あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

「ラースとその彼女」(2007年)の巻

ラースと、その彼女 (特別編) [DVD]

S原:今回はこちら!

Y木:「ラースとその彼女」…また変な映画を選ぶなあ。

 

(あらすじ)

アメリカ中西部。雪が降り積もる小さな田舎町に暮らすラースは、シャイで女の子が大の苦手。でも、人一倍優しくて純粋な心を持っている。そんなある日、同じ敷地内に住む兄夫婦に、ラースが「彼女を紹介するよ」と言って連れてきたのは、等身大のリアルドールビアンカだった! 完全に正気を失ったと呆然とする兄のガス。義姉カリンはかかりつけのダグマー医師に相談するが、彼女は「ラースの妄想を受け入れ、ラースと話を合わせることが大切」と助言する。住民たちもラースへの愛情から、ビアンカを生身の女性として扱うことに協力。ビアンカの存在はいつしか人々の心を動かし、住民同士の交流も深まっていくが……。

 

S原:この映画は地味なんやけど、なかなか良いねん。ものすごく完成度が高いわけじゃないねんけど、なんかじわっとくる映画やねん。

Y木:それはええねんけど、おまえに「良い映画の紹介」は誰も求めてないのになあ…(ため息)

S原:あ、そう?このブログを見てDVDを買おうとする人もおるんとちゃう?

Y木:おらんわ。ほとんど褒めてないから、かえって購買意欲をなくしているやろ。まあええわ。今回は珍しくちゃんと面白い映画の紹介なんや。このジャケットに映ってるのは、ダッチワイフ?

S原:はっきり言うなあ…映画でもそのあたりは気をつかって表現してるのに。「リアルドール」と呼ぶらしいわ。

Y木:いやでも、避けて通れないツッコミでしょ、ダッチワイフなんやから。

S原:まあ、実際にダッチワイフの実物を見たことある人は少ない…のか?よくわからんな、みんなに見せびらかしたりせえへんやろうし。

Y木:この映画の主人公は、見せびらかすんやろ?

S原:というか紹介するねん。「ぼくの恋人です」って。

Y木:おお。

S原:もともと内気で純真なタイプで、みんな心配してたところに、大真面目に人形を連れてきたから、みんなは「うひゃー!」てなるねん。とくに主人公の兄は、「ついに頭がおかしくなった!」って感じやねん。

Y木:まあ一リアルな反応やろな。

S原:主人公は、「名前はビアンカで、ブラジル人で修道院で育って、とても内気な性格で…」とか嬉しそうに話すねん。兄夫婦は町の人たちに相談するねんけど、みんなで温かく見守ろう、ダッチワイフを恋人として扱おう、って決めるねん。主人公は、ダッチワイフに本を読んであげたり、歌を歌ってあげたり、両親の墓に案内したり…

Y木:うーむ。

S原:この映画では周りがすごく優しいねん。みんな、主人公のためにダッチワイフを「女性」として扱うねん。とくに義理の姉が優しくてな。まあ、ベタといえばベタなんやけども、このあたりの演出が自然でなかなか良いのよ。ちいさな地味なエピソードを丁寧に積み上げていく感じで、好感がもてるのよな。

Y木:へえ、そうなんや。

S原:最初は主人公がダッチワイフに話しかける場面のたびに、観ているこっちも「うわ…気持ちわる…」って思うねん。でも、だんだんと慣れてくるねんなー。自分でも不思議やと思ったわ。

Y木:「E.T.」も初めは気持ち悪く思うけど、最後はたまらなく可愛く感じるような?

S原:まあ、そこまでは…だってダッチワイフやし(苦笑)

Y木:ダッチワイフといえば、セクシャルなシーンは…?

S原:ありません。一切そういうのは触れないようにしています。なので、安心して女性も観れます。

Y木:この映画のスタッフのスタンスがわかるなあ。映画はとくに大きなアクシデントはないまま、ストーリーが淡々と進む感じ?

S原:映画としてはたいしたことないけど、主人公にとっては大問題が起こる…ここからさきは言わないようにするので、ぜひ観てほしい。主人公に密かに好意をもつ女性(実在の人間)もいて、その関係もていねいに描けていると思う。

Y木:ふーん。

S原:ちょっと言葉が露骨でごめんよ。要するに、主人公が「頭の良くない人」と「善人」の中間やねん。そして周りの登場人物が良い人ばかり、という。この映画を偽善的やと指摘することは正解やと思う。だってその通りの映画やから(笑)

Y木:なるほどなー。

S原:でも、なんていうんかな、単純に楽しめばいい映画やと思うなあ。あなた、「男はつらいよ」の第1作を観たことある?

Y木:いやみてない。

S原:面白いよ。

Y木:いやー、ファンには悪いけど、松竹とくに山田洋二は苦手や。昔、「馬鹿がタンクでやってくる」を観て以来、レンタルコーナーでも近づかないようにしているねん。

S原:レンタルコーナーに近づくくらいええやろ。感染するわけじゃないし。

Y木:いや、あれは感染するで、まじで。黄色いハンカチをみたら自動的に泣けてきたりな。

S原:パブロフの犬か。でも、「男はつらいよ」の第1作は、ほんまにええねんで。あのときの渥美清は、ほんまに「ちょっとおつむが足りないけど、ものすごく気の良いおっさん」やねん。なんというか、演技とか超越してる感じでな、「すごく純粋な人」と「子供みたいに幼い人」と「あんまり頭の良くない人」が絶妙なバランスを保ってるねん。あの感じを思い出したわ。寅さんでも、周りが優しいやろ。さくらとかタコ社長とか、みんな寅さんのことを解ってるやろ?

Y木:まあな。

S原:だから、ぼくはみんなで記念撮影するとき「バター!」って叫ぶねん。これは、渥美清のネタね。

Y木:毎回すべってるけどな(苦笑)まあ話を戻すと、これはそういうタイプの映画なんやな。

S原:そうです。僕らのように、わざとB級映画をみて楽しんでるような汚れた心の人間は身につまされる映画なんです。

Y木:それはおまえだけ。頼むから、おれを巻き込むなよ。

S原:どう?今回の映画は観たくなったやろ?DVD貸したろか?

Y木:うーん、ええわ。

S原:えー…

Y木:おれの心も汚れてしまってるんやろうな。もう、こんな純粋な映画をみて心が洗われるようなレベルの汚れじゃないんやろなあ…(遠い目)

S原:むなしいヤツやなあ…というわけで、地味な映画でもOKなかた、無名でも良作に出会いたいかた、そしてダッチワイフが好きなかたは、この映画をみつけたらマストバイですよ!