Y木:うわ、またしょーもなさそうな感じ。
S原:ところが、これは意外と…
(あらすじ)
レオナルド・ダ・ヴィンチの遺した名画「白貂を抱く貴婦人」を巡り、思惑と陰謀が絡み合うクライムミステリー。刑務所を仮出所中の美術品窃盗のプロ・ツマは、仲間と共に綿密な計画を練り、みごと警察の裏をかいて絵を盗み出すことに成功するのだが…。
S原:これ、わりとおもろいねん。
Y木:へえ、意外。
S原:タイトルは、「ダ・ヴィンチ・コード」のモロパクリやけど、謎を解明するとかじゃなくて、ダ・ヴィンチの絵を泥棒する話やねん。
Y木:ルパン三世やな。
S原:そうそう。あのノリやな。それに最後までちゃんと出来てる。
Y木: へえ、便乗映画シリーズの中では珍しい。というか、普通の映画は、そういうもんなんやけどな(苦笑)
S原:うん。どうも最近、麻痺してきたなあ。うん。まあパクリ・タイトルは日本の販売会社が勝手につけたんやろうけどな。(原題は「VINCI」)気に入ったのは、この映画はだれも死なへんねん。たぶん、ケガもしないんとちゃうかな。ありきたりの銃撃戦やカーチェイスもないねん。これって最近の映画では珍しいやろ?
Y木:あーそうかもな。
S原:ポーランド映画やねんけどな。お国柄か監督・製作陣のスタンスか知らんけど、この雰囲気は気に入ったわ。それに、ポーランドって親日国らしい。なのでちょっと点数も甘くなる(笑)
Y木:まあ気持ちはわかる。ストーリーは?
S原:主人公が窃盗罪で刑務所にはいるところから、話は始まる。主人公は出所後に、ダ・ヴィンチの名画「白貂を抱く貴婦人」を盗むという大胆な計画をたてる。
Y木:まさにルパン三世やな。
S原:盗んだ絵画の買い取りの交渉をしたり、高跳びに準備のためにパスポートを用意したり、もとの相棒(いまは警察官)を無理やり巻き込んだり、わけありの女性にダ・ヴィンチの贋作を頼んだり、美術館を地下から襲うために爆弾のプロに依頼するなどが前半。このへんは、普通の演出なんやけど、どうもキャラが地味でな。
Y木:俳優が良くないってこと?
S原:主人公は、さえない感じのオジサン。とても頭が切れる泥棒には見えない(笑)まわりも、むさくるしい男ばかり。ただし、贋作を担当する女優(カミーラ・バー)は、紅一点ながらすごく画面映えする容姿で、この人はなかなか良かった。
Y木:ほう。
S原:でも前半はやっぱりイマイチ退屈やったかな。贋作方法とかちょっと面白いところもあるけど、トリビアというか「へえ」という知的な驚きとか工夫があれば、もっと面白くなったはず。
Y木:どうやって盗むの?
S原:狙ったダ・ヴィンチの絵は、日本に貸し出すねんけど、それが返ってくる日を狙う。厳重な体制で、絵を運ぶ。ちゃんと道路を封鎖して撮影してて、ここは結構お金もかけてる。絵を載せている車(救急車)が、警察車両に囲まれながら走行しています。前にバスが立ち往生していて、停止します。その瞬間に、救急車の停止位置の周りだけを上手く爆弾をしかけて、車ごとズドン!と地下道に落とす。主人公たちは、車からうまくダ・ヴィンチを盗むけど、絵のサイズを間違えて(額縁を計算にいれてなくて)マンホールの穴から絵がだせない。
Y木:おーそれで?
S原:そこから、どうなったかは(観客に)直接見せない。窃盗犯が逃げた後、警察がダ・ヴィンチの絵を地下道で見つける。マンホールからだせなくて絵画を放置したのか、それともこれはワナか?
Y木:なるほど。まあミステリーとしては、普通やん。どちらかといえば、単純と言うかありがちというか。
S原:でも、全体のムードは悪くないよ。そのあとも、田舎の実家に戻ってアリバイを作ったり、警察の捜査の裏をかくのも面白いで。あーそうそう。典型的な日本人(田中さん)もでてくるねん。どうも絵画貸出の担当者みたいで、絵が盗まれた責任を感じてます。
Y木:へえ。ポーランド語を話すの?
S原:いや全部、日本語やった。でも変な日本語じゃなくて自然な日本語を喋る。まあ、まわりのポーランド人はだれも日本語が分からないから、ポカーンとしてたけど。
Y木:最後は?
S原:まあいろいろあって、いよいよ盗んだ絵を取引するときに、取引相手が倒れてお金がもらえなくなる。
Y木:なんで?毒殺?
S原:いや、喘息の発作(笑)
Y木:なんやそれ。
S原:しかも主人公たちは「まー、死なないだろ」「このまま、放っておこうぜ」って帰ってしまう(笑)結局、じつは複製は2枚作っていて、それを本物と偽って金持ちの売り付けるとか、軽いどんでん返しが何回かあって、なんだかんだで上手くいく。
Y木:じゃあ主人公は大金持ちになってハッピーエンド?
S原:いや、まだ刑期が残っているから(仮出所後に違反をしたから?)と自ら刑務所に戻っていく。もちろん窃盗したことは警察に隠したまま、やな。
Y木:自分で刑務所に戻るんか?えらい真面目やな。
S原:ラストがええねん。田中さんが、責任をとってハラキリをしようとする。しかも白装束で(笑)そこに、ダ・ヴィンチの本物が、戻ってきたというニュースがながれる。田中さんは「やったー。助かったー」って泣いて喜んで、おしまい。
Y木:変なラストやな…(苦笑)
S原:まあ、最後も日本人ネタでおしまいにするところも、親日国らしくてますます好感を持ったわ。でもポーランドって風景がキレイでな。街もええけど、途中で少しでてくる郊外の風景がすごく良い雰囲気やねん。いつかポーランドに行きたいわ、まじで。
Y木:今回の映画は、意外と楽しめたんやな。よかったやん。
S原:うん。たまには普通の映画も観ないと、脳みそが溶けてしまうもんな(笑)さーみなさま。今回のパクリ映画シリーズの中では上出来のランクです。ルパンなど泥棒映画が好きな人は、ぜひどうぞ!やや薄味ですが、のんびりと楽しめます。そして、このブログを読んでいる人で、ポーランドの人がいたら、この映画が本国でどんな評価だったのか連絡くださーい。
Y木:連絡なんか来るわけないやろ。