あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

「悪魔狩り」(2003年)の巻

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S原:今回は、これですよ、あなた!

Y木:うわー、ほんまにしょうもなさそうやなあ…

 

 (あらすじ)

ミチルの通う高校で“悪魔が殺しに来る”というチェーンメールが広まり、生徒たちは次々と変死を遂げていく。犯人と疑われたミチルは、取材に来たジャーナリストと同級生の3人で悪魔へと立ち向かう。

 

Y木:この娘、ごっつい目つき悪いなあー。

S原:まあ、ホラーやから…といいたいとこやけど、ほんまに目つきの悪い小娘やった(苦笑)

Y木:眉毛も変じゃない?

S原:うん。変やった(笑)

Y木:なんやねん。こんな映画は絶対おもろないやろ。

S原:うん面白くなかった。ここまで面白ないのも珍しい(笑)

Y木:おまえ、ええ年してこんな映画をよく観るなあ(あきれた顔)

S原:このブログをはじめてから、ワゴン映画をいろいろと観たけど、こんなにヒドイのもそうそう出会えないで。90分くらいの作品やけど、3時間くらいに感じたわ(苦笑)

Y木:そりゃそうやろ。面白くなる要素が皆無やん。

S原:いやー、まあ撮り方によっては面白くなると思うねんけどな。

Y木:ならんって。

S原:あらすじにも書いてあるけど、「チェーンメール」が高校で流行するねん。関係あるのかわからんけど、高校生たちが変死していく。どうも悪魔になっていくらしい、というストーリーなんやけど…もう結論から言うと、この作品で一番ダメなところは、『何をやっているかわからない』ってことやねん。

Y木:どゆこと?

S原:まずストーリー展開がわからない。普通、身の回りに殺人事件が起きて、悪魔化した人間(クラスメートとか)がいるんやから、主人公がどう反応、対応するか?という物語になるはずやろ?例えば、襲われるのか? 戦うのか? 逃げるのか? 謎を解くのか?

Y木:そりゃそうや。

S原:ところが、この主人公は、何を考えているかまったくわからんねん。どうも主人公自身も悪魔なんかな?と思わせる場面もあるけど、そのくせ急に怖がったり、強気になったり、もうキャラクター設定が安定していないから、観ていて頭がクラクラするねん。要するに、どんな主人公かがわからへんねんな。

Y木:そりゃひどいな。ほかの登場人物たちは?

S原:いや、ほかの人はもっと意味不明やった(笑)性格もわからんし、そもそも主人公との人間関係も説明不足やから、「え?この人って友人やったっけ?それとも敵やったけ?」って戸惑うねん。

Y木:そんなもん、もう途中で観るのをやめろよ。

S原:よっぽど、やめようかと思ったけど、観てしまった…(笑)さっきも言ったけど、人間関係が理解できていないから、いくら役者がセリフを言っても、全然意味がわからん。そのくせ説明的で不自然なセリフが多いねん(苦笑)ラスト付近なんて、まるで『この世のものすごい謎を解く』みたいなセリフのやりとりなんやけど、観ているこっちはシュールレアリスム演劇を見ている気分になる。

Y木:そこまで支離滅裂なんか。ちょっとは分かるやろ?

S原:この破綻具合は、観てもらわないと伝わらないのが歯がゆいわ。とても自分の語彙力では、伝えることが出来ない…(苦笑)

Y木:ほかに出ている役者たちは? 

S原:全員全滅。演技もなにもあったもんやない。

Y木:一刀両断やないか。

S原:ほんまに褒めようがないねんって!まあキャストも良いところがないけど、スタッフ(製作)側はもっとひどい。思いつくまま短所を言うと、①ノイズ系の効果音を繰り返して恐怖感を演出 → 陳腐なうえに耳障りなだけ ②同じ効果音を何度も挿入 → イライラするだけ ③役者が熱演 → うるさいだけ ④セリフ → 急に大きくなったり、ボソボソしゃべって聞き取れなかったりする ⑤画面 → 急に明るくなったり暗くなったりする ⑥カメラワーク → 手振れあり、移動あり、空間を生かした構図あり。それがすべて下手すぎて、見にくいだけ・・・ちょっとはわかった?

Y木:素人映画やがな。

S原:だいたい悪魔になったら、どうなると思う?

Y木:頭から角が生えるとか?

S原:惜しい。舌が赤くなるねん。それをベローンって見せつけるねん。それが悪魔にのりうつられた証拠(笑)

Y木:そりゃ、キッスのライブパフォーマンスやがな(笑)

S原:しかしなあ、今回つくづく思ったけど、やっぱり「どんなキャラクターなのか」「どんなストーリーなのか」が伝わらないと、観ている人はついていけない。

Y木:そんな当たり前のことを、いまになって再確認…?

S原:これもワゴン映画を観たおかげやな(笑) この作品は、どうもテレビドラマで放映したもものを再編集してDVD販売したみたい。編集が上手くなくて、ぶつ切りで話が全然わからへん…それでこんな珍作になったんやろうけど、それにしてもなあ(ため息)

Y木:もうちょっと具体的に教えてや。聞きたいわけじゃないけど。

S原:主人公は、後半で「人間だと証明したければ体育館に来い」と言われるねん。行ったら、白衣のおっさん(悪魔?)が、主人公をブツブツと怒った挙句に、スローモーションでダンスする(笑)しかも体育館の舞台には、赤い十字架に高校生(同級生?)が、縛られている!

Y木:いつの時代の演出や…
S原:よく経緯がわからんけど、結局(十字架の高校生の命を懸けて)、悪魔と主人公が勝負することになるねん。勝負は…なんとバスケのフリースロー3本勝負ですよ!しかもコメディ演出ではありません!マジの真剣勝負!
Y木:あたまが痛くなってきた…
S原:そして、意味なく体育館の電気が消える!そして、フリースロー!ゴールされるごとに、安っぽい炎の画像が重なります。果たして勝負は?
Y木:主人公は勝つの?
S原:負けます。十字架の高校生は死にます。
Y木:えー…なにそれ…
S原:全編こんな感じやねん。ほかには、主人公の先輩(男性)はどうもニューヨークで911らしき事件に遭遇してて、そのときの破片(?)を大切にもってるねん。ところが、なんの脈絡もなく主人公がいきなり「そんなものは捨ててください!」と勝手に投げ捨てるねん。
Y木:は?
S原:そしてそのあと、先輩と甘い接吻…
Y木:めまいがしてきた…
S原:画面には赤い花が、二重露光で映ります…
Y木:「パタリロ」かよ。
S原:そして、主人公がかっこよくつぶやきます。「地獄が始まった」
Y木:…わかった…もうやめてくれ。これ以上聞いても理解できないから、もうええ。ようするに意味がつながらない映像の連続やねんな。
S原:そうそう。DVD特典ではメイキング映像があるねんけど、記者会見なんか逆光で俳優の顔が映っていないねんで。そんな記者会見ってある?(笑)最後まで、スゴイ映像の連続やったわ。
Y木:今回は…なんかすごいな…
S原:さあ、みなさん。たぶん一生に一度出会えるかどうかの珍作です。あの「シベリア超特急」や「北京原人 who are you ?」でも、ストーリーは理解できましたよね?この作品は、それらを軽く陵駕しています。でもさきの2本みたいに「愛すべき珍作」にはなっていません。単にレアなだけですが、たぶん10年後にはこの世に1本のDVDも存在しない可能性がありますよ(笑)後世に残す意味でも、珍作好きなあなた、ぜひゲットしてください!
 

「アンシーン/見えざる者」(2016年)の巻

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S原:今回は、これを取り上げますよ。

Y木:おお、透明人間!

 

(あらすじ)

家族の前から姿を消したボブ(エイデン・ヤング)は、娘のエバ(ジュリア・セーラ・ストーン)との関係を修復しようと以前暮らしていた町に帰ってくる。ところが、エバの行方はわからなくなっていた。ボブは、体が少しずつ透明になっていくという秘密を抱えながら、危険を顧みずに娘の捜索に乗りだす。やがてボブは衝撃の事実に直面し……。

 

 

S原:この映画は、カナダ産。ちょっと変わり種やねん。普通は「透明人間」というと実験とかの設定やけど、この映画では一応、「病気」やねん。

Y木:へー病気なんや。

S原:だから主人公は誰にも言えずに、工場で働きながら一人でひっそりと暮らしている。それはええねんけど、この映画は……とにかくだるい!

Y木:テンポが遅いの?

S原:それもあるけど、映画全体の雰囲気がどんよりしてるねん。主人公もマジメと言えば聞こえはええけど、暗くてジメジメしてるだけ、おまけに汚らしいヒゲ面(笑)おまけに、カナダの空までどんよりしている。

Y木:SFXは?透明になる場面はあるんやろ?

S原:悪くないけど、ほとんど出てこない。

Y木:なんやねん、それ。大半のお客さんはそれを観たいと思うところやのに。

S原:これは、透明になっていく恐怖とかサスペンスではなく、暗い表情をした汚いおっさんが、娘を救い出すという人間ドラマやねん。

Y木:えー、じゃあ透明人間の設定は要らんやん。

S原:べつに要らんで。

Y木:あかんがな。ん?ちょっと待って。さっき「病気」って言ってたけど、パッケージには「呪い」って書いてるけど?

S原:実は、なんかよくわからんかった…(苦笑)とにかく主人公が家族想いで、いいヤツやねん。でも、こういう映画にそういうのを求めてないやろ?

Y木:まあな。

S原:この映画の監督は、たぶんこう言うと思うねん『お客さん、透明になる場面も少しは見せますわ。でも、ちゃいますねん。透明になる話はまあよろしいがな。それよりも、この主人をしっかりと見てくださいよ。地味やけど、ええヤツでっせ。どうでっか?』

Y木:そんな知らんがな。

S原:そうやねん。そんなこと言われても『あー、うん。そうやな、ええヤツやな…」』としか返答でけへんやろ。

Y木:ちょっと分かってきた。ピントがずれてるんやな。

S原:そうやな。まあ、家族ドラマを観たい人はええかもしれんけど……いやいや家族ドラマを観たい人は、そもそもこんな映画を選ばへんっちゅーねん!

Y木:誰に突っ込んでるねん。

S原:ちょっとストーリーを話すわ。主人公は、製材所で働いているんやけどな、最初から顔色悪くて、しんどそうやねん。ある日、元妻から電話がかかってくる。娘の様子が最近おかしいから(反抗期?)会って話をしてほしい、と言われるけど、8年も会ってないしあんまり気乗りはしないねん。実はこの時点ですでに「体が透明になっていく」という病気になってるねん。それもあって、あんまり娘と会いたくないねんな。

Y木:透明って、体全体が消えていくってこと?

S原:この時点では、手の指やな。包帯をまいてごまかしてる。よくわからんのが、どうも透明になっていくと、体調が悪くなるみたいやねん。結局、娘に会いに行くねんけど、そのあいだにも徐々に体が消えていく。

Y木:ストーリーは確かに地味やな。そこからどう展開するの?

S原:娘と再会して心の交流なんかをしていく。同時にドラッグをやりとりするギャンググループとかがからむけど、そんなに効果的ではなかったかな。わかりにくいけど、結局は「人体実験」で主人公の体は透明になっているということが分かってくる。娘も拉致されて、同じ実験をされてしまうねん。

Y木:病気でも呪いでもなく人体実験か。

S原:たぶんな。よく呑み込めなかったから、間違ってるかもしれんけど(笑)じつは主人公の父親は行方不明になってて、主人公は「自分を捨てた」と思って傷ついてたんやけど、人体実験で透明にされたんじゃないか、と疑ったりする。

Y木:ほー、じゃあその実験の謎を解き明かしていくわけね。

S原:いや、とくに実験の謎はわからんかった。

Y木:えー主人公はどうなるん?娘も実験台にされて透明になっていくんやろ?

S原:最後は、主人公は完全に透明になったみたい。でも、安心してくださいませ。透明のまま、娘のそばで暮らし続けるから、ネ!…で、おしまい。

Y木:なんやねん、そのラスト。

S原:これをコメディでなく、シリアスな感じで描いてるのがなんともまた。

Y木:あー、しょうもなさそう…

S原:ハッキリ言うんじゃないよ、あなた。ええ所だってあるねんで。

Y木:どこ?

S原:うーん…

Y木:ないんやないか。

S原:さっきも言ったけど、SFXはまずまず。パーカーのフードをとったら、頭が半分消えかかっているという場面はよかった。でもここだけやねん。あとはなあ…要するに観客は、透明人間ならではの設定をいかしたミステリーとかアクションをみたいと思うはずやのに、実際は暗い顔をしたひげ面のオッサンが終始苦しんでいるだけのを見せられるだけ、という…それにしてもなあ、なんでこんな家族愛をテーマにしたんやろ?

Y木:まあ、ミステリーとドラマの両方を狙ったんやろな。ことわざで言うと「一石二鳥」というか。

S原:だれか、「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざを、この監督に教えておいてちょうだい。

Y木:今回の映画はいかにも『ワゴンコーナー映画』ってことやな。

S原:さあ、みなさん、暗い男が悩む姿が好きな人、ちょっとだけ特撮があれば十分で本当は家族愛が観たい人、そんな人はマストバイ…いや買わなくてもええかな…

Y木:そうやろうな…

 

 

 

「フィア・ストーム 」(2003年)の巻

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S原:さーみなさん、おまちかね。今回はこれ!

Y木:だれも待ってないと思うけどな。

 

(あらすじ)

危険が迫ると警告して注意を促すという画期的なブレスレットが発明される。商品開発部のミッシェルは、実験台として恐怖症の弟・ローリーにブレスレットを与えるが…。誤作動を始めたブレスレットがエレベーター、地下鉄など、街中をパニックに陥れる。

 

S原:これは、場外ホームラン級のダメ映画やった(笑)

Y木:というか、こういうのを観ようとしている時点で、ダメ映画ってわかってるんやろ?

S原:そうなんやけどな。なんというか上にある紹介文を読むと、結構好みのストーリで期待してしまったのよ。

Y木:いや、パッケージでわかるやろ。めちゃダサいやん。ビルからビームがでてるやん。

S原:もちろん、こんな場面はないねんでー(笑)このパッケージを観ると、主人公の男女がイマイチでショボい感じやろ?実際に観ると、もっとイマイチでショボい感じやったわ…例えて言うと、コンビニの前で菓子パンを食べながら、つまらなさそうに携帯をいじっている早朝のカップルみたいな。

Y木:具体的やのにわかりにくい例えはやめてくれ。要するに、ショボいパニックものなんやろ?

S原:あー…パニックと言っていいのかどうか…ある警備保障会社で、危険予知が出来るブレスレットが開発されるねん。それを主人公がはめるねんけど、この男はもともと毎日毎日不安感を感じながら生きているヤツやねん。

Y木:えーそんな男に、危険予知できるブレスレットを渡したらあかんやろ。

S原:まあ危険が予知できるから(主人公の)不安も解消されるはず、という理由なのか、不安を感じ続けているから危険をすぐに察知できるはずという理由なのか、映画が下手すぎて全くわからん(苦笑)主人公には恋人がおるねんけど、どうにも珍妙な女性でな。主人公ともかみ合わないし、ストーリーに関係しないし、なんのために出てきたのかわからん。

Y木:主人公の恋人が危険な目に合う…というお約束ちゃうの?

S原:いや、そんなことはなかったな。喫茶店で、主人公に対してブツブツ文句を言うだけやった。しかも、なんか観客に不安感を与える容姿/化粧やねん(笑)

Y木:映画の本筋と関係のないところで、観客に不安感を与えたらあかんやろ。

S原:ほんまやねんって。映画の本筋としては、ふつうならブレスレットをもらった主人公が、危険を予知できるようになる → 未然に危険を防ごうとする → だけど上手くいかない(もしくは、上手く防ぐ) という展開やろ?

Y木:まあな。

S原:でも、この主人公は ブレスレットをもらう → あいかわらず不安感を抱えながら生活 → たまに恋人とケンカ という展開やから。

Y木:えー、ブレスレットをもらった意味ないやん。

S原:ないよ、まったく(キッパリ)。やがて、主人公はエスカレーターとかエレベーターとか、自分の身の回りの起きた事故がどうも自分に関係しているんじゃないか、とまた不安にあおられるねん。

Y木:ん?どういうこと?

S原:えーとですねえ、主人公は「自分が(不安で)いろいろと想像してしまう事故が、現実化しているんじゃないか?」と考えるねん。

Y木:ふーん、それで実際はその通りなん?

S原:いや、よくわからん。

Y木:なんやねん。

S原:だから映画の出来が悪すぎて、ストーリー展開とか主人公が何を考えてるかわからんねんて!

Y木:だから、そういうわけのわからん映画をみるなよ!

S原:テヘッ!(ペロリ)

Y木:ごまかすんじゃねえ。

S原:主人公はすぐ悪いこと(地下鉄事故とか)を想像してしまうから、自分で出来るだけ事故とは関係にない楽しいこと(カフェのメニューとか)を考えるように毎日努力するねん。

Y木:よくわからん上に、地味な映画やな。

S原:いっぽう、警備補償会社では「やっぱり主人公の恐怖が、街にトラブルを引き起こしているのでは?」と考えて慌てるねん(なぜそう考えたかは説明なし)けど、システムを改良してOKになったり(なぜOKになったかは説明なし)、しょっちゅう株式市場の場面が挿入したり(主人公の想像/行動で株価が乱高下しているという意味?)、社内アナウンスが何度も流れたり(コメディの要素なのか意味不明)、もう映画として破綻しているねん。結局、街はだんだんと恐怖感(不安感)に包まれて、パニックになる…という展開(らしい)けど、上手く演出できてなくて街の様子は普段通りやねん(笑)。好意的に解釈したら、『主人公は勝手に恐怖を感じているだけで、実は街の人々は普段のまま』という設定かもしれんけど、それにしては警備会社も主人公も事故に関与しているらしいから、やっぱりわけがわからん。

Y木:聞いてる俺もわからんぞ。

S原:そのくせエレベーターに挟まれた手がちぎれるスプラッターの場面があったり、どうにもチグハグやねん。はっきり言って、完全な失敗作です。さっきも言ったけど、予算がないからとか、監督が意図した面白さでないとか、そういうレベルじゃないと思う。ぼくの推測としては、この映画を製作するときにコンセプトを決めなかったんやと思う。どんな映画にするのか?サスペンスなのか、パニックなのか、ドラマなのか、コメディなのか、主人公が1人でビクビクする映画なのか。予算がなくても才能がなくてもホラーはホラーとして製作するやろ。出演者も製作したスタッフもどんな映画にするのかわからんまま作ったんとちゃうかな?

Y木:えー、なにそれ。そんなことある?

S原:絶対にそうやと思う。そうでないとここまで迷走しないはず。「ウォータームーン」(1989)という長渕剛主演の映画があったんやけどな。長渕が独走状態で、ゴタゴタが続いて、撮影中にスタッフがみんな長渕にそっぽをむいたらしい(笑)でも、すくなくとも長渕剛の頭には理想(映画の完成形)はあったはずやから、一応はそれに向かって進めばええと思うねんけど、この映画ではだれも完成形を想像しなかったというとんでもな事態が起きてるねん。

Y木:しかし、世の中にはいろんな映画があるねんな…

S原:それを再認識したで、ほんまに。それにしても、ぼくは、なぜこんな映画を一瞬でも「意外とおもろいかも?」と選んだんやろ?

Y木:こんな映画ばかり選んでるのに、いまさら反省…?

S原:まだまだ修行の身でござるよ。

Y木:いや、もう解脱してもええんとちゃうか。だれも止めへんやろうし。

S原:さーみなさん。いままであなたが観た映画は、出来不出来はともかくどんな映画か?と言われれば、〇〇な映画やで、と返事ができたでしょう。でも、この映画は違います。どんな映画かと言われても説明できません。そもそもなにをしたいのか、なにを観せたいのかがわからないまま映像を見せられます。そんな不思議な体験をしたいかたは、マストバイ!あ、いやお金を使うのはもったいないから、友達にDVDを借りてくださーい!

Y木:こんな映画、友達が持ってるわけないって。

 

「THE SNOW ザ・スノウ 」(2004年)の巻

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S原:今回はこちら!江戸川乱歩原作です!

Y木:へえ、乱歩かあ。

 

 (あらすじ)

一面銀世界の雪国。資産家の林はパーティーの席上で絶世の美女・瑠璃子を見初め、結婚する。林の親友・川村は祝福するが、留守中に瑠璃子と肉体関係を結び、さらに事故に見せかけて林を殺した。だが、林は奇跡的に助かる。そして死の恐怖から一夜にして白髪になったことを逆手にとり、林の叔父を名乗って憎き川村と瑠璃子へ近づく。それから、恐るべき復讐を開始した…。

 『拳神/KENSHIN』のスティーヴン・フォン主演、共演に伊東美咲谷原章介、石堂夏央ら日本の若手スターを配したゴシックホラーサスペンス。愛する妻と友人の裏切りにより、家庭と財産を奪われた男の復讐を描いた江戸川乱歩の名作「白髪鬼」を映画化。

 

 

S原:あなた、古本屋さんとか好きやろ?

Y木:好きやな。

S原:江戸川乱歩とかはどう?わりと古書店では根強い人気があると思うけど。

Y木:乱歩なあ。確かに古書店ではよくみかけるけど、めちゃくちゃ種類があるし、「古書としての価値」云々はわからん。一時期かなりミステリーをよく読んでて、おれも読んだことあるけど、全然覚えてない。そんなに面白なかったことは覚えてる。

S原:昔、ポプラ社のシリーズがあったやん。あれは面白かったわ。でも小学生の頃は表紙が怖かった…(苦笑)今考えれば、かなり子供向けに改変してたんやな。

Y木:あのポプラ社が好きで、いまでも乱歩を読む層というのはおると思うで。刷り込みというか。でも大人になって読むとまた違う読後感になるやろな。特に、エログロというか耽美の要素が色濃くでてるから。

S原:個人的には、あまりエロのほうは好きでないねん。単純に好みなんやけどな。乱歩ファンからは、「おまえは分かっていない!」って怒られそうやけど(笑)ところで、乱歩原作の映画は観たことある?

Y木:いやー1本くらいは観たことあるかもしれへんけど、どうやったかな。あ、「RAMPO」(1994)を観たかな。竹中直人のやつ。でも全然印象に残っていない(笑)乱歩原作の映画って、たくさんあるんやろ?

S原:すごい数が多い。ぼくも少ししか観てない。たしか「D坂の殺人事件」(1998)とか「双生児-GAMINI-」(1999)とか「屋根裏の散歩者」(1992)とかを観たかな。どれも面白かったけど、どこか消化不良というか不満が残るような出来やったな。

Y木:やっぱりあの世界観をだすのに苦労してる感じ?

S原:それもあるけど、単純に昭和初期の街並みとかがもうないからロケできなくて、あの当時の雰囲気がでないというのも理由とちゃうかな。身体障碍とか小人とかの映像表現や言葉使いも配慮が必要な時代になったし。かといって、現代に置き換えたりすると、たちまち物語が古びてしまって違和感がでてしまう…

Y木:潤沢な予算があって乱歩の世界の街並みが再現できればええんやろうけど、まあそういうのはなかなか難しいからな。CGという手もあるけど…それで、この映画はどうやった?

S原:頑張ってたで。全然知られていないマイナーな映画やけど、意外とちゃんと製作されている。原作は「白髪鬼」。殺されかけた男が、妻を奪った友人に復讐する話やねん。死んだと思って埋葬されたときの影響で、白髪になるというわけやな。

Y木:ふーん。

S原:結論から言うと、他の乱歩映画と一緒で、面白いところも残念なところも多い映画やったな。

Y木:例えばどこ?

S原:面白い点から話そうか。この映画では、おもに屋敷(昔の邸宅)が舞台なんやけど、このセットは良く出来ている。登場人物はほぼ3人やけど、3人ともなかなかよかった。当時の衣装も脇役までちゃんと似合っていて、ここは感心したな。とくに伊東美咲の衣装は良かった。前半はゆったりとしたムードですすむんやけど、この映画のミステリアスな作風とあってると思う。問題は後半やな。

Y木:復讐をはじめてから、失速するってこと?

S原:そうそう。主人公は生き延びて「死んだ主人公の叔父」と名乗って、屋敷に潜り込む。でもちょっと不自然やねん。いきなりゴム製の覆面をかぶって、知らない人が(主人公の)葬式に現れるから、ふつうはもっと周囲の人たちが「あの人はだれ?」「本当に叔父さんか?」と疑惑をもつはずやろ?このへんは意外とあっさりしてたわ。当然持たれる疑惑を主人公が、逆に上手に利用するという展開があれば、もっと主人公の復讐心が際立ったと思う。

Y木:なんで覆面?顔を知られたくないため?

S原:それもあるけど、そもそも顔の半分にものすごい傷がある。主人公は、スキー場で友人(谷原)に殺されかけるんやけど、そのときに石で顔をつぶされるねん。それで、顔を隠すために、スケキヨみたいな白いゴム製のお面をかぶる…という設定やな。確か葬式では「自分の顔にはヤケドのあとがありまして…」と説明してたかな。

Y木:なるほど。主人公は、スティーブ・フォンという人?外人?

S原:香港の人らしい。この映画は日本香港の合作やねん。復讐に燃える主人公はスティーブ・フォン、妻は伊東美咲、主人公を殺そうとした男が谷原章介。舞台は日本やねんけど、スティーブ・フォンのセリフだけ日本語吹き替えやねん。やっぱりここは変な感じがする。しかも、モノラル(笑)

Y木:えー、いまどきステレオじゃないの?

S原:2004年の映画なんやけどな(苦笑)映画の後半では、主人公が覆面をかぶるから吹替に関しては気にならなくなるけど、言葉の違いをスムースに解消するような工夫はできなかったものか…と思うわ。

Y木:香港の俳優と日本の俳優を共演させたかったんやろうな。

S原:たぶんそうやろうな。まだほかに残念なところがあるねん。物語の後半は、谷原がどんどん狂気に満ちて顔が変わっていく。知らず知らずに毒薬を呑まされたんやな。最後は気が狂ったように死ぬ。それで復讐は完結する。

Y木:結構、単純な話やな。殺されかけた男が、復讐するっていうだけか。

S原:そうやねん。単純なのはええねんけど、はじめから観客は「覆面の男=主人公」と分かっているから、サスペンスの要素はほとんどない。復讐しにきた男は、果たして主人公か?それとも別人か?…という展開の方が観客にとっては面白いように思う。

Y木:まーそれもありがちやけどな。

S原:こういう映画はありがちでもええと思うねん。あと、復讐ものはええねんけど、肝心の主人公の悲哀があまり上手く描けてなくてそこが残念やったかな。復讐を果たしても、観客にはあまり感情が伝わってこないというか…

Y木:スタイリッシュに撮ってるの?

S原:いやーどちらかと言うと、ややバタ臭いかな。うーん、全体のムードとしてはそういう臭めの演出が、この雰囲気に合っているんやけど、どう言えばええんやろか。監督は外人(ウォン・マンワン・黄分雲)のせいか、日本が舞台でありながら、どこか違和感を感じるような空気もあって、ここは良いねん。でも、もっと『力強いショット』が観たかった。せっかくの乱歩やし邸宅も良くできているし、それぞれ頑張っているのでそこが一番惜しいかな。

Y木:絵葉書みたいなショットってこと?

S原:べつに絵葉書みたいにキレイでなくてもええねんけど、この作品を象徴するような、特定のワンシーンがやたらと印象に残るとか、そういう場面があると鑑賞後の感想が変わるはずやけど、そこが本当に残念やわ。 

Y木:ほう。

S原:ただなー、やっぱり後半にダメな単純なホラー風味になってしまうねんなー。白髪のおっさんが怖い顔をするねんけど、ちょっとなあ(笑)もっとミステリーのまま進んだほうが、怖かったと思うんやけど…

Y木:やっぱり(映画としては)派手にいかないとダメやったんじゃないの?

S原:そうかもな。でも、おかげで乱歩風味は全然なくなってしまった(笑)

Y木:なるほどな。いやー、結局、乱歩を映像化するときには、こうなってしまう危険性があるってことなんやろうな。

S原:そうやなあ。やっぱり乱歩の映像化は難しいんかもなあ。でもいまだに乱歩原作の映像化作品が次々と製作されているから、やっぱり表現者にとっても魅力のある題材なんやろうな。「パノラマ島奇談」とか、上手く映像化できればすごい傑作になるけど、みんな怖気づくのかもしれん。その気持ちは分かる。

Y木:まあこれからも果敢にチャレンジしていく監督たちに期待やな。あ、おれはたぶん観ないけど(笑)

S原:なんやねん。さあ、みなさん。数ある乱歩の映画でもかなりマイナーな部類にはいりますが、一部の好事家だけが楽しむのは惜しい作品です。3人の俳優が好きな人は楽しめると思います。俳優にも乱歩にも興味のない人はスルーしたほうは無難でしょう。乱歩の世界の映像化が難しいことを確認したいというマニアックな人は、マストバイですよ!

 

 

 

 

 

 

「マンダウン 戦士の約束」(2016年)の巻

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S原:今回はこれです、が…

Y木:なんやねん。いきなり元気がないな。

 

(あらすじ)

海兵隊員ガブリエル・ドラマー(シャイア・ラブーフ)は、妻ナタリー(ケイト・マーラ)と息子ジョナサンを故郷に残し、アフガニスタンへと向かう。戦場での任務は過酷を極めたが、故郷で待つ妻と息子の存在がガブリエルを奮い立たせた。そして遂に、故郷アメリカへの帰還を果たす。
しかし、辿り着いた故郷の街は、建物や橋が崩壊し住人たちの姿も消えていた。まるで異世界に迷い込んだかの様に、懐かしき面影は失われていた。
この街に一体何が起こったのか?ガブリエルは、共に帰還したデビン(ジェイ・コートニー)と、荒廃した街でナタリーとジョナサンの行方を探すが―。

 

S原:いやー、この映画は参ったなあ…はー(ため息)

Y木:はずれってこと?

S原:うーん、外れと言うか何と言うか。ひたすら主人公が暗くてマジメやから、なんか観ているこっちも、気分が重くなるというか。ワゴンコーナーでDVDの裏のあらすじ(上記)を読んだら、サスペンス映画やと思うやろ?こういう映画は好物やから期待してゲットしたんやけど、そんな映画じゃないねん。それで、まずガッカリでな。

Y木:「荒廃した町の謎を探る」というミステリー系映画じゃないの?

S原:全然ちゃうねん。いきなりネタバレでごめんよ。要するに、主人公は海兵隊員でPTSDにかかってるねん。戦場で心に深い傷を負って帰宅する。街は普通通りなんやけど、主人公の眼には「荒廃した町」にみえてしまう。(救い出すつもりが、逆に)妻子も襲ってしまう…というわけやな。

Y木:うわー暗いなあ…戦地から帰ってきた男のトラウマの話か。

S原:雰囲気やテーマが重いのはええねん。そういう映画でも良作はいっぱいあるやろ。でも肝心の演出がイマイチでなー。時系列というか、回想シーンというかバラバラで編集してるねんけど、効果的でなくただ単に分かりにくいだけ…そのまま素直に撮ったほうがよほど印象深かったと思う(苦笑)監督は、ネタバレもしたくなかったし、撮り方も凝ったつもりで、こういう構成になったんやろうけどな。

Y木:ということは、銃撃戦とかもないのね?

S原:ほとんどない。そういう映画じゃなくて、トラウマを抱えたおっさんが、医師と面談したり、彷徨う姿をみせられるだけの映画。なんか茶化すのもやりにくいし、困った映画やわ。例えて言うなら、『近所にものすごい人の好いおっさんが経営している弁当屋さんがあって、そのおっさんのことは好きやけど、弁当はおいしくない。だから、その弁当屋さんでは買わない』、そんな感じかな。

Y木:おまえの例えって、例えになってないねん。

S原:べつに能天気な映画ばかりがええわけじゃないで。だって「悪夢の銀河鉄道」ばっかり観てたら、脳みそが溶けてしまうやろ?

Y木:溶けるやろな。

S原:監督はトラウマを描きたいんやろうけど、もうちょっと工夫しないと、これじゃ伝わらん…「ディアハンター」(1979)を見習え、とかは言わんけどな。

Y木:「ディアハンター」みたいな映画は、そうそう出来ないやろ。

S原:まあな。主人公と息子とのやり取りとか、最後まで妻が怖がったままとか、悪くないシーンもあるねんで。

Y木:あー、奥さんは辛いやろな。

S原:いや、奥さんはちゃっかり浮気してたんやけどな。

Y木:なんやねん。奥さんもあかんやないか。

S原:どちらにせよ兵隊の哀しみが伝わらないねん。その分、観ているとイライラするというか。なんかこの映画観てると、主人公に言いたくなるねん。「わかった、わかった、おまえがマジメなんはわかった。ちょっと休めって。ぼくのDVDを貸したるから。な?」って。

Y木:おまえにDVD借りたら、余計に疲れるわ。この映画の主人公の「悪夢」とか「不条理」のような感じでもないの?そういう映画もあるやん。

S原:ぼくは、感じなかったなー。いや、この映画で感動してる人もおるやろうから、それは申し訳ない。そういう人はごめん。そういえば昔「ジェイコブズ・ラダー」(1990)ってあったやろ?

Y木:あー、あったなー。エイドリアン・ライン監督の戦争トラウマ映画。

S原:あれも死ぬ瞬間に走馬灯のようにみる映像が、映画のストーリーになってたやろ。最後の最後に観客が「あ、主人公は死ぬところなんや。その瞬間にみた話やったんや」と分かる。どんでん返しというか。あっちのほうが上手やったな。

Y木:帰還兵の切なさが上手く表現出来てないのね?

S原:そうやねん。ほかの例で言うと、マイケル・ダグラスの「フォーリング・ダウン」(1993)ってあるやろ?

Y木:あったな。でも観たかなー、覚えてないなー。

S原:あれは戦争とは無関係やけど、ストレスで頭がプッツンした男が、街中で無茶苦茶する話やねん。でも妻子に会いたい気持ちだけは純粋でな。最後は妻子のところに(むりやりに)会いに行って、撃たれるねん。頭のおかしい奴やのに、その撃たれて死んでいく姿をみると、なんとも切ない気持ちになるねんなー。でもこの映画は、そういう気持ちにならなかった。残念。

Y木:まーそういう映画もあるでしょ。

S原:そうやね。ワゴンコーナーにはまだ見ぬ小宇宙がたくさんあるってことやな。

Y木:どうでもええ宇宙やけどな…

S原:さあみなさん!ひたすら窮屈で爽快感のない、でも切なさも感じない映画が観たい人、映画で描かれたトラウマが大好物の人、そして中途半端な出来で、つっこみにくくて、なんかお尻がムズムズしちゃう映画が好きな人は、マストバイですよ!

Y木:いや今回の紹介では、だれも買わんて…

 

日本産オムニバス映画祭り!「心霊写真奇譚」(2006年)「パルコフィクション」(2002年)

心霊写真奇譚 [DVD]

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S原:さあ、お待ちかね。日本のオムニバス映画祭りのラストですよ!今回も、短編作品の特性を考えて、いつものおっさん2人のトークではなくS原のみが短くコメントをしていきます!

 

(心霊写真奇譚のあらすじ)

心霊関連でもっともポピュラーな“心霊写真”をテーマにしたジャパニーズ・ホラー「思い出のポラロイド」「届けられたモノ」「望遠男」「被写体のない写真」「見ている」5作品をオムニバス形式で収録。キャスト陣は三宅梢子仲村瑠璃亜松山まみ優木まおみ近野成美ほか。

 

「 心霊写真奇譚 」

 

①被写体のない写真(寺内幸太郎監督)

山道をドライブしていたカップルが、ふらふらと歩く若い女性(琴美)を見つける。琴美は無言で手には「タスケテ」というメモが握られている。じつは、琴美は、兄とその恋人とハイキングにきていたのだが、道に迷い首つり自殺者を見つけてしまっていた。あわてて逃げてきたが、自殺者の足元には「タスケテ」というメモと心霊写真(幽霊?顔?が写っている)があって…という話

→  このあと、もちろんカップルと逃げてきた女性は怖い目にあうことになります。リュックの中に頭部があったり、ポケットから心霊写真がでてきたり、携帯電話に「タスケテ、タスケテ」という声が入っていたり、というエピソードが続くものの、なんというかそれぞれのエピソードが噛み合ってなくてあまり怖くないです。惜しいのは、琴美が「遺体が可哀そうだから、戻って眼を閉じてあげようよ」と急に言い出すところ。いきなり琴美の行動が意味不明になってしまうシーン、ここは気味悪かった(しかも後になっても説明がない)。作品全体にこんな雰囲気がもっとでていれば、もっと怖い作品になったと思うが、ちょっと残念。

 

②見ている(山本清史監督)

主人公(女子高校生)が通っている高校の掲示板で「心霊写真」として貼りだされたものがある。それは、合唱コンクールのときに、クラス全員が主人公を見ているという気味の悪い写真だった。主人公はあわてて、壁からはがして写真を持って帰る。翌日、その写真を撮影した新聞委員が死亡していて…という話。

→  これもあまり怖くなかった。一番残念なのは、肝心の「クラス全員が主人公を見ている写真」があまり怖くないこと。次に残念なのは「クラス全員が主人公を見ている」意味が、後の物語にうまく絡まないこと。アイデアは良いのにもったいない。ラストは、窓に無数の手形がついているのを主人公は発見 → だけど主人公の住んでいる部屋(マンション)は3階なのに!…というオチがありますが、うーん。

③思い出のポラロイド(白石晃士監督)

男女の友達5~6人くらいがクリスマスパーティをしているところ、1人がポラロイドカメラを出してきて、このカメラは心霊写真がとれると言い出す。遅れてパーティにやってきた友人(男性)との関係がうまくいってないところもあって、ギクシャクした雰囲気になってしまう。気分転換に見たテレビが、すぐ近くの場所で殺人事件が報道していて…という話。

→  今回の中で一番ストーリーに起伏がある作品。友人関係(恋愛関係)はあまり上手く描けてないが、殺人事件の犯人がこのグループにいるかも…という流れは悪くない。一番のみどころは、殺された女子高校生の写真の眼がグルグルと動くところ。黒目と白眼のバランスが変で、ここはかなり気味悪い。凝った部分も多いので、楽しめる人もいるかも。

 

④望遠男(寺内幸太郎監督)

スイミングクラブのインストラクター美穂をストーカーしているカメラオタクが、(内緒で望遠で写した)美穂の写真に心霊が写っていることに気づく。危険を知らせたいが、ストーカー行為もバレたくない、はたしてどうするか…という話。

→  これが一番惜しかった。単純な話なのにわかりにくく、カメラオタクも陰湿なのか美穂を助けたいのかキャラクターがどっちつかずで、感情移入しにくい。結局、ストーカー男自身が、霊であることが示唆されて終わるが、それならいままでのストーカー男の行動に矛盾があるように思う。怖い描写やショッキングな場面を優先した結果、このような作品になったのかもしれないが…

 

⑤届けられたモノ(白石晃士監督)

住所だけ書かれていて、差出人の名の無い汚れた封筒を調べるために、主人公(OL)と友人の男性(霊感あり)が、山梨県白沢村へ行く。そこには気味の悪い一軒家があって、おそるおそる中に入っていくと…という話。

→  個人的には、これが一番ダメやった。田舎の不気味な家屋(お化け屋敷)という使い古された題材やけど、それは一向にかまわない。これは、物語でなく雰囲気を味わうタイプの作品やと思うので。でも、いままで使い古された演出まで真似ることはないでしょ、というのが本音。ありきたりすぎて怖くないです。短い話なのに呑み込みにくいことや、ラストに(違うところに?)封筒が郵送されるというオチも弱い。集落の人の存在ももっと気味悪くできたはず。残念なとこだらけ。

 

(全体として)

正直に言って、どれも怖くなかったです。自分が大人になってしまったから、かもしれませんが、やっぱり短い作品はもっとテーマを絞ったほうが良いと思う。どの作品も、雰囲気もストーリーも登場人物も恐怖の演出もすべて凝ったものにしよう欲張ったのかもしれないけど、結局中途半端に終わってしまったと思う。

でも、一方で違う感想もあります。つまり、作り手側がそういう(作品をよくしようという)意気込みやチャレンジ精神はあって当然だし、そこは評価したいなあ…ということです。

なんにせよ、スタッフもキャストも色々と苦労したはずなので、勝手に印象だけで論評しているような自分の立場はお気楽なもんだと思った次第です……(笑)

 

「 パルコフィクション 」

 

(パルコフィクションのあらすじ)

『ウォーター・ボーイズ』の矢口史靖鈴木卓爾がコンビを組み、渋谷のパルコをテーマに撮ったオムニバスフィクション映画。『パルコ誕生』『入社試験』『バーゲン』『はるこ』『見上げてごらん』の5編構成。田中要次を始め豪華キャストが出演。

  

①『パルコ誕生』(矢口史靖監督)

ゴミからはじまって、「風が吹けば桶屋が儲かる」方式に、つぎつぎにナンセンスのつながり、最後は胸部レントゲン写真を重なたら「PARCO」という文字になる…という話。

→  骨の画像を重ね合わせて「PARCO」という文字が出来たからと言って、一体なんなんだろうか。あまりにくだらなすぎる…ツッコミも酷評も、どんなコメントも出来ないレベルです。

 

②『入社試験』(矢口史靖監督)

パルコの面接試験に臨んだ花子は、帰り際、面接官に一通の封筒を渡される。「この封筒を最後まで開けなかったら、合格ですよ」。果たして…という話。

→ そのあと花子は、結局封筒をあけずにパルコの職員に採用 → ある日、(封筒の存在を思い出して)を開封してみる → 手紙には〇〇へ行け、××へ行け、ということが書いてある → 主人公が、手紙の通りに行動すると、最後はパルコの看板に顔を突き出しておしまい。まあ、なんというか…最後にクスッと笑ってもらうタイプの作品なのかもしれないが、ぼくは失笑さえも起きなかったです。この主人公(女優)は飄々とした雰囲気でなかなか良いが、褒めることが出来るのはここだけ。

 

③『はるこ』(鈴木卓爾監督)

テレビでパルコのCMが流れる度に自分が呼ばれていると勘違いする祖母・はるこがいる。孫娘はパルコに名前を変えてくれるかCMを中止してもらうために、男友達と一緒にパルコまで行く、という話。

→  途中で、理由なくおばあさんが何故か子供になったりするシーンがあって、そこはコメディと気味悪さが半々でなかなか凝っているともいえる。でもなあ、この作品でそんな凝り方って必要やったんやろうか?ラストは、男友達が看板にぶつかってPARCOはPIRCOとなって、おしまい。みなさんに聞きたいんやけど、PARCOがPIRCOに名前が変わって面白い…?別にどうでもよくない…?

 

④『バーゲン』(矢口史靖監督)

今日からパルコはグランバザール。しかし、店員の鈴子は目をつけていたワンピースが次々と売れていくのが気懸かりでならない。そこで彼女は人目を盗んでそれを隠し、夜中、こっそり取りに戻るのだが、警備員から逃れようとしてビルの隙間に挟まってしまって…という話。

→  パルコの売り場、バックヤード等の店内や店外をロケで利用した作品で、この中では一番「パルコフィクション」というテーマに合ったものと言えるかもしれない。とはいうものの、これも観ていて疑問だらけ。とくにビルの隙間に主人公が挟まった後の主人公の行動は、不自然すぎる(当然やるべきことをしない)。最後は、くしゃみの勢いで脱出するが、観ていて「だから何なんだ?」とつぶやくこと必至。

 

⑤『見上げてごらん』(鈴木卓爾監督)

上を見るとクラッとしてしまう、世にも稀なスカイ・スクレーパー症候群に悩まされるパルコの店員・美都子。クラっとするたびに警備員の大須が助けてくれる。ある日、大須から食事に誘われるが…という話。

→ これは主演の女優の雰囲気が良い。良いのはそこだけ。話自体は大したストーリーではない。それはいいんやけど、どうでもいい話をどうでもいい演出で見せられても感想はナッシングです。この設定なら、もっと主人公2人には色々なドラマ(感情)が生まれるはず。そもそも作り手側は、そんなものどうでも良かったのかもしれませんが…(ため息)

 

『ポップコーンサンバ』(鈴木卓爾監督)

シネクイントの劇場スタッフが、リズムを取り踊るエンディング。

→ 80年代のダサい音楽グループのMVみたい。これを観た99%の人は、20分後には忘れてると思う。

 

(全体として)

結論から言うと「パルコフィクション」は、今回の紹介シリーズのなかでぶっちぎりの最下位ですね。鑑賞中に頭に浮かんだのは「なぜ?」「どうして?」というクエスチョンマークだらけ。

パルコから依頼のあった広告代理店が、こんな企画をしたのだろうか?パルコを舞台にした物語なら、なんでもよかったのだろうか?

映画の撮影前にだれか(企画、脚本などを)チェックしなかったのだろうか?それとも、お偉いさんの意向で、映画の出来や内容自体はスルーだったのだろうか?単純に、これは宣伝やからええねん、と割り切ったのだろうか?

2人の監督の作風がどうとか、自由にパルコという題材で遊んだ映像集とかいうレビューをどこかでみたが、そもそもそんなレベルで語るような作品だろうか?

そしてなによりも、、、これを観て『パルコに行きたい!』と思う人がいるのだろうか?

 

 さいごに(S原より)

すでに書いた通りですが、「パルコフィクション」がひどすぎて2本を並べて話すことも出来ません。このブログは、一応ワゴンコーナーにありそうな映画(とくにマイナーな映画やB級映画)をとりあげる趣旨なので、面白く可笑しく作品を斬るか、意外と良いところを語りたいと思っていますが「パルコフィクション」だけは、ギブアップです。

ハッキリ言って「心霊写真奇譚」もお世辞にも良い出来ではないです。でも、観客を怖がらせよう、ゾクッとさせてやろうという意図はわかる。結果として失敗しているかもしれないが、チャレンジはしている。その意気は買いたい。

「パルコフィクション」は、宣伝のために予算計上して、適当に俳優をあつめて、作り手側が覇気もなく作ってる…そんな映画が面白いわけがない。本気で作ってこれなら、失礼ながら映画製作は向いてないんじゃないですか?と言うしかない。

「パルコフィクション」を好きな人には、今回は辛辣な紹介になってしまったかもしれませんが、自分にウソはつけないので、あしからずご了承ください。

それにしても…いやあー、しょもなかったなあああー!!(笑)

これにて、オムニバス映画特集はおしまい!

 

日本産オムニバス映画祭り!「怪奇!アンビリーバブル 連鎖!呪いのチェーンメール」(2007年)「怪奇!アンビリーバブル 霊媒師・門外不出コレクション」(2004年)の巻

怪奇!アンビリーバブル 連鎖!呪いのチェーンメール [DVD]

 怪奇!アンビリーバブル 霊媒師・門外不出コレクション [DVD]

S原:今回のオムニバス映画祭りは、この2本です。以前からレンタル店の隅にひっそりと置かれている実録心霊系(?)のDVDを、ワゴンコーナーで2本ゲットしましたので取り上げます。それにしても、この手のシリーズは大量にありますが、ほとんどの人は観たことがないはず…というか普通はスルーしますよね(笑)正直に言ってわたしもドキドキの初体験でしたが、一体どんなものだったのか?では、スタート!

 

(怪奇!アンビリーバブル 連鎖!呪いのチェーンメールのあらすじ)

一般視聴者から寄せられた恐怖体験をまとめた心霊ドキュメンタリーシリーズ最新作。呪われた投稿心霊写真の数々を紹介し、その裏に潜む驚愕の真実に迫る。直視できない恐ろしい映像の数々が、観る者すべてを震え上がらせること間違いなし。

 

(怪奇!アンビリーバブル 霊媒師・門外不出コレクション)

投稿された心霊写真の紹介と、その裏に潜む呪われた真実に迫る人気心霊ドキュメンタリーシリーズ「怪奇!アンビリーバブル」の最新作。飲食店の客が落としていった1枚の写真。それを預かっていた店主に不幸が訪れる。全3エピソードを収録する。

 

( 怪奇!アンビリーバブル 連鎖!呪いのチェーンメール )

 

①知らない手紙

なぜか(知らない)女性が爪を手紙で送ってきた男性が恐怖を感じて相談する…という話。

→ 昔、(合コンで)男性がなんとなく「ツメがきれいだね」と褒めてしまった女性が送ってきているかも?という設定やけど、どうも人間関係がわかりにくく、恨みなのかストーカー行為なのかサイコなのか、よく呑み込めないまま終了。ここがもっとわかったら、ちょっとは面白くなったかもしれないが、やっぱり面白くないかもしれない。でも本当に爪を送られてきたら、これは気味悪いですよ、あなた。

 

②シ・シャ

ある人が、「写真に写った友人の顔が、歪んでいる」と投稿してきた。その友人は亡くなっている。そして投稿者は、最終バスに乗り遅れて、怖い思いをしながら公衆電話で彼氏に助けに来てもらったが、あとで公衆電話を探しても見つからない…という話。

→ 意外とストーリーに起伏があります。でも怖くないです。一番こわいのは、女性の顔が歪んでいる写真…いや、その歪んでいる顔が怖いんじゃなくて、歪む前のふつうの顔が……なんで、こんなユニークな顔の人を選んだんだよっ。不自然だっつーの。ぼくだけが感じているのかと思ったら、他の人もSNSで突っ込んでた。ここだけは一見の価値あり。主人公が助けを求めた公衆電話を探しに行ったが、すでに撤去されてあるはずのものだった、というオチ。でも前半にでてくるゆがんだ顔の女性との因果関係はわからず。最後は「ふーん、まーあれじゃない?勘違いじゃないの?」と言われておしまい。

 

③呪いのチェーンメール

チェーンメールがきた人を訪ねていく…という話。

→ まず、この画像付きメールが怖くない。このメールを受け取った人も特に気にしてない。そして、転送してる人も転送していない人もいるが、どっちもあんまり覚えていない。何人か亡くなっていることが暗示されるが、それはチェーンメールが原因とはいえない。要するに、チェーンメールを転送しなくても、とくに怪奇現象がおきていることは確認できない…って当たり前の話だっつーの!

まあ調査の結果、怪奇現象は見つからなかったという結果を、きちんと報告するのは真摯な態度ともいえる。でも、まじめだからどうなんだと言われれば、ぼくには言い返せませぬ…

 

( 怪奇!アンビリーバブル 霊媒師・門外不出コレクション )

 

①悲惨!心霊ストーカーに憑りつかれた女

霊媒師の吉田(女性)が、夜な夜な変な男の霊が夜這いしてきて困ってるという女性に会いに行くが…という話。

→ 強力な霊媒師である(らしい)吉田さんが登場します。吉田さんの容姿は、意外と普通です。アパートで女性から話を聞く吉田さんは、霊媒師というよりも「男性関係の愚痴を聞いている近所のおばさん」にしかみえません。

再現フィルムででてくる霊(男性)が、「売れない役者が頑張ってるなあ」という感じです(坊主頭で、80年代のパンクバンド風の霊です)

霊媒師の吉田さんは、「プライベートのこともありますし…これ以上は、もう依頼者(女性)の問題ですねえ…これ以上はちょっとねえ…」と言っておしまい。吉田さんが得意らしい「除霊」もしない。なので、たぶん相談者の女性は、いまでも坊主頭の霊に夜這いされていると思う。気の毒に。

 

②無念!いじめ死少年の霊

霊媒師の吉田が、いじめで亡くなった少年に霊が映るという公園に行ってみるが…という話。

 → 再現フィルムがひどすぎて、内容がよくわからないが、霊媒師の吉田さんは、特に何もしていないにもかかわらず「これ以上(追求するのは)はやめておきましょう」と言って、おしまい。理由は「こっちまで危なくなるから」とのこと。というわけで今回も除霊せず。

 

③恐怖!死へと導く写真

霊媒師の吉田が、それをみた客が次々と自殺するといういわくつきの写真がある飲食店(スナック)に行くが…という話。

→ 今回、取材する霊は、霊媒師の吉田さん曰く「これだけはマズいです」「本当に危険です」と言い放つくらいの強烈な霊らしい。しかし、スタッフが無理矢理に撮影を強行。問題のスナックで話を聞いたり、自殺現場に行ったりして、街を散歩したあげく、吉田さんは立ち止まります。そしてスタッフをにらんで、「これ以上は無理です」「責任がとれません」「本当に知りませんよ」「絶対に公開してはダメですよ」と愚痴っぽく言い放ちます。そして、しばらく沈黙の後「…じゃ、これで」と帰宅します。もちろん除霊せず。取材も途中でぶつ切りでおしまい。

 

(全体として)

今回は、なかなか興味深い体験でしたね。両方とも「この世にはまだ知らない恐怖があなたのすぐそばにある…」的な大げさなナレーションで始まり、心霊写真が延々と写りますが、大半はなにが写っているかわかりません…(笑)

でも、なんというか製作者側の『とにかく予算を低く抑えて、儲けを出そう』という心意気は感じます。撮影は工夫もなく、デジカメでただ写しているだけだし、出演者は素人か売れない役者ばかり(たぶん出演料はゼロ)でも、「これで儲けを出したるでええ!」「とにかく怖く宣伝して、1本でも多くツタヤにおいてもらうでええええ!」という製作者側の怨念のような気配(下心)が漂っています。

 みんなとワイワイと観るのには楽しいかもしれません。除霊しにいったのに、毎回言い訳をして除霊をしない霊媒師の吉田さんは、ちょっと気になります。他のシリーズでは活躍するのでしょうか?だれか教えてください。マストバイとは言えませんが、世の中にはこんな作品があるという体験をしても損はないかも…いや別に観なくてもええかな(笑)