あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

「ふぞろいな秘密」(2007年)の巻

 

ふぞろいな秘密 [DVD]

 

S原:今回はこちらです。

Y木:え。石原真理子って、あの…?

S原:そうです。「あの」という形容詞がピッタリのこの映画のあらすじはこちら。

 

(あらすじ)

お騒がせ女優・石原真理子が同名自伝小説を自らメガフォンを取り映画化。同じ事務所に所属するミュージシャン・山置洋二との出会いから不倫、暴力、そして別れまでを赤裸々なタッチで綴った恋愛ドラマ。後藤理沙、河合龍之介ら若手俳優が共演。(アマゾンより引用)

 

S原:ついに伝説の映画とワゴンコーナーで出会ってしまった…当時、芸能ニュースで話題もちきりだった石原真理子玉置浩二の不倫騒動の頃の話を、後になって石原真理子が暴露本(自伝)として発刊。それが結構売れたので勢い余って映画化。しかも石原真理子自身が監督。勇気をだして観たけどいやはや期待に違わず、すごい映画やったわ。

Y木:さすがにこの芸能ネタは覚えてるわ。

S原:映画のはじめは静かに始まるねん。詩というか、恋愛観・人生観というか、心象風景というか、ともかく独白のような感じでモノローグ(石原真理子自身の朗読)が流れるねん。

Y木:へー。

S原:まあ内容は、理解できへんねんけどもな。

Y木:いきなり、つまずいてるやないか。

S原:はじまりは中学時代。石原真理子((劇中ではマリコ)の父親がDVしてるねん。「父親が憎いわ…」と話す真理子。やがて両親は離婚。「なんで家族はバラバラになるの…?」と怒る真理子。

Y木:すごいストレートなセリフやな。

S原:この映画では全編セリフは説明的で、俳優は信じられないくらい棒読みやねん。それが石原真理子監督の演技指導かどうかは知らんけど。例えば、寝言で「わたし…芸能界に…はいりたい…」とつぶやいたりする(笑)やがて、真理子は芸能事務所からスカウトされるねん。美人やからね。

Y木:たしかに美人やけど、お芝居とか唄は?

S原:真理子曰く「事務所の人から聞いたんだけどー、演技なんかできなくてもいいんだってー!」

Y木:おいおい。

S原:真理子はお母さんに相談すると、母曰く「芸能界なんかやめなさーい。なんといっても男性はお金持ちが一番よー!」

Y木:なんちゅう母親や。

S原:芸能界に入った真理子はだんだん売れていくねんけど、そんなときに玉置浩二(劇中では山置洋二)と出会ってしまう。ちなみに映画の中では、安全地帯(劇中ではセーフティゾーン)とは全然違う音楽をしています。どことなく、あの「悪夢の銀河鉄道」のダサロックに似てるかも。

Y木:いやな例えやなー。

S原:そのあと、中途半端に軽薄な音楽がBGMで流れて、なんとなく小汚いホテルで結ばれるねん。それはええねんけど、やっぱりとにかく全編セリフが棒読みやねんな。ところがなー…なんか観ているうちに、なんかこう…不思議なんやけどこのセリフ回しが妙に快感になってくるねんなー、ハマるというのか…これホンマやで。

Y木:へー。

S原:真理子役は後藤理沙という女優。なかなかキレイでベッドシーンもあるんやけど、大事なところは隠してたわ。でも基本的に「脱ぎ損」やで。あの「スネークトレイン」の女優の無駄な脱ぎ方と双璧かな。

Y木:今回は「あの」という形容詞が多いな…

S原:そのうち玉置が既婚者であることがわかるねん。不倫やったんやな。一方、バンドはヒット曲がでて上手くいってるんやけど、玉置が真理子に夢中すぎてメンバーからは「真理子がいないと、曲がかけなくなるぞっ」と注意されてしまうねん。

Y木:メンバーも心配してくれてるんやな。

S原:いや、メンバーは、やっと売れたので生活水準を落としたくないねん。

Y木:なんか生々しいな。

S原:真理子のナレーションがすごいです。「ベートーベンがエリーゼのためにという曲で…エリーゼを永遠に愛したように…彼は私のために…曲を作り…永遠になる…」

Y木:なんか壮大やな。

S原:まあ玉置浩二は、すでにベートーベンを超えてるけどな。

Y木:超えてるか!

S原:あるとき、2人はリゾートホテル(熊本?)にいます。夜2人はベッドにいます。真理子は棒読みでつぶやきます「いっそ2人で…死んじゃう…?」玉置「そうだ…ね」

Y木:いやいや、脈絡がわからんぞ。

S原:一応、マスコミに狙われて精神的に追い詰められて…ってことやろな。さて、そのあと死ぬことにした2人は、ホテルのベッドのシーツにいろいろと遺言めいた言葉を油性マジックペンで書くねん。ついでに芸能記者への恨み言も書くねん。

Y木:うわー迷惑やなあ…

S原:2人は部屋の窓をあけて下を見ます。20階くらいの部屋かな。真理子「ここからは…飛び降りれられないね…」でもな、ぼくが見る限り、十分飛び降りることが出来ると思ったんやけどな。

Y木:いやなヤツやな、おまえは。

S原:それで、屋上に行こうとするねん。屋上なら確実に死ぬことができるから。ところが関係者以外立入り禁止で、屋上に行けないんやな。

Y木:そりゃ普通はそうやろ。

S原:玉置は苛立ち怒りを爆発させます。屋上のドアを何度も何度もたたきます。悔しくてうめき声をだす玉置「ゔあああああ…!」「おええええ…!」「ぎょぼおおお…!」熱演です。ここが見どころです。

Y木:えー、ここが見どころ…?

S原:それから部屋に戻ってから、2人は「生きて…みよう…」と誓い合うねん。ふたりはベランダで海を眺めます。真理子は「キレイ…」とつぶやく。でも、ぼくが見る限り、とくにキレイな風景ではないねんなー。

Y木:おまえ、性格悪いぞ。

S原:いや、性格が悪いのは玉置やで。次の場面はレコーディング。その最中に「傷ついた女ほど美しいものはない…」とニヤリ。

Y木:さっきまで、一緒に心中しようとしてたんとちゃうんかい。

S原:あと避妊もしないねん。理由は「面倒くさいから」。

Y木:やりたい放題やな、玉置。

S原:そうこうしているうちに、玉置はヒット曲を求められるプレッシャーで壊れていくねん。あるとき、避妊薬(ピル)を呑んで調子の悪いマリコに「もっと気分を悪くしてやろーかー」ってグルグル回したり、暴力をふるいます。DVです。ビンタもします。

Y木:ほんまに最低やな…

S原:プロレス技のアイアンクローもします。

Y木:なんでプロレス技やねん、演出おかしいやろ!マジなんか、笑かしたいんかどっちやねん!

S原:愛する玉置に暴力をふるわれて、さすがに真理子はショックをうけるんよ。鼻血が出て、鼻の軟骨も曲がります。病院の治療の後、玉置は静かに真理子に話しかけるねん。「ぼくは、二度と…殴らない…でも、マリは…ぼくを殴ってもいいよ…」

Y木:え?おれの頭が悪いせいかな?玉置の言ってることがわからんけど。まあええわ、それで玉置は反省してDVをやめるんやろ?

S原:やめへん。それどころか、もっとひどくなる。ちょっと気に入らないことがあると、ラジカセを床に投げて叩き壊すねん。

Y木:もう、やめてあげてー。

S原:まだ続くねんで。真理子は、玉置から唾を吐きかけられます。首を絞められます。髪をもって引きずり回されます。ちいさなゴミを投げられます。このときの男優の鼻の穴が大きく開ている点に注目です!

Y木:鼻の穴まで忠実に再現してるんやろな。それにしても可哀そうに。

S原:そのあと、ニードロップもします。またプロレス技です。

Y木:だから、マジなんか、笑かしたいんかどっちやねん!

 S原:今回はあまりにボコボコにされたので、真理子は立ち上がられへん状態になってしまう。そして命からがら、母親を呼ぶねん。母は救急隊とかけつけます。そのとき、玉置はクローゼットに隠れてるねん。

Y木:卑劣なヤツめ。

S原:玉置は隠れていたクローゼットで、あるものを見つける。ジャーン!それは心中しようとしたときに、2人でいろいろな文字を書いたホテルのベッドのシーツ!

Y木:ホテルから持ち帰ったんか…あかんやろホテルの備品やぞ…

S原:真理子が退院した後、玉置は真理子に会いに行く。そして指輪を渡すねん。玉置は棒読みでつぶやきます。「離婚…したんだ…よ…」

Y木:やっと離婚したんかー。やれやれやな。じゃあ真理子と結婚やな。

S原:ところが、玉置はウジウジしてるねん。

Y木:おい、さっきの指輪は?結婚の意思とちゃうんかいな。

S原:そのころ、安全地帯のメンバーは「玉置が私生活で話題を作ってくれるからさ、宣伝がいらなくてラッキーだよな、ハハハ」と笑ってるねん。

Y木:メンバーの性根も腐ってるな、おい!

S原:次のシーンでは、ビル街を玉置が速足で歩いてるねん。真理子は、そのあとをついていきます。玉置は何故か不機嫌そうです。「ねえ、方向が違うよ」「お店はあっちよ」「ねえどうしたの?」と聞きます。真理子を無視して歩き続ける玉置。真理子は戸惑うねん。玉置は立ち止まります。そして「うるせえんだよ!」とビンタ!このシーンはスローモーション!

Y木:おれには、もう理解できない……けど、玉置がこの世の中で最低ランクの男やいうのはわかった…

S原:さすがに真理子は愛想をつかし去っていく。そして、真理子はアメリカに行く。

Y木:そのほうがええ。おれで良かったら愚痴くらい聞いてやるから…

S原:真理子が旅立った後の無人の部屋。電話が鳴る。玉置が、また未練がましく電話しているんやな。そして、公衆電話のまえでガクッと座り込む…

Y木:女々しいやっちゃな。

S原:そして20年後。とあるライブハウス。不自然な付けヒゲの玉置(20年歳をとった設定)が語ります。「本当に…あのときは…真理子を…愛していた…」と棒読みで語って涙ぐむねん。

Y木:支離滅裂やがな。

S原:ラストは、また誰も理解できないモノローグ(石原真理子朗読)が流れるねん。

Y木:はあー…(ため息)

S原:そのあと、誰が誰のために行っているのかわからんけど、石原真理子自身の撮影風景がうつっておしまい。

Y木:今回は、なんか聞いてるだけで疲れたわ…

S原:エンディングテーマは、「ラストスパート」という曲。歌詞は、『おお~ ラストスパートでえ~ 君に会いに行くう~ ♪ 』

Y木:もう会いに行ったらあかん!スパートしたらあかん!

S原:この映画では、石原真理子は監督・脚本・編集までしてるねん。まあ自分自身が映像化したかったというのもあるけど、これは皮肉でなくなかなかの根性やと思うな。あと、普通は(素人監督が行わない)編集までしてるのは、一説には編集者が(石原真理子の要求が無茶すぎて)途中で投げ出したのを、自分自身が根性で仕上げたのだとか。あと当時のインタビューでは、製作者とも揉めてて自分が足りない製作費を負担したとか、責任者と連絡がつかないとかも主張してたと思う。きわめつきは、劇場挨拶の時に、お客さんの前で制作側と口喧嘩をしたという(笑)

Y木:相変わらずってことか(苦笑)

S原:でもなー、よく考えたらこれって石原真理子側の言い分やろ?玉置浩二側にも言い分があるんと違うやろか。玉置側も映画を作ったらええのになー。「ふぞろいではない秘密~もうひとつの真実~」とか「偽の愛に生きたマリコへ」とか。

Y木:泥仕合やないか。

S原:2つの映画を再編集して、完全版とか作ったりしてな。

Y木:もうやめてー。

S原:みなさん、これ以上の解説はぼくには不可能です。「なんかもう、普通の映画は飽きたな…」「日本語で芸能界ネタでいいものないかな…?」「すごい薄い味わいで、演技が棒読みな映画がいいな…」「なんだかわからないけど印象に残る映画が観たいな…」「昼ドラみたいな変な映画が観たいな…」「役者が付け髭しているところが観たいな…」というあなた!そんなあなたのための映画です!出演した俳優が役作りについて熱く語り、石原真理子監督を絶賛しているDVD特典ドキュメンタリー「秘密のひみつ」もあわせて、ぜひご堪能ください!さあワゴンで見つけたら、マストバイです!