S原:ヘイメン!今回はこちらだYO!
Y木:おーエディ・マーフィー!
(あらすじ)
エディ・マーフィ主演で贈る、ビバリー・ヒルズを舞台にデトロイト出身の敏腕刑事が、彼流の型破りなやり方で事件を解決していく痛快アクション・ムービー第3弾。
S原:まあ、はじめにパッケージをみてYO!
Y木:え?
S原:なんか、エディの元気がないねん。心の底からの笑顔でないのが分かるやろ。
Y木:そういえば、そうやな。
S原:この映画はエディ・マーフィーのキャリアが、どん底だった頃の1本やねん。このころは辛かったわ。ああ、ぼくたちの大好きな元気いっぱいのブラザー、あのエディは、どこへ行ったんだYO~!あの『顔面全体で黒人スマイル!』って感じでの表情をもう一度見せてくれYO~!
Y木:YO、YO、しつこいねん。おまえ、そんなにエディ・マーフィーのファンとちゃうやろ。
S原:ばれたか。ところで、いまのヤングたちはエディを知ってるんやろか?
Y木:いやーどうなんやろ。レンタル店には「エディ・マーフィー」というコーナーがあったけど、もう今はないかもなー。
S原:エディは、一時期はスターで超大作にでてたんやけど、だんだんと人気が失速していく。ところが、また復活してスターに返り咲きした珍しいケースやな。
Y木:たしかに、一時期はすごかった。元はスタンダップコメディアンやろ。昔ビデオ見たときは、舞台ですごい勢いで下ネタ・人種差別ネタを喋ってて、なんじゃこれは?と驚いたなー。
S原:これ、監督がジョン・ランディスやねん。
Y木:えージョン・ランディスなんや!おれの大好きな「ブルースブラザーズ」の監督やん!
S原:あとは、あの有名なMV「スリラー」。あれはすごいブームやった。個人的には「サボテン・ブラザーズ」がベストやな。
Y木:あー、おまえが好きそうな映画(笑)
S原:さっき言ったけど、この映画はエディが一番しょぼい時期に出演したのよ。「48時間part2」とかもそう。後にインタビューで本人も『お金のために出演したゴミ映画だった。いまでは後悔してる。みなさん観ないで下さい』と語るくらい。
Y木:ゴミ映画…ってヒドイ言い方やな。
S原:同じように落ちぶれて復活したパターンで、シルベスタ・スタローンがおるねん。ジョン・ランディスは、やっぱりスタローンがどん底の頃に映画「オスカー」を監督している。ちょっと巡り合わせがかわいそうな監督かもな。いまとなっては、もう「ビバリーヒルズコップ3」も「オスカー」も、B級映画ファン以外はだれも話題にしないYO!
Y木:でもスタローンも復活したよなー、たしかに。
S原:うん。エディの場合、駄作続きで、このままほんまに映画界から消滅してもおかしくなかったけど、「ナッティ・プロフェッサー」「ドクタードリトル」のスマッシュヒットで甦った。さすが、おれたちのバディさ!
Y木:バディちゃうちゅーねん。でも干されてたわけやないやろ。その頃にも映画はでてたんやろ?
S原:でてたよ。なぜか、ぼくは低迷期の映画も結構みてる。「ホーリーマン」とか「ビッグムービー」とかは、地味やけど意外な拾い物って感じで悪くないねん。でも、「ホワイトハウス狂騒曲」とか「バンパイア・イン・ブルックリン」とかは、なんか出汁のない味噌汁みたいな映画やったなー。
Y木:洋画を語るのに、なぜ味噌汁で例えるねん。
S原:段々つまらなくなるのがシリーズの宿命やけど、この映画「ビバリーヒルズコップ3」はさすがになー…じつはpart2は結構よかったのよ。トニー・スコットが監督しているねん。もちろんpart1が面白いんやけど、part2も結構頑張ってた。
Y木:シリーズものでpart3は、確かに分が悪いやろ。
S原:それはあると思う。「エイリアン3」とか、みんな怒ってたからなー(笑)
Y木:まーでも、あれちゃう?見る順番も影響するんとちゃう?シリーズものは、はじめにどの映画を観るか、によって印象は変わると思うな。
S原:そうやな、はじめに「ビバリーヒルズコップ3」をみたら、この映画がシリーズ最高傑作と感じる…いやいや、それはないやろー(苦笑)だって、「13日の金曜日part3」とか最初に観ても、やっぱりしょうもないやろ?
Y木:おれにとっては13日の金曜日シリーズなんか、どれも一緒や。
S原:一緒ちゃうでー。宇宙に飛び出す「ジェイソンX」とかもあるねんでー。
Y木:なんやねん、そのしょーもなさそうな映画は。もうええから、この映画の話をしておくれ。
S原:このシリーズではストーリーとかよりも、エディ演じる主役「アクセル・フォーリー」のキャラクターの面白さをみせるのが目玉やろ?でも、その良さがまったく生きていないねん。あのマシンガントークもないし。どこにでもある薄味の刑事アクションやったYO!
Y木:ふーん。
S原:不思議やねんけど、ハリウッドってすごく脚本とか練るやろ?何回も製作会議したりして。ましてやヒットシリーズのドル箱キャラやで。それがなんで、こんなフニャフニャになるんやろ?どこかで見切り発車したんやろか。これは裏があると、ぼくはにらんでるんやけど。
Y木:やっぱりあれちゃう?時間とか予算をかけたくなかったんでしょ。予算をかければ、それだけ映画会社の利益が減るわけやし。ビッグネームの名前だけである程度は(観客動員を)見込めるってことちゃうの?
S原:そうかもな。この映画では、とにかくエディの元気がないねんなー。笑顔も50%減みたいな。マクドのポテトを注文したら、ドムドムバーガーのポテトがでてきた、みたいな。
Y木:あー、あのしなびたポテト。あれがでてきたら、たしかにガッカリする(笑)
S原:そして今回の舞台は、遊園地なんだぜ、ブラザー!
Y木:ほー。
S原:この遊園地がなんかひなびた感じで、ええねんなー。その名もワンダーワールド。ちょっと派手な「浅草はなやしき」みたいな感じでな。
S原:あとジョージ・ルーカスのカメオ出演も、映画の魅力のひとつだYO!
Y木:そんなもん、誰がうれしいねん。
S原:その遊園地の裏で、悪い奴が偽札を作ってたというのがあらすじやけど、どうにもなあ…この撮影のために、遊園地を作ったわけじゃないと思うけど、遊園地の裏側のセットとかは作ってるから、それなりの製作費はかけてると思う。でもなんか、普通のプリンターで偽札を刷ってたり、簡単に秘密通路に出入り出来たりして、どうにもチグハグやねん(苦笑)
Y木:たしか予告編では、エディ・マーフィーが観覧車にぶらさがってなかった?
S原:うん。生身部分はスタントマン、エディの部分は合成でな(笑)しかも、あれは本筋と関係ないねん。ただ困った子供を助けるだけやねん。
Y木:本筋と関係ないのが、見どころかー。
S原:無人の遊園地で追跡劇・銃撃戦なんか、アイデア次第でいくらでも面白く作れそうやのに、もったいない。どうも映画全体にそこはかとなく漂う「脱力感」「慢性的な疲れ」があるねん…キャストもスタッフもしんどかったやろうな…それでも本番の時には、「さすがエディさん!」とか気分を盛り上げてたんやろうな。「いつ聞いても、ほんと、エディさんのトークはマジ最高っす!」「いよ、全米一!」とか「人種を超えた黒人!」とかおだてて、撮影してたんやで(笑)
Y木:具体的すぎてわからん。それに、おまえ微妙に変な表現してるで…
S原:ちょっとラッパー風に言うぜ。YO!この映画の欠点を言うぜ。まずマシンガントークがナッシング。そういう場面はあるのにノートーク。エディの体のキレがナッシング。雑な合成とスタントマン似てなーい。銃は撃てども人にあたらなーい。エディの笑顔も輝きがなーい。パート3だから新鮮味がなーい。エディよ、初心忘れるべからずだぜ、YO!
Y木:なんか、中学生レベルのラップやなあ。
S原:まあ、それにしても、なんか隣の家の倦怠期の夫婦の会話を聞いてるみたいな、そんな映画やったな。
Y木:もう観るのをやめろよ、そんな映画。
S原:やっぱりどこか面白いんとちゃうか?と期待しちゃうのよな。だって、あのエディやから(笑)あと、すごく気になったんは、アクションシーン以外でも合成があってな。なぜか『遊園地のお客さんのシーン』が、ところどころ合成やねん。
Y木:ん?どういうこと?
S原:例えば、エディが会話している場面の後ろとかが、なぜかお客さんが合成されてるねん。とくに合成が必要なシーンとも思えんけど、あれはなんなんやろか…?ほかの場面では、エキストラはちゃんと足りてるから合成にする意味はないし。しかも、ものすごく珍妙やねん…あの合成が映画の一番の見どころかもな…ぼくの目の錯覚やったんやろうか(苦笑)
Y木:今度会ったら、おまえは絶対にエディ・マーフィーにビンタされるわ。
S原:さあみなさん!エディのフィルモグラフィーのなかでも、最低ランクの1本ですYO!エディがでていると思うから、期待値があがるのですYO!いいですか?ここに出ているのはエディのそっくりさんだと思うと、腹が立ちませんYO!ウーピー・ゴールドバーグがアクションしていると思ってくださいYO!それならきっと楽しめるはずYO!ぼくたちの映画ブラザー、エディの映画をワゴンで見つけたら、チェキラ!アンドマストバイですYO!
Y木:あのな、さっきから気になってたんやけどな。
S原:なんだYO!
Y木:エディ・マーフィーって、べつにラップせえへんのんとちゃう?
S原:…え?