あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

タイ映画3本勝負!「オーメン -予兆- 」(2003年)の巻

 

S原:今回から3回にわけて、微笑みの国・タイの映画を3本特集します。まずは最初はこれですよ。

Y木:オーメンのバッタもんか。

 

(あらすじ)

『the EYE(アイ)』のパン兄弟が脚本や製作などを手掛けたプロフェシーホラー。デザイン会社に勤める3人の青年は、それぞれ謎の老婆、物売りの少年、美しい女性に出会う。この出会いをきっかけに、彼らに未曾有の恐怖が襲い掛かるようになり…。

 

S原:あらすじにも書いてるけど、タイの映画界ではパン兄弟(オキサイド・パンとダニー・パンの双子)が有名やねん。ぼくは『the EYE(アイ)』しか観てないけど、この映画は感心したな。日本の漫画とかハリウッドとか香港映画とか、いろんな要素をごった煮にするセンスが良いというか。いい意味で雑食な感じでな。

Y木:へー。

S原:この映画はパン兄弟の初期作品みたいやから、まだ才能の開花前って感じやけど…ところで、あなた「オーメン」は観たことある?

Y木:あるで。最初の「オーメン」は怖かったなー。

S原:今観ても面白いで。僕も含めて大半の日本人にはわからんと思うけど「エクソシスト」とか「オーメン」は、キリスト教信者やと怖さ倍増やろうな。

Y木:当時、大ヒットしたしな。音楽も怖かったし。

S原:とくにあの首が切断されるシーンやろ?音楽はジェリー・ゴールドスミス。ぼくも大好きやわー。メインテーマは、アヴェ・マリア(マリア様への讃美)でなく、アヴェ・サタニ(悪魔への賛美)やねん。一説によると聖歌を徹底的に研究したうえで、作曲・編曲したとか。サントラでは組曲になっていて、すごく怖くて素晴らしいよ。

Y木:オーメンシリーズは、確かパート3で終わってなかった?目つきの悪いヤツ(大人になったダミアン)が、最後に死んでたやろ。

S原:「オーメンⅢ 最後の闘争」やな。死なないはずのダミアンがあっけなく死ぬ(笑)あれは期待外れやったなあ。じつはオーメンシリーズは、人気シリーズやから、延々と続いてて、しかも正当な続編のようなふりをしながら、世界各国で勝手にみんな作ってる。もどきと言うかパクリと言うか…ちょっとタイトルを変えたりして(笑)

Y木:まあ、悪魔かも?と気づいた周辺の人たちが次々と死んでいく…という単純なストーリーやから、いくらでも作れるよな。

S原:各々の映画で、登場人物が「どうやって殺されるか?」に工夫を凝らすのが見どころやけど、よく考えれば、悪趣味な話やなー(笑)

Y木:今回は前置きが長くなったけど、この映画は?

S原:内容も設定もキャラクターもオーメンシリーズと、まったく関係なかった。キリスト教も無関係。

Y木:ダミアンみたいなのも出てこないの?

S原:出てこない。信じられないかもしれないけど、この映画はホラー、サスペンスと違うねん。人情話「犬の恩返し」やねん。

Y木:えー「オーメン-予兆-」っていうタイトルやのに、日本昔話みたいな映画…?

S原:ジャケットの3人の男(仕事仲間)が主人公やねんけど、その3人が同じ時間に別々の不思議な出来事に遭遇するねん。ひとりは信号待ちをしているときに、女の子(小学生くらい)に出会う。ひとりは若い女性(あんまり美人じゃない)と出会う。ひとりはお婆さん(無表情)に出会う。このお婆さんが曲者でなー、次から次へと「近い未来に起こる不幸な出来事」を匂わすねん。

Y木:ん?どういうこと?

S原:お婆さんが「友達(3人のうちの1人)が危険な事故にあうわよ…」みたいな予言をするねん。これが予兆(オーメン)やな。ほかの二人は、必死でそれを止めようとする。

Y木:危険な事故って?

S原:工事現場で鉄柵が落ちると予言される → 急いで駆けつける → ギリギリで間に合った → 友達の目の前で友達の頭に落ちてくる → 友達に直撃! → 重体になる → そのあと、残った2人が怒る → 「あのお婆さんが怪しい!なんで未来が分かるんだ!」

Y木:いや、お婆さんに怒ってもしゃーないやろ。お婆さんは教えただけやん。

S原:ところが会いに行っても、お婆さんはおらへんねん。このあと、重体になった主人公のために、おばあさんはいなくなり、若い女性は消えて、女の子は病気で病院で死ぬねん。そして主人公の命は助かる。

Y木:え?いきなりすぎて、わからんねんけど?

S原:もうネタばらしになるけど、この3人(おばあさん、若い女性、少女)は、前世で犬(一匹の犬)やったのよ。ある事故で瀕死の状態の犬を、(前世のときの)主人公の3人が助けてあげるねん。ひょんなことから別れ離れになってしまうけど、犬は『生まれ変わって、3人に恩返しをするっちゃ!』と誓うねん。それで自分たちの命の代わりに(重体になった)主人公の命を救うわけやな。

Y木:ふーん、犬が生まれ変わって恩返しをした、と。

S原:そうやねん。ストーリーはすごく単純。でも、お婆さんの雰囲気はちょっと不気味やねん。いつも不機嫌な顔やしな。スーパーの生鮮肉コーナーに不機嫌そうにたっているおばあさんがおるやろ?『豚肉スライスが高いわねえ…』って感じの表情。あんな感じやねん。

Y木:言いたくないけど、おまえの例えはいつもわからん。

S原:でも、お婆さんも良くないよな。せっかく生まれ変わって恩返しにきたのに、不機嫌やったり主人公たちを睨んだりする(笑)そして、お婆さんのシーンだけなぜかホラー風味になるねん。さっき言ったけど、この映画自体はホラーでないから、ジャケットはもっとちゃんと(映画の内容に合わせて)作ったらええのに、と思うけどな。

Y木:ホラー映画に思わせたほうが需要があるんと違う?おまえみたいなヤツが観るから(笑)

S原:サンキューね。

Y木:褒めてないって。結局、映画の出来としてはどうなんや?

S原:まあまあ…かな。犬の恩返しの切ない感じがもっと出れば、知る人ぞ知る「異色作」になったと思うけど…だけどなー、ちょっと登場人物には不公平感があるよな。

Y木:不公平感?

S原:だって、恩返しするのに、3人の女性がバラバラすぎるやろ?とくにヤングな男子やったら、ヤングな女性が会いに来るほうがええに決まってるやん。

Y木:まあ、どっちにせよ犬なんやけどな

S原:さあ、みなさん!あらすじは単純だし、エッチなシーンもなく、怖いシーンもありませんので、ファミリーで楽しめます。そんなに面白くありません舞台がタイでハリウッドとは違う雰囲気の映画を味わいたい人、機嫌の悪いお婆さんを観たい人、なによりも犬が恩返しするストーリーに心動かされた人は、マストバイですよ!