あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

「プレッシャー」(2015)の巻

 

PRESSURE/プレッシャー [DVD]

 

S原:今回はこちらです。

Y木:おー深海映画か。

 

(あらすじ)

石油のパイプラインが故障し、ソマリア沖の深海で作業をすることになった作業員4人。順調に進んでいたはずが、いきなりの嵐で母船が沈没してしまい4人を乗せた作業タンクが水深200メートルで孤立してしまう…

 

Y木:ストーリーは、結構面白そうやん。

S原:この映画はですねえ…地道にまじめに作っているねん。ちゃんと深海のシーンもあるし、潜水作業タンク(セット)もきちんと作ってるねん。

Y木:深海ホラー系?

S原:ホラーじゃないな。サスペンスかな。映画自体は、演出が雑でもなく俳優の演技が変でもなく、無難な作りなんやけど……単純に面白いというわけでもなく、ツッコミポイントがたくさんあるわけでもなく……あーもー、コメントしにくい映画やなー(笑)まず、このタイプの映画は、困難な状況になってしまう展開に説得力がいるやろ?段取りと言うか。

Y木:まあな。

S原:なんか中型の嵐がきただけで、大きな船が転覆するねんけど、まずそれが不自然やろ?どんなしょぼい船やねんって。それで潜水作業員たちが帰れなくなって、酸素もどんどん無くなっていく。閉じ込められた状況で、さあどうやってこの危機を乗り越えるっていうストーリーは結構単純で面白いと思う。けど、そんな絶望的な困難に対峙したときの登場人物の行動や反応がなあ……ふつうは焦るやろ?

Y木:そりゃそうやろ。登場人物たちも焦るんやろ?

S原:焦るよ、一応。でもなあ…焦りが(観客に)伝わらないというか。作業員同士の人間関係で揉めるとか、脱出方法で意見が分かれる、とかあるねんけど、それも上手くいかされてない。やっぱり焦燥感や恐怖みたいなものが、ポイントやと思うんやけどもなー。救援の要請をする無線なんか命綱やのに、なんか扱いも軽いしな。昔の映画で「Uボート」(1981)とかすごかったやろ?

Y木:あーあの映画はすごかった…(遠い眼)

S原:「Uボート」は、潜水艦の模型(特撮)はイマイチやったけど、良い意味で俳優も暑苦しくてドラマ部分でグイグイ引っ張ってたし、観ていて息苦しくなるような圧迫感があったやろ?

Y木:ラストも切ないしな。

S原:そうそう。この映画でも、舞台は閉鎖空間やし、いろいろな感情とか深海の怖さと隣り合わせのはずなんやけど、そんなんがすごく少ない。演出にメリハリがないんかなあ…

Y木:サスペンスやのにドキドキしない、と。

S原:例えば、作業員のひとりが、危機を脱するために潜水服を着て海底で作業するねん。その作業中に(低酸素脳症で)意識が混濁していく…それを潜水艦にいるメンバーが聞くというシーンがあるんやけど、仲間が死んでいくのに何もできないっていう悔しさや悲しみがある。ここなんか観客も辛くなるはずなんやけど、あんまり感情移入できない。みんな無表情で無線を聞いているだけ(笑)

Y木:良いシーンもあるんやろ?

S原:あるよ。作業員のひとりが、深海で溺れて死ぬ間際に幻想をみるねん。会いたかった妻(恋人?)と再会できて、裸で抱き合いながら死んでいくという凝ったシーン。ここは俳優も撮影も大変やったはずやし、なかなか印象深い。でも、こういう場面は少ない。

Y木:要するに下手なんとちゃうの?

S原:いや、それこそ他のB級ワゴン映画よりは断然ちゃんと製作してるねんで。そうやなあ、高校時代で例えると、よくクラスで学園祭の準備を一所懸命に取り組んでるけど、全体から見るとそんなに大事な仕事はしていないって奴がおったやろ?「あいつ悪いヤツじゃないんやけど、他の作業をしてくれれば助かるんやけどな…でも本人には言い出しにくいなあ…真面目にやってるからなあ…」とか。そんな感じかな。

Y木:相変わらず、おまえの例えはよくわからん。それで作業員たちは助かるの?

S原:何人かは死ぬけど、最後は助かる。ギリギリまで酸素チューブをつけて海面に近づいて、イチかバチかそこからは素潜りで上がっていく作戦やな。

Y木:結構、普通の作戦やな。

S原:そうやねん。べつに変則な作戦が良いわけじゃないけど、延々と同じ画面(潜水タンクの中)を見せられた後にしては、普通に地味な脱出方法やった。たぶん、製作するときにちゃんと調べたんやと思う。映画の面白さよりも、リアルさを前提にしたんかもな。

Y木:リアルさを重視して面白くなくなったってこと?

S原:今回はそう感じたわ。もっと酸素がなくなる時間が迫ってきていて、もっとキャラクター達が混乱して、次から次へと困難が起きて、ちいさな伏線があって、それが自分たちの救命につながっていく、とかそんな感じのほうが単純に面白かったはず。

Y木:なんか、それってハリウッド的やな。まー、観ている側は、〇〇したほうが良かった、とか好き勝手に言えるから。おまえみたいに(笑)

S原:そうそう。製作した人はごめんね。でもなー、狭い潜水艦の中でぼんやりと苦悩しているシーンとか、静かに会話している(身の上話も含む)シーンが多いのはやっぱりや変やで。そのくせ「もう時間がないんだ」とか言うしな。観ている人は「おいおい。焦ってるなら、もっと脱出の方法を考えたほうがええって!」ってつっこむしな。ワンシチェーション(ワンアイデア)やから、もっとスピーディーに展開したほうが良かったと思う。

Y木:なんとなく、わかった。

S原:「ゼイリブ」(1988)でも、さっさと話をすすめたらええのに、途中で延々と男2人が殴り合いっこしてて、観客はイライラしたやろ?

Y木:あんな映画のことなんか、覚えてないわ。

S原:何度も言うけど、ちゃんと作ってるねんで。ただイマイチ面白くない。そして、相手がマジメな分、突っ込みにくい…

Y木:まあ、おまえに突っ込まれなくてもええと思うけどな。

S原:さあ、みなさん!深海が好きだけど、そんなに深海シーンがなくてもいいよという人、深海サスペンス映画が好きだけどドキドキしたくない人、そして真面目に作られてるんだけど、なんか微妙な感じの映画が好きな人、そんなあなたの映画です!ワゴンで見つけたらマストバイ…かな…?

「ハイウェイマン」(2004)の巻

S原:今回はこちらです!

Y木:カーアクションか。B級映画の宝庫やな(笑)

 

 (あらすじ)

5年前、レニー(ジム・カヴィーゼル)は目の前で最愛の妻をひき逃げされてしまう。犯人の男は'72年型キャデラック・エルドラドを自らの肉体の一部のように自由自在に操り、美しい女性ばかりを餌食にしてきた戦慄の殺人鬼だった。現在、'68年型プリマス・バラクーダに乗るレニーは、その殺人カーの追跡にすべてを注いでいた。やがて彼は、一人の美しい女性モリーと出会う。車で事故に遭い、同乗していた友人がひき殺されてしまった彼女こそ、姿なき殺人鬼の新たなる標的だと確信するレニー。そこで彼は、モリーと協力して犯人を追い詰めようとするのだが……。

 

Y木:どうやった?

S原:結構、面白かった。意外とストーリーはちゃんとしてたし、車のアクションシーンも迫力あったし。トンネルの場面でもちゃんと撮影のために一般の人を通行止めにしてロケしたんやろうなと思うで。

Y木:ほう。B級映画のわりには、頑張ってそこはお金かけてるんや。

S原:やっぱりアメリカはすごいで。お金さえ払えばどんなロケでも出来るもんな。ニューヨーク市なんか守銭奴やから、「バニラスカイ」(2001)では繁華街が無人になるシーンをCGでなく実際に撮影してたから。金の力で他人をどかせて(笑)

Y木:たしかにな。

S原:この映画に話を戻すと、ちゃんとストーリーが1本筋が通っているから、観やすいかな。一応、カーアクションになる必然性もあるし。

Y木:おまえの言わんとすることは、わかるねんけど、どうなんかな。おれは昔からカーアクションとかイマイチ食指が動かんのよ。

S原:えー本物の車を使ってるねんで。

Y木:あたりまえやろ。

S原:あとはラストがちょっとな…

Y木:車がクラッシュしておしまいとちゃうの?

S原:そうなんやけど、そのあと「犯人」が登場するねん。

Y木:普通やん。悪役でしょ。

S原:うーん言っていいのかどうか…実は犯人は体が悪いねん、まあ身体に障がいがあるというか。事故で体を失ったのか、ちょっとわからん設定なんやけども。

Y木:ほー…その設定は何とも…

S原:そこだけが独特の雰囲気でな。奇をてらってるだけなのか、交通事故で体が不自由になったから、スピードに取りつかれているという意味なのか…

Y木:そうなんや。

S原:ま、B級映画やから、観終わったらすぐにそんなことも忘れてしまうけどな。

Y木:どないやねん。

S原:さあみなさん。よくあるカーアクション映画ですが、こいういうのが好物な人にはおススメです。え、なんですって?他のカーアクションものと、全然見分けがつかないですって?イエース・ザッツライト!べつにこの映画観なくても、生きていけまーすよー!

Y木:いつにも増して適当やなあ…

ほぼ誰も知らない邦画 20連発 を終えて…

ベリースタートっ! [DVD]油揚げの儀式 [DVD]金髪スリーデイズ35℃ [DVD]

 

ゴースト・リベンジャーJK [レンタル落ち]ホールインワン 女子ゴルファー千春 [レンタル落ち]地下の中心で愛を叫ぶ! [DVD]

 

くも漫。 【レンタル落ち】稲妻ルーシー [レンタル落ち]RUN3 [DVD]

 

ユニットバス・シンドローム [DVD]THE ROBO TRIBE ロボ一族 [レンタル落ち]ペットおやじ [DVD]

 

7s セブンス [DVD]HERO ? 天使に逢えば [DVD]月のあかり [DVD]

 

はなればなれに [DVD]ねじりん棒 [レンタル落ち]宇宙で1番ワガママな星 [DVD]

 

 

ラブポリス ニート達の挽歌 [レンタル落ち]杉山くんたちは夜専門 [DVD]

 

Y木:おまえ、よく20本も観たなあ。

S原:さすがに後半は、観るのがしんどかった(笑)

Y木:そうやろな。

S原:ワゴンコーナーに通ってると、いまだに「なにこれ?」というDVDに出会うことが多いねん。あるとき日本の映画ばっかり集めたら、いつのまにか20本以上になってた。それで、まとめて紹介するシリーズを思いついたんやけどな。開始してからちょっと後悔したわ(笑)

Y木:別に1本ずつバラバラに紹介したらええやん。まとめて紹介なんか、やめたらええのに。

S原:でも、こうやってDVDのジャケットを並べるとなかなかのもんやろ?しかも、ほとんどの人がこのDVDの存在自体を知らないという(笑)

Y木:そうやろうな。

S原:まあ思いつき企画でそれほど深い意味はないねんけど、一応、こういうマイナーな日本映画でも、いいものがあるよと紹介したい気持ちもあって、こういう企画を考えたんやけどな。

Y木:そのわりには、褒めてないのも多いやん。

S原:うーん、作ってくれた人たちにちょっと悪かったかな……完成した作品、それもDVDにまでなった作品に対して、あーだこーだと言えるのは、だれでも出来ることやから(苦笑)

Y木:たしかに映画を作る苦労は、生半可なもんじゃないやろうからな。

S原:でもなー、やっぱり自分の感想に嘘は言えんわ。レアな作品やからって、変に持ち上げるのもおかしいやろ?

Y木:そりゃそうや。

S原:できるだけ、良いところは褒めたつもりやけどな。

Y木:で、今回の20本は、低予算の映画が大半やと思うけど、そのあたりはどうやった?

S原:うーん。もちろん、それ自体が「武器」にはならないけど、低予算ならではの製作方法もあると思うで。例えば、「ねじりん棒」とか「金髪スリーデイズ35℃」とか「油揚げの儀式」とかは、撮影場所もすごく少なくなるように工夫されてるし、アイデア次第で上手くいく部分はあると思う。

Y木:なるほどな。

S原:観ていて「ああ、ここはお金をかけて撮ったら、もっとええ場面になるのになあ」「監督は悔しかったやろうなあ」と、よく思ったのは確かやねん。でも、そんなことを言ってたらハリウッドの監督だってある程度、自分の撮りたい映像とかを(予算の都合上)妥協してるやろうしな。

Y木:たしかに。実際に20本観て、率直にどう感じた?

S原:少し前までは、映画の完成度とか気にしてたのよ。監督のセンスとか映像とか、ストーリー展開とか、そういう部分が丁寧に作られてるほうが好みやったんやけどな。それが、今回の経験で映画の見方が変わったかな。

Y木:ほう。どう変わったの?

S原:やっぱり、映画の出来云々も大事やけど、物語だけじゃなくて登場人物(キャラクター)が大事なんやと分かったわ。

Y木:あたりまえやがな(笑)

S原:いままで結構ないがしろにしてた…(笑)少々、ストーリーが破綻してても、キャラクターが生きてるとやっぱりおもろいねん。それぞれの紹介の回でも、ときどき話題にしたけど、ほんまにキャスト(役者)が大事やと思った。

Y木:演技のうまさとか、有名無名は関係なく、と言いたいんやな?

S原:そうそう。まずはキャスティングが最重要。いくら演技が上手くても、合っていない役では違和感が残るだけやと思う。

Y木:でも、合っていない役を、合っているようにみせるのが役者の実力やろ?

S原:そうなんやけど、やっぱり本人の雰囲気とか個性ってあるやん。とくに大半は顔も名前も知らん役者なんやから、観ているほうが自然に感じるほうが映画の中に入っていきやすいと思うねんけどな。

Y木:たしかに、それも一理あるかな。

S原:一番良いのは「演技が上手い」じゃなくて、「役そのままにみえる」という感想やと思うねん。

Y木:自然な感じというか、演技してる感じがしないのが良いってこと?

S原:そうそう。どうしても映画ファン・マニアって、あの撮影方法がすごいとか、あのときのカット割りがどうこうとか、言うやん?(笑)

Y木:今時、そういうマニアも少ないと思うけどな(苦笑)

S原:そういうのよりも、とにかく役者のたたずまいというか雰囲気とか、そういうのが映画の登場人物にマッチすると、おお!と思うねん。極端な話、黙って立っているだけで、その役の存在を感じるような。

Y木:なるほどな。

S原:予算がない映画って、有名な俳優をほとんど使えないやろ?でも、それが観る人の先入観がなくて、逆によい場合もあると思うねん。

Y木:あーそれはあるかもな。そういう意味で、おまえが評価する映画というか、個人的に好きな映画はどれになるの?

S原:一番好きなのは「ユニットバスシンドローム」。とにかく主演の2人組み合わせが良いし、映画全体のトーンが好きやな。あと「7s セブンス」も、よくわからない部分もあるけど、いまでも強く印象に残っている。「ねじりん棒」は単純に役者のバランスが良くて、それぞれの個性を味わえる楽しい映画やった。

Y木:この3本が、おまえのお気に入りやねんな。ほかにも印象に残っている作品はある?

S原:ほかにもあるで。「油揚げの儀式」は、映画の完成度としてはイマイチやけど、稀有な存在感やと思う。逆に完成度が高いのが「はなればなれに」やけど、好き嫌いがでるやろうな。「杉山くんたちは夜専門」は異色作やけど、映画好き・舞台好きなら観て損はないと思う。「ペットおやじ」は正直に言ってカルト作・珍作と言っていいレベルやと思う。

Y木:ふーん。

S原:色々と話したけど、結局は自分の好み以外の何物でもないけどな(笑)詳しくは、各回のトークをみてくださいませ。

Y木:どれも観てないおれからすると、全然ピンと来ないけどな(笑)

S原:さて、せっかくやから今回の20本に「S原賞」を進呈すると…

Y木:もうええねん、小学生みたいな「〇〇で賞」はええねんって。

S原:まあまあ。これを楽しみしる人もおるねんから。

Y木:おらへんわ。 

 

頑張っていますが、かなり癖があるで賞

「ベリースタートっ!」

(主演:阿部英貴、久保田悟 監督:奥田徹)

 

いかにも低予算ですが、好きな人はたまらないで賞

「油揚げの儀式」

(主演:立石幸博、鹿野京子 監督:岡本泰之)

 

真夏の田舎の風景がキレイですが、ドラマ部分がやや弱いで賞

「金髪スリーデイズ35℃」

(主演:真帆、川本成 監督:飯塚健

 

出来は良くないですが、主演女優ファンは満足で賞

「ゴーストリベンジャーJK」

(主演:しほの涼 監督:前島誠二郎)

 

スポーツ映画なのに、なぜか出演者全員の覇気がないで賞

ホールインワン 女子ゴルファー千春」

(主演:原史奈安倍麻美 監督:加藤文明)

 

チープですが、こういうものだと割り切ればよいで賞

「地下の中心で愛を叫ぶ」

(主演:鳥羽潤桃瀬美咲  監督:右田昌万

 

出来はまあまあですが、ちょっと薄味で賞

「くも漫」

(主演:脳みそ夫  監督:小林稔昌)

 

残念ながら狙った面白さは、でなかったで賞

「稲妻ルーシー」

(主演:佐藤仁美  監督:西山洋一

 

リアルな映画なのにリアルさがなくて、だれもついていけないで賞

「RUN3」

(主演:渡辺大  監督:中村隆太郎

 

地味ですが、S原が一番気に入ったで賞

「ユニットバスシンドローム

(主演:山中崇勝俣幸子  監督:山口智

 

頑張っていますが、チープな感じがそのままでてしまったで賞

「ロボ一族」

(主演:深谷愛、小林奨  監督:マキノトクシロー)

 

かなり変な映画ですが、オジサン好きにはたまらないで賞

「ペットおやじ」

(主演:藤東勤  監督:マキノトクシロー)

 

賛否両論あると思いますが、妙に印象に残るで賞。

「7s セブンス」

(主演:深水元基淵上泰史  監督:藤井道人

 

頑張りは認めたいが、残念ながらイマイチで賞

「HERO? 天使に逢えば」

(主演:萩野崇桜井裕美  監督:鶴見昴介)

 

沖縄の風景がきれいですが、人は描けなかったで賞

「月のあかり」

(主演:椎名へきる笠原紳司本郷功次郎  監督:倉持健一)

 

絵になるショットが多いですが、評価が分かれるで賞

「はなればなれに」

(主演:城戸愛莉、斉藤悠、中泉英雄  監督:下手大輔)

 

主役も脇役も良い味です。意外な拾い物で賞

「ねじりん棒」

(主演:夏生ゆうな、斎藤歩  監督:富岡忠文)

 

 テレビドラマとどう違うのか?と聞かれれば返答できないで賞

「宇宙で一番ワガママな星」

(主演:大倉孝二、きたろう 監督:伊藤寛晃)

 

 主演の2人は悪くないですが、おっさんの哀しみはつたわらなかったで賞

「ラブポリス ニート達の挽歌」

(主演:吉村崇、大地洋輔 監督:坂田佳弘) 

 

舞台が元で、独特の世界感ですが、癖になる人はいるで賞

「杉山くんたちは夜専門」

(主演:津田寛治吉野紗香、峯岸信太郎 演出:佐々木睦雄)

 

Y木:こんなコメント言うんなら、はじめからそうしろって。

S原:いやー。今回も楽しかったね♡

Y木:楽しないわ…(苦笑)

S原:さあ、みなさん。ここで取り上げた作品たちは、ほとんどの人が知らないと思いますが、映画との出会いは一期一会ですよ。私の感想はあまり参考にせずに、あなたの好みの1本がきっとあるはずです。どこかで出会えたら、ちょっとだけ手に取ってくださーい!

 

 

ほぼ誰も知らない邦画 20連発!「杉山くんたちは夜専門」(2005年)の巻

杉山くんたちは夜専門 [DVD]

 

S原:いよいよ、知られざる日本映画を紹介するシリーズは、今回で最後です!

Y木:あー長かった…(苦笑)

 

(あらすじ)
どこにでもある、町の小さな工場。納期に追われ、辛い夜間勤務も馬鹿な話で吹き飛ばし頑張る、仲のいい3人の男達。そんなある日、怪しい男(津田寛治)が一人の若い女を連れ、工場にやってきた。
女は3人の誰かから、ストーカー被害にあっていると告白してきた。怪しい男は、自称ストーカー撃退のプロであるという。犯人を捜すため、様々な尋問を続けていくうち、ストーカー撃退のプロである男も、現役のストーカーであることが判明し、話は思わぬ方向へ進み出す…

 

S原:これは「邦画」とカテゴライズしてよいものか悩んだんやけどな。舞台が元みたい。「劇団おばけおばけ」の戯曲を映像化したらしいわ。

Y木:へえ。どうやった?

S原:結論から言うと、わりと面白かった。この劇団のカラーがすきな人にはたまらんと思う。

Y木:ワンシーンで話がすすんでいく感じ?

S原:そうそう。セットもほぼひとつだけ。登場人物は5人だけ。

Y木:役者は?舞台の人?

S原:この芝居をしていた人が、そのまま演じているのかどうかはわからん。ちょっと調べたけど情報が少なすぎて全然わからんかった…(笑)だけど、みんな上手かったよ。はじめは、工場で働く3人(峯岸信太郎、杉山文雄堀江慶)は、いかにも「舞台役者」のセリフの言い方やなあ、と思ったりしたけど、観ているうちに気にならなくなってくる。唯一の女性キャストに、映画やテレビにもでている吉野紗香を配役してるけど、結果的には良いアクセントになったと思う。なによりも工場で働く3人を問い詰める役の津田寛治という役者が素晴らしい。この人は出色の出来やと思うな。

Y木:そうなんや。「怪演」って感じ?

S原:そうやな。淡々としながらも、変態が滲み出ているというか(笑)

Y木:なんかすごいな、それって(笑)どういう話なん?

S原:ネジ工場で夜勤をしようとしている3人のところへ、いきなり女性と男性が訪問してくるねん。女性は、ストーカー被害にあっていると訴える。このなかの3人のなかの1人が犯人らしいというわけやな。一緒に来た男性は、ストーカー退治のプロということやけど、会話していると実は自分自身もストーカーだと言い出す。

Y木:どういうこと?

S原:「自分自身がストーカーだからこそ、ストーカーの気持ちや行動が理解できるのですよ!」と豪語するねん(笑)

Y木:あ、おもろいかも(笑)

S原:まあ、そんな感じで舞台ならではの狭い空間(工場の休憩室)での会話劇がすすんでいく。はじめは、ちゃんと話しているはずやのに、どんどん話がズレていく…

Y木:話がずれていく、ってどんな感じ?

S原:要するにストーカー被害の話をしているはずやのに、どんどんあさっての方向へ話題がいってしまうねん。例えば、日本の貧困問題とか、学歴社会とか、外国人の不法滞在とか。ふざけているわけじゃなくて、本人たちは大真面目なんやけど、おかしくなっていくねん。

Y木:へえ。

S原:この作品のポイントは、そういうズレていくのを楽しいと感じるかどうか?やと思う。

Y木:いかにも舞台って感じやな。

S原:うん。これは映像よりも舞台でみたほうが、やっぱり面白かったと思う。なんといってもライブやしな。

Y木:そうかもな。

S原:芸達者な役者たちが、どんどん話を脱線させていく…演劇としてはよくあるネタかもしれんけど、最近ぼくは演劇も観てないし、なかなか新鮮やったな。女性の職業が伏線になっていたり、いわゆる「上手い」演出もあるし、安心して観れるレベルの作品やと思う。

Y木:三谷幸喜みたいな感じ?

S原:うーん。ちょっとテイストが違うかな。三谷作品とは違って、すこしこの作品には独特の陰影みたいなものがあるねん。

Y木:ちょっと影があるってことか?暗いというか。

S原:暗いとまでは言えんけど、ほぼ工場の休憩室で話が進むし、どこか閉塞感みたいな感じはあるねん。とくに後半は、日本の暗部を示唆するような話になったりするから。

Y木:そうなんや。

S原:でも、元の舞台も面白いんとちゃうかな、と思わせる出来やったわ。

Y木:芝居・舞台としてでなくて、映像作品としてはどうなん?

S原:うーん、基本はカメラは固定して演劇をみるような作りやけど、ときどきカット割りというか編集があるねん。ところどころ屋外の場面もあるけど、正直に言ってそういう場面は、あんまり上手くなかったかな。

Y木:それはしゃーないやろ。せっかく映像にするんやし、ただ単に固定カメラで撮り続けるのも芸がないで。

S原:そうやな。まあ、やっぱり映像作品というよりも「舞台を映像化した部分」がやっぱり面白い。これが本音です。

Y木:ラストはどうなるの?

S原:うーん、これは言わないでおく。今後、この脚本で舞台をするかもしれんし、それを観に行く人もおるやろうしな。そういう人のために秘密にしておく。ちゃんと結末があるということだけ言っておきます。ラストもなかなか決まっているで。

Y木:ほー。

S原:さあ、みなさん。今回の20本紹介シリーズの中では異色作です。演劇に興味がある人は見逃せない作品と思います。演劇や映画を「作る」ことに興味がある人にもおすすめです。本当にレアな作品と思いますが、みつけたらマストバイですよ!そして、みなさん、お待たせしました。いよいよ20本鑑賞したあとの「総括」ですよ!

Y木:えー、総括なんかせんでもえーのに……

ほぼ誰も知らない邦画 20連発!「ラブポリス」(2011年)の巻

ラブポリス ニート達の挽歌 [レンタル落ち]

 

S原:今回はこれ!

Y木:お笑い芸人が主演か…

 

(あらすじ)

仕事もせず、金もなく、これといった夢や希望も見つけられず、それゆえに恋人もいるわけがない……そんなニートを絵に描いたようなアキオ(吉村崇)とトオル大地洋輔)。ひょんなことから彼らは、男に恋愛でひどい目に遭わされた女性の復讐(ふくしゅう)を代理遂行するラブポリスとして立ち上がることに。しかし、その裏には失恋直後の女性は落としやすいのではないかという不純極まりない動機があった。ラブポリスとしての活動を通して、これまでの社会から取り残されたニート生活では得られなかった充実を感じるアキオとトオル。しかし、思いも寄らぬトラブルが彼らを待ち受けていた・・・

 

S原:前に紹介した「宇宙で一番ワガママな星」と同じで、これも吉本興業が製作にからんでます。

Y木:どうやった?

S原:「宇宙で一番ワガママな星」よりはマシやったけど……おもしろないです。

Y木:そうなんや。

S原:うーん。吉本は沖縄国際映画祭を主催しているから、映画ビジネスに興味があるんやと思う。でもなー、こういうことを続けるんかなあ。

Y木:かなり前の映画やから、いまは(吉本の)映画製作のスタンスも変わってるんとちゃう?

S原:そうかもな。当時は、松本人志板尾創路に映画を撮らせたりしてたから、そういう企画の一環なんかな。吉本のタレントを出演させてなんとなく作った映画なんか、どう考えてもダメやと思うねんけどな。

Y木:それは偏見やろ。企画次第やし、監督の力量次第やんか。いわゆる「化ける」こともあるし。

S原:だけどなー……

Y木:まあ言いたいことはわからんでもない。タレントとか芸人が主演というだけで、敬遠する人もおるやろうしな。でも、そういう偏見をぶっ壊すくらいのパワーとか勢いがあれば、面白くなると思うけどな。

S原:うーん、そういうパワーや勢いは感じんかったな。短い映画やのに、長く感じたし。でも、こういう映画って、そもそも誰が観るんやろか?

Y木:さあな。気軽にレンタルをしてもらうような作品とちゃうの?

S原:そうなんかなあ。なんか違和感を感じるねんなあ。

Y木:ストーリーは、上のあらすじと一緒?

S原:そうそう。これ、ストーリーは結構ええと思うねん。ニートの2人が鬱屈した気持ち(下心も含む)を抱えつつ、女性のために役立つことをする。当然、上手くいかないけど、最後は大きなトラブルをなんとか始末する。結局、女性にはモテないけけど、ちょっとだけ「大人」になる…こういう映画になれば面白いはずなんやけどなあ……

Y木:どんな風にあかんかったの?

S原:まず、ニートでコンプレックスを持っている描写が上手くない。説明的な台詞は多いけど、かれらの焦燥感みたいなものは伝わらへんねん。吉村崇も大地洋輔も悪くないけど、テレビで見るからどうしても「あ、タレントが映画に出てるのね」と思ってしまう。

Y木:演技が下手ってこと?

S原:いや、僕はむしろ演技は下手じゃなかったと思うで。なんというんかな、この2人はいまの現状(ニート状態)をなんとかしたいと思ってるねん。女性と××したいという下心はあるねんけど、もっと「いい年をしたオッサンの哀しみ」なんかが滲み出ると、もっと良いと思うんやけどな。

Y木:哀しみをみせる映画なんか?単純なコメディとちゃうの?

S原:コメディなら、もっとぶっ飛んでもらわんとな。

Y木:なるほど。

S原:哀しみを感じるような場面も少しあるねんけど、なんか他のコメディの場面とかみ合ってなくて、うだつのあがらないオッサン2人がリアルに感じへんねん。

Y木:中途半端?

S原:そやなー。コメディとしては笑えるシーンはないし、おっさん2人のペーソスを感じることもない。ドラマの展開としても単調やから、やっぱり退屈に感じる。

Y木:良い場面とかないの?

S原:あるで。ぼくが好きなのは、吉村が駅の近くで友人(同級生)とたまたま出会う場面。友人から「近いうちに同窓会があるから出席する?」とか聞かれて、とっさに吉村はごまかす。自分のみじめな姿をみせたくないねんな。その友人は会社帰りなんやけど、手にはオムツをもってる。吉村はそれを黙って見る。この場面で、子供がいる同級生に比べて、おれは……という表情の吉村はええよ。こういうのがもっとあれば、逆にコメディの要素も生きてくると思うんやけど。

Y木:下心で暴走する場面とかは?おもろないの?

S原:ぼくはダメやったな。あるとき女子高校生を助ける。女子高生から「ありがとうございました」とお礼を言われるねんけど、そのあとに「やらせて♡」とか言うねん。こんなん笑えるか?相手は女子高生やで。

Y木:笑えんな、それは…

S原:まあ、最後は大きな事件(のようなもの)に、一念発起して対決するんやけどな。ちょっと面白いのがそこくらい。それも最後の20分くらいやし…

Y木:どうも、おまえは吉本興業の映画とは合わんみたいやな。

S原:2本しか観てないけどな(苦笑)機会あれば、もっと観るわ。他はどうなんかなあ。ええ映画もあるんかなあ。

Y木:それこそワゴンセールでみつけたら?(笑)

S原:そうやなあ。さあ、みなさん。これも主演の2人のファンだけは楽しめるでしょう。でも、あんまり面白くないです。この映画を観るなら、ほかの映画をゲットしてくださーい!

ほぼ誰も知らない邦画 20連発!「宇宙で1番ワガママな星」(2010年)の巻

宇宙で1番ワガママな星 [DVD]

 

S原:今回はこちらですよ。

Y木:SFコメディ?

 

(あらすじ)

西暦2020年。カップ麺の懸賞で運良く宇宙旅行に当選した5人の男たち。それぞれ宇宙へ思いを馳せていたものの、彼らを待ち受けていたのは、ロシアの宇宙訓練施設やウソなのか本当なのかわからない意味不明な訓練など。予測不能の展開に驚き戸惑いっぱなしの彼らだったが、そこには宇宙旅行主催会社の陰謀が隠されていた。なんと、宇宙にはいくことは出来ず、宇宙に行ったふりをする計画だったのだ。それを知った彼らは、はたして…

 

S原:これは映画というよりも「テレビ」やった。

Y木:そうやろうな。

S原:一応、劇場公開したみたいやけどな。漫画みたいな展開やけど、小学生でもわかるし最後もちゃんと終わります。

Y木:上のあらすじをみると、「カプリコン1」(1978)を思い出すな。

S原:あのまんまです(失笑)宇宙旅行に行く予定が、主催者側の都合で行けなくなったから、宇宙に行ったふりをする……それだけの映画やった。

Y木:宇宙に行ったふりって?

S原:特撮で宇宙を背景に歩いたり、コントみたいな宇宙船内部で操縦したふりをするだけ。それを衛星中継でつないで、世間に向けては宇宙旅行に行ったことをする、と。セットもわざとチープにして笑わそうとしていると思うけど、完全に失敗している。

Y木:ドタバタのコメディなんやろ?

S原:いやあ、ちょっと違うなあ。

Y木:ハートフルな映画?

S原:それも違うなあ。

Y木:役者がかっこよいとか?

S原:べつに。

Y木:ハラハラドキドキは?

S原:せんかった。

Y木:施設から逃げ出して真実を伝えようとするとか?

S原:いや、そういうことはなかった。

Y木:どんでん返しは?

S原:とくにない。

Y木:なんやねん。じゃあ、どんな映画なんや?

S原:うーん。表現が難しいけど、しいて言うなら「テレビにでている人たちがでてる映画やけど、とくにこれといって面白くない映画」かな。

Y木:もうちょっと言い方があるやろ。要するに、つまらんのね。

S原:うん。つまらん。はー…(ため息)人それぞれやけどな、こんな映画を撮って、一体なにが楽しいんやろ?

Y木:楽しいというか、一応プロやから儲けるためにこの映画を作ったんやろ。

S原:そりゃそうやけど、いくらなんでも空しすぎるで(苦笑)この20本を紹介するシリーズの中では、ひょっとして一番制作費がかかっているかもしれん。潤沢ではないと思うけど、有名は俳優もたくさん出ているし、ロケとかお金かかってそうやしな。だけど、本当に印象に残らない……

Y木:ありきたりなんやな。

S原:完成度で言えば、これより低い映画はあると思うけど、「印象に残らない映画」としてはナンバー1かもしれん。毒にも薬にもならないどころか、水にも空気にもなっていない……さっきも言ったけど、この映画は「カプリコン1」とそっくりやねん。だけど、あれだってそんなに完成度の高い映画とちゃうやろ?

Y木:そうやな。

S原:だけど、いまだに語られる映画やろ。でも、この映画の話をする奴は、いま日本中でひとりもいないやん。

Y木:ぼろくそやがな。

S原:ほんまにな~(ため息)

Y木:なんか今回は、あかんかったみたいやな。

S原:主役の大倉孝二は顔色が悪いし覇気がない。きたろうは教祖役やけど、その役にまったく意味がない。佐野和真はいてもいなくても一緒。ココリコの田中は、演出が中途半端なせいで、何をしていいかわからない。マイケル富岡はテレビのトーク番組と同じ。ガレッジセールのゴリとか大泉洋とか、いつもなら脇役ですごく良いのに、この映画ではまったく輝きがない。こんなに役者の魅力を伝えない映画も珍しい。おそろしいほどの「役者殺し」映画やで。

Y木:今回は、キツイなあ。

S原:テレビ朝日吉本興業が製作してるんやけどな。やる気がないんやったら、はじめから作るなっちゅーねん。

Y木:そこまで言うか。ちゃんと最後まで観れるんなら、それでええやん。

S原:最後まで観れるよ。でもそれは、面白くないバラエティ番組と一緒やねん。単に最後まで観たというだけ。それで何かが生まれるわけじゃない(笑)

Y木:いや、たいていの映画はそんなに何かを生み出さないと思うけどな。

S原:そうなんやけどなー。なんか納得いかん。

Y木:おまえ、昔からそうやけど、制作費をかけてしょーもない映画を作った時の怒りは激しいよな。

S原:そうやねん。この制作費を、ほかの19本の映画にまわしてあげてほしかったわ……

Y木:そんなん言ってもしゃあないやん。出来不出来は、結果論やし。

S原:その通りなんやけど、とにかくほんまに中途半端やねん。逆に嫌悪感を感じて途中で観るのをやめるとか、怒りがフツフツ沸く映画のほうがええわ。あー、日本にはデートでこの映画を見に行ったやつもおるねんで。

Y木:そりゃ、おるやろ。

S原:統計によると、この映画のあとのカップルが別れた率は、なんと95%以上らしい。この数値にもビビるよな。

Y木:勝手に統計を作るなって。訴えられるぞ。

S原:さあ、みなさん。いわゆる「ダメ映画」を楽しむほどのひどいレベルでもありませんが、とくにこの映画を観なくてもよいです。この映画を観る時間があれば、コンビニで立ち読みしたほうが良いです。あなたは、あなたらしく生きていけます。観た後にハートにはなにも残りません。ワゴンセールでみつけてもスルーしてくださーい!

Y木:今回は、ほめるところゼロやないか……

ほぼ誰も知らない邦画 20連発!「ねじりん棒」(2004年)の巻

ねじりん棒 [レンタル落ち]

 

Y木:ねじりん棒?雑巾?

S原:それは「あしたのジョー」。こっちは、散髪屋のクルクルまらわるカラフルな棒のことやな。

 

(あらすじ)

散髪のためとある理髪店に入った新米タクシードライバーの井村。おしゃべり好きな店主と話が弾み、思わずとっておきの自慢話を始めてしまう。それは数日前の真夜中のこと。ホテルの前で若い女・美咲を乗せた井村。男に殴られ逃げてきたという女は、部屋に財布を置き忘れたことに気づき、仕方なく井村は彼女の自宅まで乗せる。ところが自宅に着いてみると、あるはずの現金は、旅行中の夫が持って行ってしまったとのこと。すると美咲は突然、“あたしとタクシー代と、どっちがほしい?”と井村を誘惑し始めるのだったが…。

 

S原:この映画は、結論から言うと、なかなか面白かった。

Y木:正直に言うと、ジャケットみるとイマイチ感があるけど…(苦笑)

S原:そうやねん。この映画(DVD)はジャケットでかなり損してる。もっと良いデザインにすればこの映画はもっと知られてたかも、と思うけどなあ。

Y木:上のあらすじを読むと、話術というか落語みたいな感じやけど?

S原:落語…でもないかな。でも、理髪店で客と店主が話しているだけの映画やから、登場人物も場面も少ない。今回は、それが功を奏したと思う。

Y木:へえ、そうなんや。

S原:主役は、タクシー運転手の斎藤歩。彼を誘惑するのは夏生ゆうな。理髪師役は、石橋蓮司。ほかに脇役で、角替和枝ベンガル島田久作。登場人物はこのほぼ6人。結果として、斎藤歩と夏生ゆうなの2人を芸達者たちがサポートする感じで、すごく安心して観れるようになったと思う。

Y木:タクシー運転手がドタバタに巻き込まれるっていう話?

S原:そうそう。些細なことがどんどんおかしなことになっていく、というパターンやな。もう少しぶっとんだ方向に行くかと思ったけど、意外とそうでもなかった。でも、斎藤歩と夏生ゆうなの2人は、かなり良かったな。斎藤はトラブルに巻き込まれていく情けない顔がよく似合っているし、夏生も話の流れでどっちにでも転がるような役に存在感を与えていたと思う。

Y木:ヌードもあるみたいやな。

S原:あるよ。やたらと激しいわけじゃないけど、意味のないヌードじゃないし、よく頑張ったと思う。

Y木:なんで上から目線?(笑)

S原:いやー、女優が脱いで頑張っていると応援したくなるねんなー(笑)とにかく、2人は良い組み合わせやった。

Y木:おまえ、このマイナー日本映画特集では、やたらとキャスティングのことを言うなあ。

S原:いや、今回かなりの数を観て、つくづく思ったんやけど、やっぱりキャスティングは大事やで。

Y木:あたりまえやがな。

S原:そうなんやけど。あ、これはまた総括の巻で話をするわ。

Y木:えー、また総括するの?もうえええで。そうでなくても20本もあるのに…

S原:まあまあ。楽しみにしている人もおるんやから。

Y木:おらんわ。まあそれはええとして、この映画は、結局どういう話なん?

S原:理髪店で、自分が経験したちょっとお色気含みの不思議な話をする。はじめは、あまり乗り気でなかった主人公も、理髪師とどんどん盛り上がって話が続いていく。あまりに非現実的になっていくので、本当かどうか理髪店の店主や客に疑われるねん。

Y木:非現実って?

S原:上のあらすじのあとに、主人公の話が続いていくねん。女性の愛人が家に来たり、女性とベッドイン寸前になったり、タクシーをレッカー車で持っていかれたり、女性がSM嬢のように豹変して主人公を責めたり…という風に話が脱線していくねん。

Y木:散髪しながら、それを話すわけやな。ちょっとフランス映画っぽいかな。

S原:あ、すこしそういう要素もあるかもな。

Y木:(DVDの裏をみて)「抱腹絶倒!大人のブラック・コメディ」と書かれているで?

S原:うーん。ブラックコメディとまでは言えんかな。たとえばコーエン兄弟とか、話がどんどんメチャクチャになっていくブラックな展開とかが上手いやん?

Y木:あー「ビッグ・リボウスキ」(1998)とか好きやなあ。

S原:あのニコラス・ケイジが変態役でボウリングするやつな(笑)あと「ファーゴ」(1996)とか上手かったやろ。あそこまで、ウェルメイドなのはさすがに難しいと思うけど、もう少しああいう感じが出ればなあ…と惜しい気持ちはあるで。

Y木:弾けていないというか、こじんまりとしている感じ?

S原:どこまで弾けるのか難しいと思う。このへんで小さくまとまったほうが、逆に「佳品」みたいな雰囲気も出るし……うーん、自分で言っておきながらなかなか難しいな(苦笑)

Y木:ふーん。監督は、どういう映画を目指したんやろ?

S原:たぶん、観ていてクスッと笑えて、地味でも印象に残る、そんな映画を目指したんとちゃうかな。白黒画面を使ったり凝った部分もあるしテンポも結構良いし、最後まで飽きずに観れるのは間違いないです。

Y木:それやったら、(映画としては)十分やん。

S原:そう思う。撮影日数も制作費もなかったやろうし、よく頑張って仕上げたと思うで。

Y木:だから、なんで上から目線?(苦笑)

S原:テレビドラマみたいという突っ込みをする人もおると思うけど、こういう映画もありやと思う。

Y木:ラストは?

S原:これは言いたくないなー。

Y木:えー、そうなん?

S原:いつもなら、ネタバレおかまいなしに話すけどな。このブログを読んだ人に機会があれば観てほしいので、お楽しみにしておきます。

Y木:まあええけど、今回のトークで観たいと思う人が、果たしてどれくらいおるのか…?

S原:上手く紹介できなくて申し訳ない(笑)言い訳するわけとちゃねんけど、ちょっと話しにくいタイプの映画なのは間違いないねん。

Y木:観ないとわからんってことか。

S原:イエース!さあ、みなさん。地味な映画ですが、あらすじと役者をのんびりと味わうタイプの映画です。斎藤歩と夏生ゆうなのファンは観て損はないでしょう。ちょっといつもと雰囲気の違う映画を楽しみたい人も、マストバイですよ!