝俣幸子と主人公の山中崇がなかなか良いねん。この2人がだまって座っているだけで「映画」になるっていう感じでな。だから、この2人に魅力を感じなかったら、ただの退屈な映画とちゃうかな。

Y木:えー、えらい褒めるやん。

S原:あーちょっと褒めすぎたかな(苦笑)もちろん傑作というわけじゃなくて「意外な拾いもの」「愛すべき小品」という感じの映画なんやけどな。

Y木:それで、ユニットバスで幽霊と主人公が交流する、という話?

S原:いや、主人公は、若い女性をユニットバスから外の世界へ連れ出す。ここからロードムービー風になるねんけど、このあたりから断然面白くなるねん。

Y木:ロードムービー?どこへ行くの?

S原:主人公は、若い女性を実家(千葉)まで連れていくことになるねん。

Y木:死んでるのに?

S原:死んでるから、やな。若い女性は、自分が死んで家族がどうしているか知りたいから、主人公と友人に車で連れて行ってもらう。実家についた日がちょうど女性の命日でな、親友とかが線香をあげに実家を訪ねてくる。でも、もちろん誰も幽霊となった女性には気がつかない…

Y木:なるほどな。

S原:女性は、ひとまず家族が普通に暮らしてるのをみて、ほっとする。と同時に誰にも気づかれずに寂しく思う。とくに親友にはもう娘がいて、その娘はどんどん大きくなっていくのを知る。母親となった親友とその娘が手をつないで帰る後姿を、黙ってみる女性の表情がええねん。悲しいような、仕方ないような、自殺をして後悔してるような、でも悔いはないような…なんともいえない表情で、親友の後をゆっくりとついて歩く。この場面はすごく好きやな。

Y木:へー。いかにも日本映画…って感じじゃなさそうやな。

S原:日本映画にしては異色とちゃうかな。主人公2人も友人たちの描き方も、どちらかというと、乾いたタッチでな。淡々と物語がすすんでいくなかに、ときどき情緒的な瞬間がでてくるって感じやねん。アメリカでも田舎を舞台にしたインディーズ系映画の雰囲気に近いかな。脇役(主人公の友人)もアクセントになっていて、奇妙な設定の映画なのに、どこか静かで自然な雰囲気になっているのに役立っていると思う。あと、個人的にはパッと切り取った感じの風景のショットも好きやな。鳥の声や田舎道、海、風なんかも上手に撮影してる。このへんは結構苦労したんとちゃうかな。

Y木:結局、幽霊の女性は実家に行った後はどうするの?そのまま、実家の天井裏に住むの?

S原:いや、最後は主人公のユニットバスに住むことになる。天井裏にいつまでも置いていた昔の彼女の写真も、これをきっかけに主人公は捨てる。このあとのラストは、主人公と幽霊の関係も含めて、きちんと結末をみせずにバッサリ斬り落とす感じで、おわる。ちょっとフランス映画みたいで、ここも余韻が残ったわ。

Y木:やっぱりうーんラストは確かにいい感じやけど、やっぱり話は地味やな。

S原:めちゃくちゃ地味。というかほとんど何も起こらない(笑)でも、たまにはこういう映画もありやと思う。

Y木:B級映画ばっかり見てるから、癒し系の映画にハマっただけとちゃうの?

S原:かもな(笑)でも、まあ楽しかった。ぼくはこの映画、好きやな。

Y木:久しぶりに、まともな映画の話を聞いた気がするぞ。

S原:すまんなー、いつも変な映画の話ばかりして(笑)さあさあ、みなさん。何もない映画、雰囲気を味わう映画ですが、このまま消えていくのには惜しい作品です。大感動する映画ではないですが、なんとなくジワッとくる映画です。ワゴンコーナーでみつけたら、ぜひゲットしてくださいませ。おすすめです!